プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

炭鉱労働者と家族の熾烈な闘い。『アメリカン・ジャスティス』(2002年/トニー・ビル監督)

アメリカン・ジャスティス』(2000年/トニー・ビル監督)

 炭鉱夫たちが、労働組合の旗の下安全衛生の確保と労働条件の向上を掲げ、人を人として扱わない使用者の搾取に立ち向かう。「アメリカンジャスティス」は2000年アメリカ製作の映画です。監督トニー・ビル、主演ハリー・ホンターによる本作では、生存を掛けた炭鉱夫労働組合の闘いに、その妻たちがともに立ち上がります。労働問題は、労働者・使用者だけの問題でなく、生活や家族それぞれの人生そのものに直結しているということを強く感じさせてくれる作品です。

炭鉱町で起こった死亡事故
 ある日、主人公ルビーの夫、サイラスが勤める炭鉱で死亡事故が起こります。幸い家族は難を逃れましたが、企業が利益を優先し、安全を軽んじたことが事故の原因であるとわかります。サイラスは優秀な炭鉱夫です。会社側の人間は事故の直後であるにも関わらず、翌日からすぐに仕事に戻るように伝えにきます。このような会社の態度に、またいつ同じような事故が起こってもおかしくないと、炭鉱夫たちは強い不安と危機感を覚え立ち上がることを決意します。

ストライキと弾圧
 都市部から組合本部のオルガナイザーが派遣され、炭鉱夫は労働組合としてストライキを決行します。はじめのうちこそ、鉱山を封鎖し稼働を止めることに成功しますが、会社は暴力や警察などあらゆる手を使いストライキを徹底的に弾圧します。夫たちの闘いを見るうちに、組合を信じられないでいたルビーでしたが、これが「自分たち」の闘いであると気づき、ともに闘うことを決意します。

不当逮捕とメディア戦略
 弾圧は日ごとに熾烈を極め、ついには炭鉱夫たちの妻まで警察に逮捕されてしまいます。これに対し組合は、子どもと一緒に留置所に入れられるルビーたちの写真を使い、全国に支援を求めます。さらには株主総会に直接押しかけ、炭鉱町の過酷な暮らしと、劣悪な炭鉱夫の労働条件を株主に訴えるなど、様々な戦略で会社を少しずつ押し込んでいきます。

 その後もストは続き、ついには会社が労働協約の締結を認めるところで物語は終わります。裁判など1つの方法だけでなく、常に多面的に継続的な闘いをすることで、組合は大きな勝利を収めたのです。

稲葉一良(書記次長)

tsutaya.tsite.jp

真の敵はウイルスではなく差別と貧困。『UNITED IN ANGER ACT UPの歴史』(2012年/ジム・ハバード監督)

『UNITED IN ANGER ACT UPの歴史』(2012年/ジム・ハバード監督)

 現在、新型コロナウイルスの猛威は、世界中を巻き込み、日本にも深刻な影響を及ぼしています。ウイルスとの闘いは激しさを増していますが、真っ先に深刻な影響を受けるのは低賃金で働く労働者です。休業時の賃金保障を十分にしない、不当な解雇を受ける等、ウイルスの猛威以上に、社会的構造によって労働者の生活が破壊されていきます。「UNITED IN ANGER ~ACT UPの歴史~」は2012年アメリカ製作の、ジム・ハバード監督によるドキュメンタリー映画です。エイズウイルスから仲間たちを守るために闘った「ACT UP」の軌跡を描きます。

「死の病」と差別・偏見
 今日、エイズ治療は画期的な進化を遂げています。しかし、このウイルスが発見された当初は、罹患すればまず助からないような「死の病」でした。感染者はいわれのない差別を受け、そして、差別・偏見から様々なデマが飛び交いました。今回のコロナ騒動でも、差別的な流言や感染者への不当な差別・非難が多く見られます。

貧困による死
 程なく、貧困が生き死にを分ける現象が起こってきます。所得の低い者は、感染が発覚しても十分な医療を受けることができず、場合によっては病院のベッドで寝ることもできず、廊下で治療を待ちながら命を落としました。先進国でも、貧困で人が死んだのです。

真の敵は「ウイルス」ではない
 政府が適正な対応を怠った事が、この事態を引き起こした大きな要因です。研究の結果、治療薬ができる、治験が行われるということになっても、治療を受けられる者を峻別したり、企業が利益のために不当に高い値段を付けている状況を容認したりと「政治によって」多くの、低所得であったり差別を受けている患者の命が奪われました。今日のコロナと闘いを見ても、真の敵はウイルスではなく社会的な差別と貧困の構造だということがはっきりと見て取れます。

 ACT UPは、団結し、強い怒りを抱き闘いました。運動は、激しく弾圧を受けながら、やがて国家そのものを動かすに至ります。その結果、エイズはもはや「死の病」ではなくなったのです。団結には世界を動かす力があるのです。

稲葉一良(書記次長)

movie.jorudan.co.jp

 

労働者は無関心なのではない!組織化のための体系的指南書。『職場を変える秘密のレシピ47』(アレクサンドラ・ブラッドベリー、マーク・ブレナー、ジェーン・スロータ著/菅俊治、山崎精一監訳/日本労働弁護団)

『職場を変える秘密のレシピ47』(アレクサンドラ・ブラッドベリー、マーク・ブレナー、ジェーン・スロータ著/菅俊治、山崎精一監訳/日本労働弁護団

roudou-bengodan.org

 「職場を変える秘密のレシピ47」はアメリカ労働運動の活動家が集う「レイバー・ノーツ」による、労働組合の組織化について記した1冊です。労働組合運動によって職場を変えるための方法を47のトピックでわかりやすく説明しています。アメリカの労働運動についてを記した本書ですが、元日本労働弁護団事務局長の管俊治弁護士と、明治大学労働教育メデイア研究センターの山崎精一氏による翻訳で、より一層日本の労働運動にも生かせる内容となっています。

「無関心」という誤解
 組織化について話をすると、多くの人が職場は「無関心」で身動きが取れなくなっていると愚痴をこぼします。この無関心というのは大きな誤りで、少なくとも給料や待遇など、誰もが仕事について大なり小なり何かを考えています。しかし、実際にはモノを言うことを恐れ、自らを非力だと感じているに過ぎません。組織化を行うことで労働者は職場を変える力を持つことができるようになるのです。

「トラブルメーカー」が職場を変える
 組織化とは、その人自身や同僚が不公平だったり不当な扱いを受けているなど、職場の問題を「何かをしたい」と思っている状態のことを指します。上司にとってそれはトラブルに他なりません。最も優れたオルガナイザーは、「トラブルメーカー」と呼ばれ忌み嫌われてきました。「トラブルメーカー」こそが職場を正しい方向に変える力を持っているのです。

組織化に向けた対話
 組織化は一朝一夕でできることではありません。丁寧な対話を通して労働者の気持ちを1つにまとめていかなければなりません。労働者の多くは無力を感じ、問題に対する諦めを抱いている者も少なくはありません。相手に寄り添い、どんな不満や問題があるのかしっかりと傾聴し、相手に対して敬意を払うことで、少しずつ個々の問題をみんなの問題へと落とし込んでいく必要があります。問題を共有し、組織化が行われることで、1人では非力でも、会社に対抗しうる強い力を持つことができるのです。

 本書は、組織化後の実践的な組合活動についても詳細に解説しています。職場に疑問を感じたらまず手に取ってもらいたい1冊です。

稲葉一良(書記次長)

※本書のまとめ買いの注文はこちらから→http://roudou-bengodan.org/secrets/

「学び続け成長し続ける」組織になるために。『チームが機能するとはどういうことか』(エイミー・C・エドモンドソン/英治出版)

『チームが機能するとはどういうことか』(エイミー・C・エドモンドソン/英治出版

www.eijipress.co.jp

 心理的安全性という言葉を、皆さんは聞いたことがありますか。「チームが機能するとはどういうことか」は、エイミー・C・エドモンドソンによる、「学び続け成長し続ける」チームを作るための組織のあり方を記した一冊です。

変わるチームのあり方
 これまでの「チーム」という概念は、「スポーツチームや音楽家のグループのように、物理的に同じ場所にいて、信頼を築く時間がある、固定された集団」であったと著者は言います。時代は移り変わり、現代では、オンラインで遠くの人々が一つのプロジェクトの下、集結するような形であったり、ある目標に向けて、適材適所のチームが作られ、その目標の達成と共にまた散り散りになっていくような形に変化してきています。

求められる「チーミング
 現代のチームでは特に「チーミング」が重要です。チーミングとは、絶え間なくチームワークを実践し続けることです。特に後者のチームの場合、従来のチームと違い、場所の固定がなく、信頼を築く時間も不十分であることが多く、メンバーも往々にして流動的です。このような特徴がチーム作りの障害となっています。チーム(名詞)というものがあるという考え方から、チーミング(動詞)する組織へのシフトが大切になってくるのです。

ポイントは「心理的安全性」
 チーミングを行うとき、最も大切なものの1つとして、著者は「心理的安全性」を挙げています。心理的安全性とは、チーム内で誰にどのような指摘をしても、どのような事を提案しても拒絶されることがなく、罰せられる心配がないような状態のことを言います。

 この考え方は、一見すると馴れ合いによる日本的人間関係と似て映ることもありますが、実際は真逆といってもいい考え方です。特定の目的のために、職種や職位、立場の別なく自由な発想を口にすることができ、それらが正当に公平に扱われる事が保証された組織のみが「学び続け成長し続ける」のです。

 「組織化」と「チーミング」には多くの共通点があります。私たちプレカリアートユニオンも、常にチームワークを発揮し続ける集団を目指し、日々、組織化を行っていきたいと思います。

稲葉一良(書記次長)
 

【動画公開】労働組合で心の性について話してみよう。

 youtu.be

プレカリアートユニオンは、セクシュアルマイノリティLGBT労働相談に対応しています。

www.precariat-union.or.jp

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健康診断や服装などについて、入社時に申告した性と別の性での対応を求めたい。
セクシュアリティに関わる噂をされて職場に居づらい。
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性別移行を理由に不当に解雇された。
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セクシュアルマイノリティに対する差別的な言動に悩んでいる。
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新型コロナ関連の労働問題についてプレカリアートユニオンが取材協力した記事が『週刊東洋経済』2020年5月2日・9日号に掲載されました

 

新型コロナ関連の労働問題についてプレカリアートユニオンが取材協力した記事が『週刊東洋経済』2020年5月2日・9日号に掲載されました。

 

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