プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

【新任役員紹介&組合員の手記】SOGIハラを団交で解決、労災認定も実現。トランスジェンダーの権利擁護の活動に幅広く取り組む。「一つの差別を看過すれば、いずれ自分も差別される」

【新任役員紹介&組合員の手記】
SOGIハラを団交で解決、労災認定も実現
トランスジェンダーの権利擁護の活動に幅広く取り組む
「一つの差別を看過すれば、いずれ自分も差別される」


 今回新たに執行委員に選任いただきましたSally(サリー)と申します。本来ならフルネームで自己紹介すべきところ、Sallyという名を名乗っているのは、私がトランスジェンダーであり、昨今SNSを中心にトランスジェンダー、特にトランス女性への差別が渦巻いており、組合外部にも読まれる可能性のある読み物等に関しては、ある程度匿名を通してほしいとお願いしたからです。自分の身を守るための措置として、ご理解いただけると幸いです。
 争議団会議やLGBTジェンダー平等チームのミーティングに参加していただければ、リアルなSallyをご紹介できると思いますので、ぜひご参加をお願いいたします。
■LGBTQ+の労働問題対応力は日本随一
 さて、プレカリアートユニオンは日本でも随一の、LGBTQ+の労働問題に対応する力やノウハウを持つ労働組合であると、いち組合員として自負しています。
 そもそも私がプレカリアートユニオンに加入したのは、会社の上司から受けたSOGIハラによってうつを発症し、それに伴って1年半以上休職せざるを得ませんでしたが、復帰に際してまともな対応を会社が取ってくれなかったことにあります。
 会社は当初、復帰に際して三重県内の工場への配転を打診してきました。厚労省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」でも、職場復帰は原則として元の職場へ戻すのが最善であると示されているにもかかわらずです。もちろんこれについて組合は団体交渉で、ハラスメント上司が現職場に居るのなら、その上司を配転させるのが筋だろうと、猛烈に抗議・交渉を行ってくれました。その後SOGIハラ問題について会社とは解決に至ることができ、労基署からは労災認定も下り、今では同じ会社の同じ事業所の、別の部署でのびのびと仕事ができています。
■全ての労働組合で取り組んでほしい
 「LGBT労働問題」とは言っても、会社の対応につき一つひとつ応答を行っていくやり方そのものは、他の労働問題と何ら変わらないものです。もちろんLGBTに関する専門知識があるに越したことは無いですが、それが本当に必要になった時には、弁護士なり専門家なりの手を借りれば良いだけです。
 冒頭で私は、プレカリがLGBTQ+の労働問題について随一の対応力があると述べましたが、本当は全国の各単組でも怖気づかす、「LGBT労働問題対応!」と謳ってほしいと思っています。
■各地のパレードに参加し仲間を励ます
 私は自分の労働問題が解決した後、プレカリの組合員だった友人に誘われ、トランスジェンダーの権利擁護を目的とする団体「トランスジェンダージャパン」(TGJP)の活動にも参画するようになりました。
 今や全国各地(約40か所)でプライドパレードが行われるようになりましたが、パレードに参加するのをためらうトランス当事者もたくさん居ます。それでもここに、この町にトランスは居るよ、一緒に生きてていいんだよ、仲間はたくさん居るよ、ということを伝えたいがために、私はTGJPのメンバーとして全国ほぼ全てのパレードに参加し、高々と旗を振って歩いています。
 先月大阪でパレードが行われた日は、ちょうど総選挙の投票日でした。私達が歩いた沿道の人たちの約半分が投票に行かず、さらに投票に行った人でも小選挙区では約4割強の人しか維新に投票しなかったにもかかわらず、大阪の小選挙区は全て維新候補が当選してしまいました。
 つまり大阪の全有権者の約2割にしか維新は信任を得ていないということです。それでも選挙に勝った者が政治を動かします。
■差別扇動に抗い異なる課題を持つ者が連帯する
 私がパレードを歩くのは、先述した当事者自身へメッセージを送るという意味合いとともに、投票へ行かなった半分の人たちのような、世の中のことには無関心だと振る舞うような人にも、LGBTQ+に関する課題があるのだということを認識してもらうのも目的の一つだと思っています。
 認識して関心を持てば、今や誰でも手のひらの中で物事を調べることができます。でもその調べた結果が差別扇動的なものだらけな現状では、正確に情報は伝わりません。だからこそ、異なる課題を持つ市民どうしでも、互いに連帯し、声を上げ、差別に抗っていかねばならないと思っています。まさに労働組合と同じ、団結の精神です。
 トランス当事者からさえも「トランス団体が難民問題を主張するのは間違っている」などといった声があるのも事実ですが、私は日本人や日本人のトランスだけが幸福になれば良いなどとは毛頭思っていません。
 移民・難民に限らず、一つの差別を看過すれば、いずれ自分が属するマイノリティも差別にさらされることになるというのは、歴史が証明しています。
 労働問題の解決も、人権を守るための手段の一つ。プレカリアートユニオン組合員の皆さんには、自分の問題が解決した後は、ぜひ他の組合員の力になったり、他の社会課題にも目を向けるようになっていただけると、とても有り難いです。
 11月17日(日)には(13時、新宿中央公園水の広場集合、13時30分出発)、TGJPも実行委員会の一員である「東京トランスマーチ2024」が新宿で開催されますので、ぜひご参加ください。
 Sally(サリー)(執行委員)

 

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誰でも1人から加入できる労働組合
プレカリアートユニオン
〒160-0004東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
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TEL03-6273-0699 FAX03-4335-0971
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【解決報告&組合員の手記】フィリップ モリス ジャパンと和解! 解雇問題、未払い賃金問題など一括で プレカリ太郎さん(組合員) 

【解決報告&組合員の手記】
フィリップ モリス ジャパンと和解!
解雇問題、未払い賃金問題など一括で
プレカリ太郎さん(組合員)


 皆様、こんにちは。プレカリ太郎です。私は2023年11月にフィリップ・モリス・ジャパン合同会社に正社員として入社し、営業職(フィールドエグゼクティブ主任)として首都圏リージョンで勤務していました。入社当初から、GS実績でも上位を維持し、全力で業務に取り組んでいましたが、2024年6月末に正当な理由なく7月末日での解雇を通告されました。
■団体交渉と街宣活動で直接実態を伝える
 この解雇には納得できず、私はプレカリアートユニオンの支援を受け、団体交渉を開始しました。団体交渉によって、私たちの声を会社の経営層に直接届け、また街宣活動を通じて、世間にフィリップ・モリス・ジャパン合同会社の実態や違法行為を広く周知していくことができました。
 このような街宣活動を行うという力を行使したことが、交渉によって問題を解決する要因の一つとなりました。街宣活動の結果として、企業は、世間からの信頼失墜やブランドイメージが損傷することを心配したかもしれません。
 私たちの営業職は、サービス残業や深夜残業が常態化し、月に20時間以上の残業をしても申告できない状況が続いていました。22時以降の深夜残業や休憩時間の不足も放置され、過酷な労働環境の中で働かされていました。これに対しても、団体交渉と街宣活動を通じて声を上げました。
 その結果、未払い残業代を含めた一体解決に成功し、会社は私の解雇を撤回し、満足のいく水準の解決金を支払うことに合意しました。さらに、再就職に不利益が生じないよう配慮することも約束されました。この勝利は、プレカリアートユニオンと私たち労働者が団結し、経営層に問題を直接訴えかけたからこそ実現したのです。
■労働者1人の力には限界がある
 企業と対等に戦うためには、労働者一人の力では限界があります。しかし、団体交渉や街宣活動を通じて、労働者の声を世間に広めることで、企業に対して圧力をかけることができます。会社の不正行為を暴き出し、世間の目にさらすことは、企業にとって大きなリスクであり、これが私たちの交渉を強力に後押ししました。
 皆様が同じような状況に置かれた時、プレカリアートユニオンへの加入を強くお勧めします。組合に加入することで、会社の不正に対抗し、労働者の正当な権利を守ることができます。団結することで、私たちの声はより大きな力となり、企業を動かすことができるのです。
 プレカリアートユニオンは、皆様の加入をお待ちしています。共に立ち上がり、労働環境を改善し、私たちの権利を守りましょう。
 私は、プレカリアートユニオンに加入したことで、1人では対処できない問題に対応できました。労働者個人では団体交渉はできませんし、ビラ配り街宣活動をすれば刑事的にも民事的にも問題になってしまします。しかし、労働組合として取り組む直接行動は刑事的にも民事的にも免責されます。
■奪われたお金、時間、尊厳を取り戻そう
 弁護士に相談したり、労基に通報する前に、誰でも1人でも加入できる労働組合に相談してください。そして会社で受けた理不尽、不利益について、その想いを会社に直接ぶちまけてください。組合に入れば、会社は迂闊なことはできません。徹底的に会社を追求し、会社を正すのです。
 パワハラを受けた場合は、団体交渉や街宣活動のときに会社と対峙するのが怖いかもしません。もし加害者当人がでてきて怒鳴ってきたら怒鳴り返せばいい。私たちがしっかり闘うことが再発防止につながってゆくのです。
 団体交渉の場では、遠慮しないでドンドン正論をぶっ放してください。街宣活動で会社の悪事を公開しましょう。あなたが受けてきた違法行為、理不尽、パワハラなんでもです。
 ブラック企業へ入社してしまう被害者も減ります。残された仲間の待遇も改善します。第二の犠牲者が減るわけです。
 まずはあなたから、日本の労働環境を変えていきませんか?
 そうして、奪われてきたお金、時間、尊厳を取り返しませんか?
 プレカリ太郎(組合員)

 

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日本労働弁護団『季刊・労働者の権利』2024年10月号に稲葉書記長がレイバーノーツ大会参加報告を寄稿

日本労働弁護団『季刊・労働者の権利』2024年10月号に稲葉書記長がレイバーノーツ大会参加報告を寄稿しました。

 

プレカリアートユニオンのブログにも参加報告を掲載しています。

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ファッション業界の労働環境にまつわる具体的事例を紹介 11月5日(火)20時・【トーク+労働相談】 プレカリアートユニオン×見た目! 「ファッションの労働環境を考える」

 この度、プレカリアートユニオンと同じく新宿区に拠点を持つセレクトショップオルタナティブスペース「見た目!」を会場としてお借りし、ファッションに関わる方々の労働問題について、プレカリアートユニオンがお世話になっている高橋寛弁護士(旬報法律事務所)とともに考えるイベントを開催いたします。

 

ファッション業界の労働環境にまつわる具体的事例

・スタイリストアシスタント 月に5万円の給料で、アシスタントの仕事をしている。2年くらい。労働時間は長く、不定期で過酷である。パワハラもかなりあり、精神的にもつらい。空いた時間にUberで働いてなんとか一人暮らししている。辞めたいと伝えるも辞めさせてもらえない。


・スタイリストアシスタント 面談後、契約書など無しで、無給。スタイリストの家に寝泊まりし、朝スタイリストを起こし、日中はアシスタント業(リースや撮影等)。深夜に別のアルバイトをして生活費を稼ぐ。休日はゼロ。その日何時に仕事が終わるのか、スタイリストの気分次第。 タクシー代やリース代、昼食代等の経費を立替えることが多いが、スタイリストの機嫌が悪いと支払いを言い出しづらく、支払ってもらえないこともあった。

 

・スタイリストアシスタント 休日はゼロ。撮影現場で他のアシスタントと交代しながら10分ずつ仮眠して凌いでおり、疲労でミスが増えた。ミスすると、水の入ったペットボトルや瓶で頭を殴られたり、服の下の見えないところにアイロンを当てて火傷をさせられたり、暴力が多かった。自分の表現をすることやSNSを禁止されており、すぐに独立しにくいようにされていた。辞めるなら次の人を見つけなくてはいけないが、なかなか見つからなかった。やっと辞めて独立してフリーランスになったあとも、ヘルプで呼ばれたりしてなかなか離れられない。外部プロデューサーへの性的接待を強要されたり、ギャラが少ない過酷な仕事を押し付けられたり、自分のキャリアにならないような仕事を押し付けられ続けた。 所属している専門学校では、無給でのインターンやアシスタントを推奨しており、できるだけ行くべきという教育だった。


・スタイリストアシスタント 過酷な労働環境で休みなく働かされ、体力的にも精神的にも限界になっていて、職場で倒れたが、放っておかれた。


・アーティストアシスタント 仕事を辞めたいと伝えると、これまでの仕事上のミスで発生した損害を金銭で支払うよう要求してきた。


・ファッションデザイナーアシスタント 職場に、デザイナーと自分の2人で過ごすことが多く、デザイナーが常に切羽詰まっていて、大変そうな様子を間近で見ており、不満があっても伝えにくい。給与の額と、責任の重さや、仕事内容の大変さが見合っていない。辞めたいと言っても、ずるずると仕事を振ってきてなかなか辞めさせてもらえない。

 

 

トーク+労働相談】
プレカリアートユニオン×見た目!
「ファッションの労働環境を考える」

■ 主催:
プレカリアートユニオン

■ 登壇者(敬称略):
渡辺未来(「見た目!」主宰)、高橋寛弁護士(旬報法律事務所)、小田原のどか(彫刻家・評論家・プレカリアートユニオン副委員長)、清水直子プレカリアートユニオン執行委員長)

■ スタッフ:
pokonaさん

■ 開催日:
11月5日(火)20時~22時(開場19時45分)
配信なし
前半1時間はトーク:録画あり 後半1時間は相談会:録画なし

■ 会場:
「見た目!」
東京都新宿区西新宿7-18-13 ハイム大成ビル302【※当ビルにエレベーターはありません】

■ 参加費・予約:
参加費無料、予約不要【※先着順にて、15人ほど座ってご覧いただけます。それ以上は立ち見となります】

■ 概要:
 働き先や雇用形態を問わず、誰でも、ひとりでも入れる労働組合プレカリアートユニオン」は、LGBTQs労働相談に取り組むことや、フリーランスアーティストによる支部もあり、一人ひとりの自分らしい生き方、働き方を応援しています。
 この度、プレカリアートユニオンと同じく新宿区に拠点を持つセレクトショップオルタナティブスペース「見た目!」を会場としてお借りし、ファッションに関わる方々の労働問題について、プレカリアートユニオンがお世話になっている高橋寛弁護士(旬報法律事務所)とともに考えるイベントを開催いたします。
 本イベントは二部構成となり、第一部は「見た目!」主宰者の渡辺未来さん、プレカリアートユニオンの小田原のどか、清水直子が、高橋弁護士とともにファッション業界の労働問題について、具体例を交えて話し合います(※第一部のみ後日録画を公開します)。
 第二部は労働相談というかたちで、ご来場の方の労働のお悩みに答えます(※イベントの構成上、個人相談ではありませんので、他の方に相談内容を聞かれたくない場合は、あらためてプレカリアートユニオンまで労働相談のご連絡をください。)


■ グランドルール
安全に学べる場所づくりのため、グランドルールを設けています。ご確認いただき、ご協力をお願いできれば幸いです。

・本イベントは、セクシュアリティをはじめ、人種、階級、障がいなどあらゆる差別にも反対し、すべての人がより安全でいられる方法を模索するセーファースペースとして運営されています。差別やハラスメントの構造を解体する空間であるためには、参加してくださる方全員の協力が欠かせません。全員が心地よく過ごすことができる対話空間づくりにご協力ください。

・自身の境界と他者の境界を意識し、尊重してください。以下がその例です。「同意なく相手の身体に触れない/同意なく写真を撮らない/同意なく相手のパーソナルな情報を質問したり、開示したりしない/その人が呼ばれたい名前、代名詞で呼ぶ/性的なことや、暴力などトラウマを誘発する可能性があることを話す時は、必ず前置きをする/自分が求める心理的、物理的距離やしてほしい配慮について考え、必要に応じて意思表示する」。自分の行動が他者との境界の侵害に当たるかどうかわからないときは、まず相談してください。一緒に考えましょう。

・参加中に何か問題が感じられた時は、いつでも主催者(小田原・清水)にご相談ください。

 

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「いくら稼げるか」だけでなく「いくらあれば暮らせるか」にも意識を【いなばの生活力向上計画 第30回】

【いなばの生活力向上計画 第30回】
「いくら稼げるか」だけでなく「いくらあれば暮らせるか」にも意識を


 生活力向上に役立つ情報をお届けするこのコーナー。今回は収入と生活サイズについて簡単に復習していきたいと思います。収入を増やすことだけでなく、無駄な支出を減らし生活のサイズを適正にすることにも意識を向けていかなければ生活は簡単に破綻してしまいます。
■いくら稼げるかの前に生活のサイズを適正化しよう
 何度もお伝えしているとおりですが、仕事を決めるときに「いくら稼げるか」を考える以前に「いくらあれば毎月の生活が成り立つか」ということを日常生活を見直すことによって考えていくことは必要不可欠です。
 現代の消費社会では自分自身の消費者としての価値観がしっかりしていないと無駄なお金を大量に使わされてしまいがちです。ケン・ローチ監督の「レイニング・ストーンズ」では主人公が自分自身に真に必要なものでなく世の中の価値観を内包化してしまい、見栄のために自身の収入に全く見合わない聖餐式用のドレスを(無料のレンタルもできたのに)娘に買おうと、犯罪にまで手を染め、生活が破綻しかけてしまう様がコミカルに描かれています。
 これは「いくら稼げるか」のみを考え行動した典型的な悲劇ですが、実はこれと似たようなことが私たちの実生活でも起こり続けています。
 支出が放漫なまま「いくら稼げるか」に拘れば生活は当然破綻してしまいます。また、同じような仕事で比較すると、一般的に目立って高収入な仕事はそれと引き換えの長時間労働や雇用の不安定、また安全の軽視(時に犯罪への加担さえ)がつきものです。求人を見る際も、いくら稼げるかより生活のサイズをしっかりと見つめ、少しでも安定した職場を探した方がよほど豊かになるわけです。
 与えられる権利が脆い者であるように、与えられる高収入もまた脆く雇用の不安定などに繋がります。「いくら貰えるか」は職場に労働組合の仲間を作り賃上げを行い実力で使用者から勝ち取っていけばいいのです。
 稲葉一良(書記長)

 

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職場の組織化で民主主義を再生させることこそが新自由主義への最も有効な対抗手段。『JR冥界ドキュメント』(村山良三著/梨の木舎)

職場の組織化で民主主義を再生させることこそが新自由主義への最も有効な対抗手段


JR冥界ドキュメント』(村山良三著/梨の木舎

nashinokisha.theshop.jp


 今からおよそ40年前に行われた、国鉄分割民営化は国家による労働運動への大弾圧だ。 「総評を崩壊させようと思った。国労が解体すれば、総評も崩壊するということを明確に意識してやった」とは、1996年12月の『AERA』誌上での分割民営化を主導した首相である中曽根康弘の発言である。
 『JR冥界ドキュメント 国鉄解体の現場・田町電車区運転士の一日』の著者は、村山良三氏。まるで人権と法律を無視した組合潰しの大弾圧が続くなか、国労のバッチを外さず勇敢に立ち向かった組合員自身の経験を元に当時を振り返り後世に伝える1冊だ。
人間性を無視した虐めが横行、自殺者は累計150人を数えた国家による殺人
 民営化に伴い、国労の組合員が脱退を強要され差別され虐めを受けたことは広く語られている。本書では実際に経験した著者がどのように苦しみ、闘ったかが克明に記されている。行われる虐めは極めて凄惨だ。運転士から仕事を取り上げ、仕事という仕事をさせない、必要性の判然としない無意味な重労働に従事させる、組合員である事を咎められ不当な指導・懲戒、・昇進差別を受けるなど精神的・肉体的に労務政策によって追い詰めるだけに留まらず、メディアまで駆使し組合員らへのネガティブキャンペーンを大々的に展開、攻撃は乗客らからも行われた。
 さらに、社内では組合員への暴行も半ば公然と行われている。このような虐めに耐えきれず、組合を辞めるもの、会社を辞めるもの、そして、自ら命を絶つものが続出した。
 この一連の流れが、今日の新自由主義社会を作り上げる大きな要因の1つとなったことは明らかだ。そして、新自由主義の行き着く先には戦争が待っている。
 本書を読んで恐ろしく感じたのは国労潰しを主導したのが旧帝国軍人の生き残りたちであるということ。中曽根が旧帝国海軍出身の生粋の軍国主義者であることは今さら言うまでもないことかもしれないが、実行や計画はその中曽根の旧知の旧日本軍軍出身者らによって行われた。
 軍国主義戦後民主主義・労働運動を破壊し、労働者・市民から人権を奪い去ったともいえる。故に中曽根は『AERA』の誌上でも臆すことなく組合潰しを公言してはばからない。その後の30年、40年で労働組合の組織率は大幅に低下、職場では形を変えた「中曽根式」の虐めが蔓延し同時に刻一刻と戦争の足音が近づく。
 職場の民主主義の崩壊が、戦争への道を作った。これに対する最も有効なカウンターは職場の民主化、即ち組織化といえる。国労組合員が失ったものは私たち全ての労働者が失ったものでもあると本書を読み改めて感じた。
 稲葉一良(書記長)

 

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妻のキャリアのため仕事を犠牲にした夫の気持ちから見えてくる現代の「生きづらさ」。『妻に稼がれる夫のジレンマ』(小西一禎著/ちくま新書)

妻のキャリアのため仕事を犠牲にした夫の気持ちから見えてくる現代の「生きづらさ」


妻に稼がれる夫のジレンマ』(小西一禎著/ちくま新書

www.chikumashobo.co.jp


 「『男子たるもの一家の大黒柱であるべき』などとという価値観はもはや過去の遺物である」と本当に言い切ることができるだろうか。
 男女雇用機会均等法の制定・施行からもうじき40年が経過しようとしているが、性別による賃金格差や正規・非正規割合をみれば未だにこの社会は「男は稼ぎ手」という価値観に支配されていることがよく分かる。『妻に稼がれる夫のジレンマ 共働き夫婦の性別役割意識を巡って』は、小西一禎氏による著書。
 共同通信の記者であった同氏は「配偶者海外転勤同行休職制度」を活用し、妻・二児とともに渡米し、そこでアイデンティティーの喪失を経験する。同時に旧来型の性別役割分担意識が深く自身に根付いていることを自覚し、同様の境遇にある「駐夫(ちゅうおっと)」とのネットワークを構築する。本書はそのネットワークの仲間たちへの取材を通じてキャリアの途中で「男を降りた」男性たちの喪失と葛藤、再生を描きだした1冊だ。
■勝ち組男性を突如襲うアイデンティティーの喪失
 本書で登場する男性達はおおむね、大企業に正社員として勤める、いわゆる「典型的な勝ち組男性」、その意味で敢えていうなれば「男の中の男」だ。彼らはそのキャリアを順調に歩むなか、妻の転勤などに帯同するという選択を取り、結果としてキャリアに対する不安に怯え、自分自身のアイデンティティーの喪失や居場所を失ったような感覚を覚えると同時に、時に妻への嫉妬心、敵愾心のような気持ちも芽生え、時にメンタルに不調をきたした。
 このうち約半数は会社の休職制度を使っており、職を失うなどしていないにも関わらずだ。このことから2つの視点が浮かび上がる。
■「キャリアの喪失による過大なダメージ」から浮き彫りになる社会の不均衡
 まず、1つめは性別を入れ替えて見てみると、これと似たようなことは世の働く女性たちに絶えず起こり続けていてることだ。そもそも、採用の段階から性差別は根強く残っており、女性はキャリアのスタートラインから不利な闘いを強いられているのだが、本書の男性たちの多くは、そのことが本人に降りかかってはじめて狼狽し慌てふためき問題を意識するに至る。
 世の男性たちがいかに自身の特権性に無自覚であるかということ、家事をはじめとする女性的ジェンダーロールをいかに軽視し、見下していたかを顕著に表すものではないだろうか。本書で語られるのは男性の経験だが、女性に置き換えて読むと、当初、過大に被害的に受け止めがちになる男性の感じ方から社会の不均衡が浮き彫りになってくる。
■男は仕事という価値観は多くの男性をも苦しめている
 2つめは、このような「駐夫」の感じた喪失感などは不安定就労を強いられるいわゆる「勝ち組」になれなかった男性たちにも絶えずつきまとうものであるということだ。
 例えば、正社員になれない、それどころか安定して就労することも難しい、場合によっては仕事が見つからないというときに「男は仕事」という価値観は自分自身に牙を剥く。男としてあるべきと世の価値観が規定する姿(実はそれを体現できるのはひと握りであるにも関わらず)と自分自身の現状とのギャップに追い詰められ、心を病み、最悪の場合自死に追い込まれるものもいる。このことは格差が拡大し不安定就労層が広がり続ける現代で日に日に深刻さを増している。
 家父長制に基づく性別役割意識は女性を抑圧するのはもちろんのこと男性をも苦しめるものだ。「勝ち組以外はみんな負け」の価値観の世の中で、真に生きやすさを感じることができる人はどれほどいるだろうか。勝ち組になったとてそこに居続ける闘いは続く。本書を読むと現代の労働者の「生きづらさ」の根幹が見えてくる。
 稲葉一良(書記長)

 

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