プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

ブックレビュー

若い世代に送るお金と労働の基礎知識。顧問の佐々木弁護士、清水委員長も監修の1冊 。『20代からの働き方とお金のこと』(みんなの働き方改革研究会著/祥伝社)

若い世代に送るお金と労働の基礎知識。顧問の佐々木弁護士、清水委員長も監修の1冊。『20代からの働き方とお金のこと』(みんなの働き方改革研究会著/祥伝社) 学校を出て就職して職場で黙っていうことを聞いて真面目に働けば人並みの暮らしができる。私…

「日本三大オルグ」の組合運営、組織化のノウハウ・心構えが学べる1冊。『小さな労働組合 勝つためのコツ』(鈴木一著/寿郎社)

「日本三大オルグ」の組合運営、組織化のノウハウ・心構えが学べる1冊 『小さな労働組合 勝つためのコツ』(鈴木一著/寿郎社) 労働組合のオルグ(オルガナイザー)の仕事は職人芸ともいわれます。突出した個人の才覚と経験・現場のカンなどに依拠したスタ…

分かりやすいイラストで学ぶ私たちの抵抗(プロテスト)の歴史。『プロテストってなに? 世界を変えたさまざまな社会運動』(アリス&エミリー・ハワース=ブース著/青幻社)

分かりやすいイラストで学ぶ私たちの抵抗(プロテスト)の歴史 『プロテストってなに? 世界を変えたさまざまな社会運動』(アリス&エミリー・ハワース=ブース著/青幻社) 世の中を動かすのは誰でしょうか。政治家や独裁者、大企業などは大きな影響力を行…

なぜ日本は貧しいのか、その裏側にメスを入れる1冊。『日本経済の黒い霧』(植草一秀著/ビジネス社)

『日本経済の黒い霧』(植草一秀著/ビジネス社) 「一億層中流」ともいわれた時代はもう遙か過去の話。現在、日本は国際的な競争力を失い、社会は様々な貧困問題、格差、差別を抱え、かつて他人事として見ていた「貧しい国」の様相を呈しています。『日本経…

労働運動の昨日、今日を受け継ぎ、明日につなげる社会的労働運動を。『時代へのカウンターと陽気な夢 労働運動の昨日、今日、明日』(小野寺忠昭・小畑精武・平山昇共同編集/ダルマ舎叢書/社会評論社)

『時代へのカウンターと陽気な夢 労働運動の昨日、今日、明日』(小野寺忠昭・小畑精武・平山昇共同編集/ダルマ舎叢書/社会評論社) 日本の労働組合は企業別組合がスタンダードになっていますが、これは世界的に見てとても珍しいことです。企業内組合の構…

海外の民主主義実践の現場から見えた、これからの日本の地域社会市民運動のあり方。海外の民主主義実践の現場から見えた、これからの日本の地域社会市民運動のあり方

『私がつかんだコモンと民主主義』は、2022年6月に現職を僅差で破り杉並区初の女性区長となった岸本聡子氏のエッセイです。本書は日本を出て海外のNGOで働き草の根の社会運動に携わってきた著者が感じた疑問や、新自由主義の問題などを運動の視点か…

表現者が「ノンポリ」なんてかっこ悪い、一流アスリートが自伝で促す社会変革。 『ONE LIFE ミーガン・ラピノー自伝』(ミーガン・ラピノー著/海と月社)

『ONE LIFE ミーガン・ラピノー自伝』は、アメリカ女子サッカーの2度のワールドカップ優勝、2012オリンピックでの金メダルに貢献し、最優秀選手賞、得点王にも輝いたプロサッカー選手ミーガン・ラピノーの半生を記した自伝です。本書は単なる自伝の枠を…

コロナ渦で浮き彫りになった「底が抜けた社会」を照らすための闘いの記録。『新型コロナ災害緊急アクション活動日誌~2020.4-2021.3~』、『この暗黒社会に光を!~新型コロナ災害緊急アクション活動日誌2021.4-2021.9』(原作:瀬戸大作/社会評論社)

新型コロナウイルスの影響は、弱者を経済的に、社会的に直撃しました。そのときに浮き彫りになったのは、あまりにも人の生が軽んじられる「底が抜けた社会」と弱者を守らず虐げる「福祉」の実態です。『新型コロナ災害緊急アクション活動日誌~2020.4…

労働相談の現場で見たあまりに悲惨な外国人労働者の就労実態。『外国人労働相談最前線』(今野晴貴・岩橋誠著/岩波書店)

労働相談の現場で見たあまりに悲惨な外国人労働者の就労実態 『外国人労働相談最前線』(今野晴貴・岩橋誠著/岩波書店) www.iwanami.co.jp このコーナーでも技能実習生をはじめとした外国人労働者の置かれる劣悪な労働環境についてを論じた本を何冊か紹介…

構造的な外国人差別の実態に迫る。『外国人差別の現場』(安田浩一・安田菜津紀著/朝日新聞出版)

構造的な外国人差別の実態に迫る 『外国人差別の現場』(安田浩一・安田菜津紀著/朝日新聞出版) publications.asahi.com 日本は豊かで平和、誰も命や自由を奪われる心配も無い平等な国、私は幼い頃このように教えられて育ちました。しかし、残念ながら日本…

他者との境界に悩み手にした本。違和感があったら立ち止まり自分と対話することに。『つながり過ぎないでいい 非定型発達の生存戦略』(尹雄大著/亜紀書房)

『つながり過ぎないでいい 非定型発達の生存戦略』(尹雄大著/亜紀書房) www.akishobo.com 先日私は尹雄大(ユン・ウンデ)さんの『つながり過ぎないでいい 非定型発達の生存戦略』(亜紀書房)という本を読みました。この本は「正常な」発達をしてこなか…

明治、大正、昭和3つの時代を「郷士の娘」として生きたキヲの誇りと肌。『女と刀』(中村きい子/ちくま文庫)

明治、大正、昭和3つの時代を「郷士の娘」として生きたキヲの誇りと肌 『女と刀』(中村きい子/ちくま文庫) www.chikumashobo.co.jp 小説「女と刀」は、中村きい子による「思想の科学」への連載を1966年に出版したものです。作者の母をモデルとした主…

フェミニズムは変革を志向し生み出す力、フェミニズムの歴史をわかりやすくまとめた入門書的な1冊 。『フェミニズムってなんですか?』(清水晶子著/文藝春秋)

フェミニズムは変革を志向し生み出す力、フェミニズムの歴史をわかりやすくまとめた入門書的な1冊 『フェミニズムってなんですか?』(清水晶子著/文藝春秋) books.bunshun.jp 「フェミニズムってなんですか?」はフェミニズムの研究者であり東京大学教授…

残業代逃れをしようとする使用者を食いものにする煽動的な1冊。『運送業の未払い残業代問題はオール歩合給で解決しなさい』(向井蘭・西川幸孝著/日本法令)

残業代逃れをしようとする使用者を食いものにする煽動的な1冊 『運送業の未払い残業代問題はオール歩合給で解決しなさい』は向井蘭弁護士・西川幸孝社労士による共著です。本書は長時間労働や残業代未払いが社会問題になっている運送業の労務管理にオール歩…

彫刻は「われわれ」を映す鏡、思想的課題としての彫刻を論じた1冊。『近代を彫刻/超克する』(小田原のどか著/講談社)

彫刻は「われわれ」を映す鏡、思想的課題としての彫刻を論じた1冊 『近代を彫刻/超克する』は彫刻家、アーティストの小田原のどか氏による思想的課題としての彫刻を論じた1冊です。著者はプレカリアートユニオン組合員で、多摩美術大学支部の支部長でもあ…

急増する深刻な職場のいじめ 録音などの証拠を確保しユニオンに相談を。『大人のいじめ』(坂倉昇平著/講談社現代新書)

『大人のいじめ』(板倉昇平著/講談社現代新書) bookclub.kodansha.co.jp 急増する深刻な職場のいじめ録音などの証拠を確保しユニオンに相談を 職場でのハラスメントは年々増加の一途をたどっています。実際に労働相談を受けていても、一番多いのがハラス…

企業に殉じ死してなお、その理論の中に縛り付ける、「企業のヤスクニ」システムの解明に挑んだ1冊。 『企業のヤスクニ』(金子毅著/高文研)

企業に殉じ死してなお、その理論の中に縛り付ける「企業のヤスクニ」システムの解明に挑んだ1冊 『企業のヤスクニ』(金子毅著/高文研) 「英霊」という言葉があります。主に戦死者のことを敬い使われるこの言葉、死を美化することで兵士達に自己犠牲を強…

今なお色褪せない、巨匠ケン・ローチのデビュー作、辺縁化された女性が夢と現実に揺れながら力強く生き抜く。『夜空に星のあるように』(ケン・ローチ監督/1967年/イギリス)

今なお色褪せない、巨匠ケン・ローチのデビュー作辺縁化された女性が夢と現実に揺れながら力強く生き抜く 『夜空に星のあるように』(ケン・ローチ監督/1967年/イギリス) yozoranihoshi.com 本レビューでも幾度となく取り上げている社会派の巨匠ケン…

世の中に取り残された「家族」がたくましく生きる様を描く、不寛容な日本社会の問題が浮き彫りになった作品。映画『万引き家族』(是枝裕和監督/2018年/日本)

映画『万引き家族』(是枝裕和監督/2018年/日本) gaga.ne.jp 世の中に取り残された「家族」がたくましく生きる様を描く不寛容な日本社会の問題が浮き彫りになった作品 家族とは何か、他人とは何か、深く考えさせられる作品でした。「万引き家族」は、…

現代社会の「流行病」とも言われる自閉スペクトラム症の入門書。『自閉スペクトラム症 「発達障害」最新の理解と治療革命』 (岡田尊司著/幻冬舎新書)

www.gentosha.co.jp『自閉スペクトラム症 「発達障害」最新の理解と治療革命』 (岡田尊司著/幻冬舎新書) 現代社会の「流行病」とも言われる自閉スペクトラム症の入門書 自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害を抱える人は決して少なくありません。『自…

トリクルダウンよりボトムアップを。貧困を強制される社会の実態を暴き出した1冊。『不寛容の時代 ボクらは『貧困強制社会』を生きている』(藤田和恵著/くんぷる)

『不寛容の時代 ボクらは『貧困強制社会』を生きている』(藤田和恵著/くんぷる) www.kumpul.co.jp トリクルダウンよりボトムアップを。貧困を強制される社会の実態を暴き出した1冊 自己責任論が世にはびこって久しい今日ですが、果たして、なかなか仕事…

虐げられ社会の底辺で暮らす心優しき青年がゴッサムシティを震撼させるジョーカーになるまで。『ジョーカー』(トッド・フィリップス監督/2021年/アメリカ)

バットマンシリーズを代表するヴィラン(悪役)である「ジョーカー」は1940年刊行のコミックス第1話から登場し、多くの熱狂的なファンを獲得しています。そんなジョーカーは時代と共に様々な描かれ方をしてきましたが、共通しているのは、生身の人間で…

「よかれ」と思ってしたことが相手の命を奪うこともある。アウティング問題について総合的に解説した1冊。『あいつゲイだって アウティングはなぜ問題なのか?』(松岡宗嗣著/柏書房)

アウティングとは、本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露することです。今日、世界中でアウティングを受けたことにより自ら命を絶つ事件が後を絶ちません。『あいつゲイだって アウティングはなぜ問題なのか?』は、性的マイノリティに関する情報を発信す…

「理論」編は難読だが一読の価値あり。 残業代計算に対する見識が深化する1冊。『新版 残業代請求の理論と実務』(渡辺輝人著/旬報社)

残業代の未払いは、現代日本社会が抱える最大の問題の1つであるといっても過言ではありません。残念ながら多くの会社が、残業代を適切に支払っていません。日本国内の未払い残業代総額は数兆円になるとも十数兆円になるともいわれています。『新版 残業代請…

闘う労働組合つぶしが 労働者の賃金を破壊する。『賃金破壊 労働運動を「犯罪」にする国』(竹信三恵子著/旬報社)

『賃金破壊 労働運動を「犯罪」にする国』(竹信三恵子著/旬報社) www.junposha.com 『賃金破壊 労働運動を「犯罪」にする国』。恐ろしいタイトルです。 著者はジャーナリストの竹信三恵子さんです。私がこのブックレビューを書くきっかけとなったのは、2…

ノマドたちの厳しい現実描きつつ、 広大な自然を背景に物質主義への疑問も。『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督/2020年/アメリカ)

『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督/2020年/アメリカ) searchlightpictures.jp 物語は2008年のリーマンショックで主人公のファーンが家を失い、家財を売って手に入れた1台のバンに生活に必要なものを詰め込んで生活を始める所から始まります…

瞬間毎に移り変わる感情に振り回されないための1冊。『〈新版〉自分を支える心の技法』(名越康文著/小学館新書)

『〈新版〉自分を支える心の技法』(名越康文著/小学館新書) www.shogakukan.co.jp 人は誰しも心に怒りの感情を抱く生き物です。しかし、怒りに振り回される人とそうでない人がいます。「自分を支える心の技法」は、そんな怒りのストレスで疲れ果てないた…

世界中の労働運動の変遷を 網羅的に学ぶことができる1冊。『団結と参加―労使関係法政策の近現代史』(濱口桂一郎著/労働政策研究・研修機構)

『団結と参加―労使関係法政策の近現代史』(濱口桂一郎著/労働政策研究・研修機構) https://www.jil.go.jp/publication/ippan/danketsusanka.html 当たり前のことですが、労働組合があるのは日本だけではありません。労働運動は世界中様々な国で、その国毎…

新“自由”主義の蔓延する世界で「搾取する側」に回ったシングルマザーの物語。映画『この自由な世界で』(ケン・ローチ監督/2007年/イギリス、イタリア、ドイツ、スペイン)

新“自由”主義の蔓延する世界で「搾取する側」に回ったシングルマザーの物語 映画『この自由な世界で』(ケン・ローチ監督/2007年/イギリス、イタリア、ドイツ、スペイン) 映画「この自由な世界で」は2007年イギリスで製作された映画です。監督は…

巧妙に隠された差別の構造を鋭く暴き出した1冊。『ひれふせ、女たち ミソジニーの論理』(ケイト・マン著/慶應義塾大学出版会)

巧妙に隠された差別の構造を鋭く暴き出した1冊 『ひれふせ、女たち ミソジニーの論理』(ケイト・マン著/慶應義塾大学出版会) ミソジニーという言葉は一般的には「女性嫌悪」、「女性蔑視」のことであると理解されています。『ひれふせ、女たち ミソジニ…