プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

正規/非正規にかかわらず、働きながら労働条件をよくする方法

職場で仲間をつくろう! 職場に労働組合を作ろう!
正規/非正規にかかわらず、働きながら労働条件をよくする方法

連載1 労働組合があれば解決できる

大平正巳

 非正規労働者、フリーターが全労働者の4割を超えています。20歳代〜40歳代前半では6割がアルバイト、有期雇用契約や派遣契約といった不安定な働き方、生活を強いられる労働者となっています。労働者の多数派となった非正規労働者は、しかし、まっとうな評価と待遇を受けていません。相も変わらず、補助的な役割しか果たしていないとしか看做されていないのです。また、非正規雇用労働者が、正規雇用労働者に移行する展望がないなかで、私たち現場労働者がまっとうな生活を維持する待遇を確保する為に必要な事は職場の労働条件を改善するしか方法はありません。その最も効果的な方法は要求を実現する為に自分の職場に「労働組合」をつくることです。では、どうやって一緒に労働組合を作る仲間を作ればよいのでしょうか。

 労働組合労働組合法の規定に則り、二人以上が組合員となって(私たちのような個人加盟ユニオンには1人から加盟できます)、規約、役員を選出すれば誰にでも作れます。ここが、日本で最も簡単に作れる「法人」と言われる由来です。しかし、この組織によって労働者が得られる力は絶大です。詳しくは後半でも説明しますが、大きくは3点あります。
 一つは経営者に拒否権のない団体交渉権の獲得
 二つ目が刑事・民事免責を受けらる団体行動権の獲得。
 三つ目が、不当労働行為救済申し立てなど法的保護が受けられることです。

職場に仲間を作る方法
 しかし、みなさんがこの説明を聞いてまっ先に思うことは「組合を作ろうにも仲間がいない」ということではないでしょうか。私が2006年からフリーター全般労働組合の活動に関わるなかで、いつも壁として立ちはだかっていたのもこの点でした。これまで、一人の労働者が組合に加入して会社と闘う個別的労使関係の壁を打ち破り、集団的労使関係を築くことの難しさを実感してきました。しかし、今、私たち組合は職場で働きながら労働条件の改善を実現する実績を積み上げ、蓄積できるまでに力をつけました。
非正規労働者は企業にとって欠くことのできない労働力として使用されていても待遇は常に不安定な状態に置かれ、社内の意思決定や運営からは排除されています。仲間や腹を割って話せる「同僚」や「上司」というものを作る機会からも排除されています。仕事が終われば、「はいそれまでよ」という職場で、会社から解雇や労働条件の一方的な引き下げなどの不利益変更を申し渡されても、孤立した状態では仲間の応援すら受けられません。実際私たちが受ける相談の場面でも職場の仲間も一緒に闘えないかとの問いかけに「無理です」「難しいです」と答える相談者がほとんどでした。
 そこで、みなさんに質問です。みなさんが、仲間と考えた時、どのような人々が頭に浮かびますか。学校時代の仲間、遊び仲間、趣味の仲間、メル友などなどでしょうか。個々人が仲間と考える時、その見え方は様々でしょう。一言で仲間と言っても人それぞれなのです。ここをハッキリさせる必要があります。
 専門職のメガネという言葉があります。医者は医療というメガネをかけています。このメガネを掛けると病気というものが良く見えるようになります。社会福祉の専門家は対象者の生活上の困難がよく見えるようになります。私たち労働組合の活動家のメガネは対象者の働く上での問題点がよく見えます。そして、問題点の上に立った要求と目標づくり、そして仲間づくりを援助することができます。労働組合をつくる上での仲間とは、要求の実現で結びついた仲間なのです。これまでの仲間意識とは違った人々がきっと浮かび上がってくると思います。

非正規でも働く条件を変えられる
 この6年間の活動の中で私たちに様々な経験とノウハウが蓄積されました。実際の例を挙げてみます。ある運輸会社では非正規の組合員が、職場の正社員・管理職を仲間にして職場に確固たる労働組合を立ち上げました。
 また、あるビルメンテナンス会社では、そこで働く非正規労働者が現場労働を担う同僚を組織することにより、有期雇用契約を撤廃させ、労働条件を具体的に改善させるなど、会社と対等以上の交渉を行っています。
 他にも、工場閉鎖によりリストラされかけたアパレル会社のアルバイト労働者が仲間を募り労働組合を結成、リストラ計画を撤回させ、更に、改正パート労働法を活用して正社員化に向けての交渉を開始するまでのところまで迫っている例などもあります。その他、法律以下の働き方を是正、改善させてきた例ならば、いくらでも挙げることができます。

最初はたった一人から
 これらの例は、最初は皆たった一人の組合員からはじまった闘いです。最初の一人となった組合員も特別訓練された人物ではありまあせん。みなさんと同じ普通の非正規労働者が明確な目的意識を持ち、私たちと協力し合い、作戦を立て、着実に実行していったなかで実現していっただけなのです。
 一人ぼっち、または少数から脱し、労働組合に加入する仲間を増やし、要求を実現していくにはどうしたらよいのか。みなさんが、その気になれば私たちにはノウハウは豊富にありますし、それを提供することもできます。
さぁ、共にまともな人生設計を組み立てられる職場をつくりましょう。

有期雇用でも派遣でもたじろぐ必要なし
 職場に組合をつくり、働きながら自らの労働条件を向上させる為に、現場労働者が行なえる最も効果的な取り組みは、職場・職域で仲間を増やし労働組合を結成することです。その為に、私たち組織者がみなさんに送るメッセージは、「自分が働く上で、問題が起きたら、話し合いで解決しよう。そのために、まず労働組合に相談しよう」ということです。
 自分は有期雇用契約だから、派遣労働者だから、会社に歯向かったら直に首になるとたじろぐ必要はありません。前にも述べましたが、社会では既にみなさんが多数派なのです。
 みなさん、労働組合に相談に来るような労働者はすべからく働く上で問題を抱えています。経済的な問題、パワハラの問題、解雇など地位に関する問題などです。しかし、ここで労働組合に相談しようと考える。ましてや自分で職場に労働組合を作ろうと考えるひとは極少数です。
 問題解決のために動こうとする人でも、多くは手段として労働基準監督署や行政窓口、無料相談会などで法律家に相談するでしょう。この傾向は、社会経験が少なく、様々な情報に触れにくい不安定雇用労働者に行くほどその傾向が強いように感じます。つまり、問題解決の方法が自分たちの手元にあるということに気がついていないということです。

自分の問題がみんなの問題に
 大企業で働く組織労働者と違い不安定雇用で働く労働者にとって労働組合は無縁です。個人加盟の労働組合としてイメージするのは、争議をやっている姿。しかし、これは労働組合が持つ一部の側面です。
 労働組合が最も力を発揮できるのは、問題を話し合いで解決するための組織という側面です。多くの人にとって、問題が起きれば話し合いで解決を図ることは常識でしょう。問題がおきたらまず、会社と話し合いを行い、解決を図ることが必要です。
 その時に、労働者が個別の問題と感じていることが、実は会社内に共通した課題・問題であることが明らかになれば、仲間を増やし、本当の意味での集団的労使関係の構築に向かう糸口と可能性が出てくるのだと思います。
 労働者が真っ先に相談すべき組織、労働者が会社と対等に話し合いを行う権利を保障する為に、法律で保護された存在は労働組合です。これには、会社の中にある労働組合(社内組合)と会社の外にある労働組合(社外組合)がありますが、機能的には同じです。
 問題が起きればまず労働組合に相談することが、問題を解決するために採る基本的な方法です。不安定な働き方は、解雇や望まない転職の繰り返しと表裏一体です。まともな職業キャリアも人生設計とも無縁です。みなさんが取りうるベターな方法は、今働く職場でよりよい労働条件と環境を手に入れることではないでしょうか。
 次回以降、具体的にどのようにすれば労働条件を改善して行く上での仲間が作れるのか、どのように労働組合を作るのか、具体例を挙げながら説明します。