プレカリアートユニオンブログ

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山田結婚相談所「非正規は結婚できないって本当ですか。」 第6話 「夫は家事をしないって本当ですか、山田先生。」

山田結婚相談所「非正規は結婚できないって本当ですか、山田先生。」
第6話 夫は家事をしないって本当ですか、山田先生。

前回までのあらすじ
山田が所長を務める山田結婚相談所に、友人の木下(29歳,派遣労働者)がやって来た。去年の年収が140万円だった木下は、結婚できるのかどうか不安だという。そこで山田が独身女性の結婚観を解説した。調査によると東京都では独身女性の66%が結婚相手に年収400万円以上を望み、39%が年収600万円以上を望んでいるという。
稼ぎの少ない木下は、夫婦二人が働いて250万円ずつ稼ぎ、家事も夫婦で同じくらい分担するライフスタイル「木下プラン」を提案した。これなら結婚できると木下は言う。しかし女性の低賃金のため、現状では夫婦共稼ぎでも年収500万円には達しないことを山田は示し、性別に関係なく労働を評価するために、男女雇用機会均等法の罰則強化や同一価値労働同一賃金の法制化を提案した。
また木下プランの問題点として出産・育児期の女性の退職を挙げ、育児休暇が取りづらい職場状況について山田は話した。調査によると仕事を辞めた女性の65%が家事・育児負担を理由にしているという。

夫は家事をしない。家事・育児の9割を妻が負担している。
木下:でも夫は家事をしないっていうけれど、どれくらいしないんですか。案外やってるんじゃないですか。
山田:じゃあ夫の家事分担について見てみよう。いろいろな調査があるけれど、子供をもつ共働き世帯*1がわかるものをね。育児時間も見たいからね。では1日のうちの仕事時間、家事時間、育児時間を表にしてみるよ。比較のために「子供がいて妻は専業主婦、夫だけが働いている*2」という世帯も表にしよう。ただしこの数値は、年齢も職業もさまざまな人たちすべてを平均したものだよ。

子供をもつ夫婦の1日の仕事・家事・育児の平均時間(○°△′は○時間△分を表す。)
     仕事時間 家事時間 育児時間 家事+育児時間 仕事+家事+育児時間
妻(共働き) 4°12′3°26′43′ 4°09′ 8°21′
夫(共働き) 7°36′12′ 11′ 23′   7°59′
妻(専業主婦) 2′ 4°44′3°00′7°44′ 7°46′
夫(妻が専業主婦) 7°21′9′ 19′ 21′   7°42′
総務省平成23年社会生活基本調査』「調査票A生活時間編 第33表」より作成

山田:まず共働きの妻について見ると、家事に3時間26分、育児に43分、仕事に4時間12分をつかっている。
そして共働きの夫は家事に12分、育児時間に11分、そして仕事に7時間36分つかっている。
木下:やっぱり男は家事をしないんだ。でも夫の仕事時間が7時間何分ってのは少ない感じですけど。
山田:この数字は1週間の平均だからね。平日と休日の仕事時間をならしてるから短くなるんだ。だから平日に仕事、土日に休むと仮定して計算してみよう…、夫の平日の仕事時間は10時間38分になる。妻のほうも計算すると…、平日の仕事時間は6時間53分だ。
さて家事時間と育児時間をたすと、妻は4時間09分で、夫は23分だ。専業主婦の妻がいる夫の家事・育児時間を見ると21分だ。なんと2分しか違わない。妻も働いていることを夫は配慮していないってことがよくわかるね。「男は外で働き、女は家庭を守る。」という規範は、共稼ぎをしていても、夫にしっかり根付いているってわけだ。
で、家事・育児の分担比率を計算してみると、家事・育児の91.5%を妻が、残りの8.5%を夫がやっているんだ。妻は週に5日、外で7時間働き、家でも家事・育児の9割をこなしている。女性にとって結婚後の生活はかなりしんどいってことがよくわかる。
木下:この分担率を見ると、女性は結婚したくなくなるだろうなあ。少なくとも共稼ぎの妻にはなりたくないって思うよなあ。
 *1:資料での表記は「夫が有業で妻も有業(共働き)」
有業は被雇用(いわゆる会社員)だけでなく、自営業や農林漁業などをも示す。
 *2:資料での表記は「夫が有業で妻が無業」

赤ん坊を育てている妻の負担は、さらに重い。
木下:ちょっと話が戻るんですけど、「女性は、子供ができたら仕事を辞める」っていうのが気になってて、赤ん坊がいる女性の負担はわかりますか。
山田:ああ、わかるよ。じゃあ0歳の赤ん坊*3を育てている夫婦の仕事・家事・育児時間を表にしてみるよ。

赤ん坊をもつ夫婦の1日の仕事・家事・育児の平均時間(○°△′は○時間△分を表す。)
 仕事時間 家事時間 育児時間 家事+育児時間 仕事+家事+育児時間
妻(共働き)1°03′ 2°55′5°52′8°53′ 9°56′
夫(共働き)7°46′ 15′ 1°17′1°32′      9°18′
妻(専業主婦)1′      3°26′5°56′9°22′ 9°23′
夫(妻が専業主婦)7°56′ 11′ 51′ 1°02′  8°58′
総務省平成23年社会生活基本調査』「調査票A生活時間編 第33表」より作成

山田:さてと、妻の家事時間は2時間55分、育児時間は5時間52分で、仕事時間は1時間03分だ。
それに対して夫の家事時間は15分、育児時間は1時間17分、そして仕事時間は7時間46分となっている。
しつこいようだがこの数字は共働き夫婦、つまり妻も働いている場合の数字だよ。それにやらなきゃならないことは仕事や家事だけじゃない。わかっているだろうけど、食事や通勤、それから洗顔・歯磨き・入浴など身の回りのことや休憩・睡眠も必要だ。
木下:へえー、妻が大変な時でもほとんど男は家事をしないんだ。でも育児が1時間17分ってのは頑張ってるのかな。
山田:妻は家事・育児を8時間47分やって、さらに仕事もやって、1日10時間近く働いてるんだから、それくらいやらなきゃ人でなしだろう。それにこれが毎日続くんだ。家事・育児に休日はないからね。そのうえ赤ん坊は、「朝起きて、夜寝る。」っていう規則正しい生活ではないからね。食事時間も決まっていない。おなかが空けば、夜中だろうがいつだろうが泣いておっぱいをせがむ。お母さんはまとまった睡眠も取れないんだよ。
*3:資料での表記は「末子の年齢0歳」。

赤ん坊を育てている母は、テレビや趣味の時間を削っている。
山田:自由時間についても見てみよう。テレビの視聴や趣味・交際などに費やした時間*4は、夫が1時間46分、妻が1時間22分で、妻のほうが24分短い。比較の基準として「子供*5のいる世帯の妻」を取り上げてみると、テレビ視聴・趣味などの時間は2時間49分で、これと比較すると赤ん坊を育てている妻は1時間27分も短い。赤ん坊を育てている妻は、趣味などの楽しみや息抜きを我慢して家事・育児をこなしてるってことだ。(第7話に続く)

赤ん坊/子供をもつ夫婦の1日の睡眠・趣味などの平均時間(○°△′は○時間△分を表す。)
          睡眠      休養・くつろぎ テレビ・趣味・交際など
赤ん坊のいる世帯 妻(共稼ぎ) 7°28′ 1°03′ 1°22′
     夫(共稼ぎ) 7°27′ 1°05′ 1°46′
子供*5のいる世帯 妻*6    7°07′ 1°20′ 2°49′
     夫*6    7°29′ 1°22′ 3°09′
総務省平成23年社会生活基本調査』「調査票A生活時間編 第33表」より作成
*4:資料での活動分類「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の視聴」「趣味・娯楽」「スポーツ」「交際・付き合い」の各時間の合計。
*5:0歳の乳児を含む、すべての子供。
*6:妻も夫も、有業の場合と無業の場合の双方を含む。