プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

介護の仕事について語ろう その3「介護現場の「いびり」について」

「いびり」という言葉を聞くと何を連想されるでしょうか?
 やはり「嫁いびり」が真っ先に思い浮かぶ方が多いと思います。「いじめ」「虐待」「パワーハラスメント」と異なり「いびり」は、もっと独特さを感じさせると思います。「嫁いびり」を古い辞書で引いてみました。
「いびり=いじめる。しいたげ苦しめる。いびり出す=いじめていたたまれないようにして追い出す」とあります。とても泥臭い。昔の「嫁」は他家に嫁ぐ者、要は旦那さんの身内や家族だらけの血縁地縁の中に、環境、価値観、個性など、共通点のあまり無い人間が異物の様に一人で集団の中に入るものと個人的には解釈しています。
 また「嫁の教育」と称して徹底的にそこでの価値観や習慣を強要する。完全に染まったものを“良い嫁”とし、染まりきれず抵抗がある者を“至らない嫁”としていびり抜き、いびり出す。最悪の場合、自殺に追いやったり飼い殺しにしてしまう。という印象を持っています。
 それはずっと昔のこと、あるいはテレビドラマなどで扱われる題材と思いがちですが、実は介護の現場によく見られる構図に非常に似ているなあと最近考え始め、今回はそこから掘り下げていこうと思いました。

異物への中傷が語り継がれる業界
 福祉業界は狭いとよく耳にします。人手不足なので転職に困らないとも言われますが、狭い故にどこに行っても居場所が確保できなかったり、問題があると判定されて移動を繰り返すと、何故か個人像が一人歩きして伝達されやすい特徴もあるようです。実際にその人がどういう人間か、また、問題とされた背景についての詳細が伝わることはないので、いわば“噂”として語り継がれていくことが多いようです(徹底した真偽の追求や検証など当人がいないのだから絶対に無理です)。
 自分自身の過去の経験や、実際に他の方々から少しずつ耳にするのは、何年前の古い話であろうと、中傷対象者は実名で、つい昨日のことのように職場で話題にされたり、新人が入ると、こぼれ話のように繰り返し話題にされる特徴もあります。
 縁もゆかりもない人物が、まるで一緒に居たかの様な錯覚を起こさせることも珍しくありません。何らかの軋轢があって辞職、転職したと思われる人間を都市伝説のように語り継ぐ光景に遭遇した人は多いのではないでしょうか? 他の職場ではよほどのことがない限り見ない光景と思います。

嫁いびりと介護業界のいびりの共通点
 では何故こんな事があちこちで当たり前のように起こっているのだろうか? 考えてゆくと介護現場の土壌にあるのではないか? と思い当たりました。特に小規模で活動している仕事場の場合、主に経営者を軸とした古い知人、友人、またそれらの人々の紹介で職場が成り立っていることはとても多いようです。求人誌などで応募して行ってみたら自分以外は全て身内、またそれに近しい関係者だったという状況も多いでしょう。
 どの職種でも、立場の強い人間の身内が多く入り込んでいると村社会の構造が出来てしまい、外部から入った人間は非常に働きにくいといわれます。介護職の場合、村どころか完全な家社会と言っても過言ではないかもしれません。介護業界全体を村社会とすれば、単独の小さな職場は家そのもの、昔の「嫁」のような立場で仕事をすることになるのではないでしょうか。
 先に書いた”いびり”ですが「嫁いびり」といえば、堂々と意見を出し合ったり、時に感情をぶつけながらも分かり合おうとするという対等さ、大人同士の解決方法などはなく、そもそもこんな明るいことはしません。感情がこじれたり行き過ぎた場合や別の社会背景や個人的理由から起こるパワハラなどとは異なると思います。「嫁」は旦那さんの所有物であり家の共有物であると見なされること。つまりそこには仕事、労働、大人同士の関係といったものは存在しにくい状態です。
 極端な例えですが、もし牛馬に人格が備わっていたら厄介です。従順な労働力として扱うには邪魔な人格を破壊しなければいけません。体は労働を叩き込み、人格のみ破壊するにはどうするか? そこで“いびり”が武器として使用されるのではないでしょうか。そのやり方は、決して表立たず空気にさえ小さな悪意を潜ませ、身内の連携で追い込んでいきます。
 次回は介護現場に見られがちな“いびり”を具体的に書いていこうと思います。ですが勘のいい方、あるいはすでに“いびり”で悩まれている方はすぐにピンとこられると思います。そんな方は、身内だらけのところでは決して解決できません。ぜひ、外部の力、人間と手を取り合ってください。ご相談、愚痴、お待ちしています!
■K・M(組合員)

<もう一言>
ちゃんとしたもの食べているか?毎日楽しいか?
お金はもらっているか?だまされたりしていないか?あんたは
ボンヤリ者だから・・・郷里からの便りではありません。
介護で利用者さん達がポロリとこぼしてくる言葉の数々です。
元受刑者で介護職に就いた人463名は5年後には僅か19名だったと
いう記事を読んで、残った19名の方々にも、こんなやり取りを
された人もいるかも知れないなあと考えたりしました。
他愛の無い気遣いの言葉がどれだけ心に重く響くことか。
しんどい仕事でもある介護。
入った経緯はどうあれ残って仕事をしてくれている人達がいるのだもの!
頑張れ19名!応援したって罰は当たるまい、とボンヤリ考えました。