プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

7月17日・日本労働弁護団の「残業代ゼロ法に強く反対する集会」で発言

 2014年7月17日、日本労働弁護団が主催して開催された集会「残業代ゼロ法に強く反対する集会〜過労死促進法・ブラック企業合法化法は断固阻止〜」で、現場からの報告として、全国ユニオンから、おおよそ次のように報告させていただきました。http://roudou-bengodan.org/topics/detail/20140622_post-101.php

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 全国ユニオン全国委員で、プレカリアートユニオン書記長の清水直子です。
 1日8時間働いて週2日休めるとすると、1ヶ月の労働時間は173から174時間になるはずです。しかし、たとえば、私が相談を受けているトラックドライバーの労働時間は、月400時間に及んでいます。つまり、時間外労働の方が、所定労働時間より長いということです。1日16時間労働で週1日休めるかどうか。私たちが相談を受け、交渉をしている会社では、残業代を正しく払わず、払わないからこそ、平気で長時間労働をさせているというのが実態です。
 社長が一方的に賃金を下げたのが許せないと相談に来た長距離トラックドライバーは、最初から月100時間の時間外労働をみこんだ月12万円程度の手当が支払われていました。会社の主張通り、月100時間の時間外を手当で払っているとしても、さらに月10万円以上の残業代が未払いでした。この会社は、ドライバーが過労で運転中に意識を失い、路上で大きな死亡事故を起こしていました。
 50日以上の連続勤務をした長距離ツアーバスのドライバーは、ようやく1日休んだその日に脳出血で倒れて意識を失い、亡くなりました。会社は、過労死であることの証拠を隠し、労働時間が短かったかのように資料を改ざんしました。改ざんしたことを労働基準監督署も把握し、仮眠したホテルの宿泊記録から労働時間を推定し、直近1ヶ月の時間外労働が100時間を超えていたため、労災を認定しました。やはり残業代は未払いでした。
 組合員の仲間のドライバーには、プライベートで乗用車で高速道路を走るときに、トラックの近くには行かないという人もいます。ツアーバスのドライバーは、自分の家族は乗せたくないと言います。私も、先日、高速道路で、過積載で傾いていたり、無茶な運転をするトラックを見て、怖いと感じました。そして、これから組合の仲間になるかもしれないトラックに、怖いと思った自分を恥ずかしく思いました。眠いのに、疲れて早く帰りたいのに、長いと所定労働時間の2倍以上も働いているのです。人によっては、給料は20年前の半分になっています。規制緩和によって中小零細業者の参入が拡大し、買いたたき、過当競争が進んだ結果、荷主の細かい要求に応えながら、こんな過労状態で、時間外賃金も支払われずに働いているのです。
 私たちが手にしている便利な生活、それを可能にしている物流、その物流の根幹を支えるのはトラックドライバーです。その労働実態は過酷で、危険です。危険は、路上の無関係な人を巻き込む可能性があります。
 全国ユニオン東京管理職ユニオンが交渉をしている、ドラッグストア・セイジョーを経営するココカラファインでは、勤続20年以上の44歳の男性店長が、2年前にくも膜下出血で倒れ、意識不明となり、2年以上寝たきりの状態が続いています。この会社では、時間外労働の二重帳簿があって、正確な労働時間が把握されないようごまかしていました。これを労働基準監督署が見抜いて昨年3月、労災認定されました。
 私たちの仲間は、月400時間労働に従事して、労災で心筋梗塞を発症し、生死をさまよった経験をしています。田口運送と都流通商会という会社では、変動残業代制と呼ばれる、残業代ではない、基本給より高い手当を払って残業代を払ったことにする仕組みをとっています。つまり、残業代の不払いは、長時間労働と裏表の関係にあります。労働者をただ働きさせるからこそ、高速道路の料金を惜しんで、長時間労働をさせるのです。残業代を払わなくすることは、決して、労働時間の抑制にはつながりません。労働時間を短くしたければ、労働時間を厳しく規制すればよいのです。
 私たちの仲間が、変動残業代制という残業代を支払わなくするおかしな仕組みを裁判で問い、勝利判決を得て、和解しようとしています。もし、残業代ゼロが合法化されてしまったら、こんな闘いもできなくなってしまいます。
 私たちは連合の構成組織です。連日野戦病院のようななかで、このような労働相談を受け、交渉と争議に明け暮れています。私は、連合が、労働者保護ルールの改悪に強く反対し、残業代ゼロ、クビ切り自由化は許さないという姿勢を貫いていることに勇気をもらい、誇りと希望を持っています。厚生労働省でうまいことをいう官僚は、もしかしたら善意かもしれません。しかし、残業代ゼロは労働時間を短くしない、残業代の不払いは長時間労働をまん延させるという実態に目を向けていただき、引き続き共に闘っていきましょう。
 みなさん、残業代ゼロをはじめとする労働者保護ルールが壊されてば、人の命や健康、生活、この社会の基盤が壊されてしまいます。それぞれの持ち場で、そしてお互いに力を合わせて、幅広い層を巻き込みながら、また、返り討ちにしましょう。