プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

『毎日新聞』(2014年07月30日付)朝刊に記事掲載

毎日新聞』(2014年07月30日付)朝刊にプレカリアートユニオン組合員が取材に協力した記事が掲載されました。
 * * *
 東京都内の運輸会社に勤務する梅木隆弘さん(45)の月給は20年前のほぼ半分の約25万円。「物流費はタダじゃない。トラック運転手の待遇改善のためには荷主の負担を増やしてもらうしかない」と窮状を訴える。
 * * *

http://mainichi.jp/shimen/news/20140730ddm008020188000c.html
物価と暮らし:第2部/3 運輸業の反転攻勢
毎日新聞 2014年07月30日 東京朝刊

 今年1月、埼玉県の中堅運輸会社の社長(71)は、意を決して数十年の付き合いの得意先メーカーを訪ねた。何事かといぶかる担当者を前に、社長は「ここで運賃を引き上げてもらえなければ、近い将来、御社の荷物を運べなくなる恐れがあります」と正面から運賃引き上げを切り出した。結果は「1割の値上げ獲得」。工場で製品を作っても取引先に送れない事態が現実味を帯びる中、荷主側も値上げ要求をのまざるを得なかった。

 景気回復で企業間のモノの取引が活発化し、各地でトラック運転手の不足が深刻化している。運賃引き上げに成功した社長は「値上げ分は下請けのトラック運転手の賃金に充てる。買いたたかれる一方だった荷主との関係が変わり始めた」と胸をなで下ろした。

 運輸業界は1990年の規制緩和以降、事業者の数が従来の4万社から6万社と1・5倍に急増。一方で、バブル崩壊後の景気低迷に伴い、荷主からの発注量はさほど増えず、採算度外視の低価格競争が激化した。全事業者の半分は従業員数10人以下の零細企業で、荷主とまともに交渉できない立場。しわ寄せは現場の社員に及び、トラック運転手(中小型)の2012年の平均賃金は、全産業平均を2割下回る370万円まで低下。「劣悪な待遇で、建設業と同じく若者が集まらなくなった」(国土交通省

 東京都内の運輸会社に勤務する梅木隆弘さん(45)の月給は20年前のほぼ半分の約25万円。「物流費はタダじゃない。トラック運転手の待遇改善のためには荷主の負担を増やしてもらうしかない」と窮状を訴える。

 こうした運輸業界の潮目が変わったのは、アベノミクス効果で消費が活発になった昨冬。デフレ経済の下で隠れていた人手不足問題がにわかに顕在化し、運賃を引き上げなければトラック運転手を思うように確保できない事態が発生した。

 荷主がインターネットを通じて仕事を発注する「求荷求車情報ネットワーク」によると、契約成立時の運賃指数(10年4月を100とする)は、13年12月に119と約2割上昇。消費増税前の駆け込み需要で忙しくなった今年3月には126まで上がった。業界大手のヤマト運輸や佐川急便が昨年来、相次いで法人向け料金の実質値上げに踏み切ったことも追い風となり、業界内では荷主との中長期の契約でも運賃引き上げの動きが出てきている。

 運賃の上昇が続けば、荷主は商品価格への転嫁に動く。「安易な価格転嫁で客に逃げられては元も子もない」(都内の飲食店)と経費削減でしのぐ業者もあるが、経営体力のない中小企業の間では、酒造会社、雑貨卸、資材販売など、今年に入って運送費の上昇を理由にした値上げが相次いだ。豆腐製造業「京都タンパク」(京都市)も、大豆価格の高騰と運送費上昇が負担となり、スーパーなどの取引先に対して約1割の値上げを要請する方針だ。八陳(はちじん)康夫社長(73)は「コストを転嫁しなければ経営が成り立たなくなる」と理解を求める。

 運送費と無縁の企業はほとんどない。約20年にわたって買いたたかれてきた運輸業界の「反転攻勢」は、日本のあらゆるモノの値段を押し上げる可能性を秘めている。【大久保渉】=つづく