プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

明成物流支部、残業代請求集団訴訟をさいたま地裁へ提訴

5月28日の第1回期日で山田支部長が堂々の意見陳述
第三次提訴で組合員十数名の集団提訴へ

 プレカリアートユニオン明成物流支部組合員は、残業代の支払いを求めて浦和のさいたま地裁に提訴し、5月28日の第1回期日で支部長の山田元晴さんが訴訟に至る思いと意義について意見陳述しました。第一次の提訴は、組合員4名。6月中旬には6名の組合員が第二次提訴を行い、さらに第三次提訴に向け準備を重ねており、最終的には十数名の集団提訴になる見込みです。
 山田さんは、「物流の中心を担うこの仕事に責任を感じ誇りを持っている」と述べ、「時間外労働の賃金を支払わないようにするため、距離や出発時間とは関係のない行先手当が残業代であるかのように主張して、残業代の支払いを拒んでいる」と、会社の不当な対応を批判。「同じ業界で働く運転手の多くが長時間労働と残業代の不払い問題に直面している。このままでは、日本で物を運ぶ輸送の現場が破綻してしまう。この裁判で、運送業界の再建に貢献したい」と堂々の陳述を行いました。
 明成物流支部は、昨年6月以降、明成物流株式会社、永田紙業株式会社と団体交渉を重ねてきましたが、会社側は、過去に一方的に下げた賃金については元に戻す、事故の負担金は返還する等の改善をしたものの、過去の残業代については、交渉の場で一度は払うと約束しながら、昨年の9月から急に態度を変え、「残業代の未払いは無い」として反故にしてきました。
 また、組合員に対してあえて賃金が低くなるような仕事を与える不当労働行為も重ねてきました。そこで、支部は昨年10月に東京都労働委員会に不当労働行為の救済の申し立てを行い、また、昨年12月には残業代の支払いを求めて労働審判の申し立てを行ってきました。

労基署の是正勧告も無視、不当労働行為を繰り返すブラック企業の典型
―――明成物流(株)と永田紙業(株)を絶対許さない!!
 しかし、会社は、労働基準監督署の4回にわたる是正勧告にも従わず、不誠実で非和解的態度を貫き通しているため、このたび、労働審判から本訴に移行して闘い抜くことにしました。第3陣の提訴も含めて、総勢十数名による残業代請求集団訴訟になると思われます。プレカリアートユニオン不退転の決意で闘い抜く決意です。皆さん、さらなるご支援をお願いいたします。


2015年5月28日
さいたま地方裁判所 第5民事部2B係御中

意見陳述

原告 山田 元晴

1 私は、被告明成物流株式会社に平成18年11月に入社しました。以来、約9年間、20トントレーラーを運転し、リサイクル用の古紙を運搬するドライバーとして働いています。現在46歳です。
 この度、運送業界と運送業界で働く人たちの深刻な状況を何とかしたいという思いで同僚とともに提訴しました。

2 私は、被告に入社する以前の平成3年から、ドライバーとして働いており、物流の中心を担うこの仕事に責任を感じ誇りを持っています。
 大きな車を動かしているので、万が一事故になれば、道を歩く人や他の車にも大きな影響を与え、命に関わることになる、そんな緊張と隣り合わせで、時間に間に合うように大事な荷物を運んでいます。
 私が運送業界に入った25年前と比べて給料は下がり、労働時間は倍になりました。車の運転が好きで、仕事はきつくても、仕事に見合う給料を受け取ることができる、家族を養い、子どもを育てていけると思い、大型免許とけん引免許を取りました。

3 被告の明成物流株式会社は、時間外労働の賃金を支払わないようにするため、距離や出発時間とは関係のない行先手当が残業代であるかのように主張して、残業代の支払いを拒んでいます。
 時間通りに荷物を届けるため、天候や道路状況によって、出発時刻や運転時間が変わります。会社は、どれだけ労働時間が長くなっても、行先手当として残業代を支払っていると言いますが、これはごまかしです。

4 労働時間に対応して、正しく残業代が支払われないために、同僚ドライバーや私は、長時間労働を強いられてきました。残業代が払われないからこそ、同僚のなかには、月400時間労働をさせられてきた者もいます。私も長いときで月350時間以上の労働をしてきました。
 労働条件を改善しようと労働組合を作り、残業代を正しく払うように請求を始めたら、残業時間は3割ほど減りました。会社は、固定残業代制度を悪用し、ただ働きをさせていると思っているからこそ、平気で長時間労働をさせていたのです。
5 長時間労働なのに残業代が払われないために、焦って運転をするドライバーもいます。しかし、我々プロドライバーは、一般のドライバーに運転の見本を見せるべき存在だと自負しています。道路上の安全を守るためにも、業界に広がってしまった固定残業代の悪用をやめさせなければなりません。
 裁判での請求自体は、過去の残業代ですが、私たちは、できるだけ速やかに、被告が、適正な時間管理と計算に基づいて、適正な残業代を支払うシステムに変えることを強く求めています。

6 運送業界は人手不足だと言われますが、労働条件は改善されていません。トラックのドライバーは、割に合わない仕事になり、輸送の職場から若者が減っています。明成物流株式会社にも20代のドライバーはいません。多くは30代後半から40代後半です。
免許の規定が変わり、以前は、普通免許を取得すると同時に取得できていた中型免許も、今では新たに取らなければならなくなりました。
 大型免許はなおのことで、トラックドライバーは、わざわざこれらの免許を取得してまでして、就きたい仕事ではなくなりました。
 このままでは、日本で物を運ぶ人がいなくなってしまうのではないか、そんな心配をしています。

7 今回、私と同僚は残業代を請求して提訴をしましたが、決して私たちだけの問題ではありません。同じ業界で働く運転手の多くが長時間労働と残業代の不払い問題に直面しています。このままでは、日本で物を運ぶ輸送の現場が破綻してしまいます。この裁判で、運送業界の再建に貢献出来ることを願っています。

以上