プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

セクシュアルマイノリティ・LGBTと労働

 皆さんは「LGBT」または「セクシュアルマイノリティ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。同性愛・両性愛トランスジェンダー(性同一性障害など、生まれた時に判定された性別に収まらない人)など、性別や性のことで「多数派」でない人の呼び名です。どの国・地域でもだいたい人口の数%が該当すると言われています。
 「就職・転職の時に、自分の性別やパートナーについて困ったことがある」という人は、調査を見ると、同性愛者・両性愛者では43%、トランスジェンダーでは69%、つまり3人中2人以上います。
 それだけ多くのセクシュアルマイノリティが困る仕事の問題ですが、カムアウト(自分がセクシュアルマイノリティであると誰かに伝えること)をした相手として一番多いのは友人、次に家族、その後に職場の仲間、という順番になります(もちろん、誰にもカムアウトしていない人もいます)。

 起きている時間の大半を過ごす職場で、カムアウトできるかどうかは本人の暮らしやすさに大きな影響を与えます。しかし「職場で個人的な話をする必要はない」と思う方もいることでしょう。当事者でもそういう理由でカムアウトしないことにしている人もいます。確かにカムアウトのしかたによっては、仕事に関係のない個人的な話だと受け止められる可能性があります。けれども性別やパートナーといった事柄が全く話題に上がらない職場、個人的な人間関係が全くない職場というのも珍しいのではないでしょうか。

 職場内の日常的な「彼氏(彼女)いるの?」「やっぱり男手(女手)があるといいね」「好きな芸能人は?」といった会話で、嘘をつき続けたり、悪意なくサラリと自分を否定されることが少しずつ積もっていって、「仕事を頑張ろう」という気持ちが奪われます。
 秘密を抱えることで、のびのびと仕事ができなくなり、気持ちが萎縮し、職場でのコミュニケーションを控えてしまうようになります。困りごとがあっても、隠し事をしながら相談するのは難しいことです。
 きちんとしたカムアウトができれば、よりストレスが少なく、のびのびとした気持ちで働けるようになり、職場での人間関係も楽になり、信頼感も生まれやすくなります。

 実際、LGBTについての施策(例えば差別の禁止を明文化したり、専門の相談窓口を設けたり、など)がある職場の方がそこで働く人の勤続意欲が高くなる、LGBTについての理解者がいる職場の方が人間関係は良くなる、などの効果があることがわかっています。興味深いことにこれは当事者だけの話ではなく、LGBTが過ごしやすい職場は非当事者にとっても過ごしやすい職場だという結果が出ています。
 人は誰でも様々な理由でマイノリティになる可能性があります。マイノリティにとって過ごしやすい場所はみんなにとって過ごしやすい場所です。そういうところを目指して活動してゆきたいと思います。

引用した調査結果は(c) Nijiiro Diversity, Center for Gender Studies at ICU 2015「LGBTと職場環境に関するアンケート調査 2015」からのものです。