プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

あいりん地区の今 貧困を「なかったこと」にはさせない

あいりん地区の今 貧困を「なかったこと」にはさせない

 大阪西成地区、通称「あいりん地区」の名前を皆さんは聞いたことがありますか。日本有数の「ドヤ街」「スラム」として広く知られており、日雇い労働者が多く生活し、1泊1000円前後で宿泊することのできる簡易宿泊施設が軒を連ねます。道端には職にあぶれた労働者が座り込み酒を飲み、多くのホームレスも暮らしています。今、ここ西成が大きく変わろうとしています。いえ、変えられようとしています。一体何が起こっているのでしょうか。実際に現地に足を運び、あいりん地区の今を取材してきました。

1年ぶりのあいりん地区来訪
 御堂筋線「動物園前」駅を下車すると、梅田や難波とは違ったある種独特の空気が漂います。実はあいりん地区を訪れるのはおよそ1年ぶり。少し歩いてみると当時と比べ、町並みがこころなしかキレイになったのを感じました。独特の鼻をつく匂いも随分とマシになった気がします。

センターは労働者たちの憩いの場
 あいりん地区の中心は「あいりん労働福祉センター」です。センターと呼ばれるこの施設は日雇い労働者にとって求職の場であるに留まらず、廉価な食堂やコインシャワーもあり、仲間と団らんし、職にあぶれて行き場がないときもそこで雨風を凌ぐことのできる居場所でした。病院や市営住宅も含めた複合施設でしたが、今年の3月31日に耐震性に問題があるとして、労働者の強い抵抗も虚しく閉鎖されました。建物は病院の閉鎖を待って取り壊し、2025年に同じ場所に立て直しを計画しており、現在は南海電鉄の線路の下に機能を仮移転しています。

貧困は「みっともない」?
 仮移転先の建物ですが、「仮」というにはあまりにしっかりとした建物です。見栄えも立派で、相当な額の予算が使われているそうです。まず来年のオリンピックまでに新しくキレイな建物に機能を移転させ、来る大阪万博の際には立派なセンターを立て直し、日雇い労働者など困窮した人々の暮らしがあったことを「なかったこと」にしようとする意図が透けてみえます。結婚式場などで有名な星野リゾートも進出を予定しており、エリア全体に渡る大改革が行われようとしています。

どれだけ労働者の生活の場を確保できるか
 あいりん地区に根差し、夜回りなどを通じて様々な地域支援を行っているゲストハウス「ココルーム」を訪れ、お話を伺ってきました。「その日暮らしで税金も納めず道端で飲んだくれる、そういったある種自堕落な生活から抜け出すいい機会を与えられる者もいるだろう。しかし、多くの労働者の生活の場所がなくなってしまうのは大いに問題だ。大型リゾートが進出し地価が上がればドヤ(簡易宿泊施設)は今の価格で営業することが難しくなってしまう。結果、労働者達は行く場所を失ってしまう。」行政にどれだけ生活の場を確保させるかが今後の争点だと語られました。

貧困をなかったことにしようとする姿勢は許せない
 今回の浄化作戦は所謂「貧困ビジネス」や「反社会勢力」を排除する目的があるとも聞きます。しかし、そこに暮らす労働者の生活を破壊し、貧困問題を「なかったこと」にする姿勢には大いに疑問を感じます。みなさんも大阪の街を訪れた際、ぜひこの地区に足を伸ばしこの街の今を知ってください。

稲葉一良(書記次長)

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