プレカリアートユニオンブログ

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映画『アリ地獄天国』(土屋トカチ監督)遂に完成。ブラック企業との赤裸々な闘いの記録を通じ、理不尽な社会や職場と闘う「武器」を与える作品

アリ地獄天国、遂に完成

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 土屋トカチ監督によるアリ地獄天国が遂に完成しました。映画は2019年の貧困ジャーナリズム賞を受賞し、10月11日、山形国際ドキュメンタリー映画祭日本プログラムでも上映され非常に高い評価を得ています。この作品はアリさんマークの「引越社」と、私たちプレカリアートユニオンが、そして、当該組合員がどのように闘ったかに密着したドキュメンタリー作品です。

緊迫のドキュメンタリー
 西村さん(仮名)に密着する形で映画は進みます。会社から受けたあまりにひどい組合活動への報復行為や嫌がらせ、そして、脱退工作など本当にドキュメンタリーなのだろうかと疑ってしまうような、嘘のような本当の話の連続です。団体交渉の様子や数え切れないほど行った街頭宣伝の様子、都労委に中労委、裁判所、私たちの闘いの記録を生々しく描写しています。とくに街頭宣伝のシーンは、本当にその場に居合わせたかのような、臨場感、緊迫感をもって鮮烈に切り抜かれています。

「見るだけで強くなる」映画
 具体的な物語の流れは、実際に劇場で見ていただくとして、この作品はドキュメンタリーであると同時に、ブラック企業とのたたかい方のマニュアルの役割も果たしているということに注目したいです。よく、任侠映画を見終わった人は気が大きくなって肩で風を切るように映画館を後にするといいますが、この映画は本当に「見るだけで強くなる」映画なのです。現代の労働環境に対し強烈な問題提起をする本作の終わり方は、必ずしも単純なハッピーエンドではありません。私たちにできなかったこと、残ってしまった問題等も赤裸々に描写しています。しかし、映画を見たひとりひとりに、私たちの闘いの記録を通じて理不尽な社会や職場と闘う「武器」を与えることができる作品となっていることは確かです。

勝ち取った「強さ」
 序盤、西村さんの来ていたシュレッダー係の制服は鮮やかなオレンジでしたが、物語も終盤に差し掛かるころには、すっかり淡い橙に色落ちしています。それに反し、まるで別人のように日に日に強くなる眼差し、決意に満ちた毅然とした表情、闘いの中で人は強くなれるのです。和解や判決によってもたらされる、復職や経済的な損害の補填はもちろん大切なものです。しかし、闘いを通じて自らが勝ち取った「強さ」もまた同等に、もしくはそれ以上に大切なものなのではないでしょうか。物語の終盤「野村です」と本名を報道陣に伝えるその姿はまさしくそのことを全身で語っているようでした。

これからの闘いへつなぐ記念碑的作品
 争議の記憶もまだ新しい最中ですが、私たちは現在も多くのブラック企業を相手に日々闘いを続けています。過去の闘いを振り返り、これからの闘いにつなげていく、私たちにとっても記念碑的な映画が完成したのです。

 

※名古屋シネマスコーレで、2020年お正月映画としての公開が決定。
http://www.cinemaskhole.co.jp/cinema/html/

※2019年10月28日(月)16:30〜19:00、関西学院大学西宮上ヶ原キャンパス図書館ホールにて上映会とトークセッション。

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