プレカリアートユニオンブログ

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見て見ぬふりも、分かったふりもしない。『学校では教えてくれない差別と排除の話』(安田浩一著/皓星社)レビュー

 人種や出自、学歴に職業……わたし達の生活の中には、様々な差別が織り込まれています。ですが、不思議なことに、学校等の教育現場では「みんな平等」と教えられます。「学校では教えてくれない差別と排除の歴史」は、著者の原体験である幼い頃の学校でのイジメの記憶を綴るところから始まります。本書は、わたし達のまわりに潜む様々な差別の問題に光を当てています。

現代の奴隷制度「外国人労働者
 現在、特に深刻なのが外国人労働者の問題です。最低賃金どころか、場合によってはその半分ほどの賃金で彼らが働かされている人もいます。「実習生」として日本にやってくる外国人労働者に転職の自由はありません。しかも、そのほとんどが出国時に多額の借金をして日本に来ているため、帰るに帰れないのです。まるで現代に蘇った奴隷制度です。

沖縄に基地があるのは「仕方ない」?
 沖縄に対する差別の問題もまた深刻です。日本の国土の約6%の沖縄に、およそ70%以上もの米軍基地が集中しているのは異常としかいえません。「アメリカに占領されていたのだから」と基地の多さについて語る人が多いですが、本州にあった米軍基地の多くが本土復帰後に沖縄に移転した事実を知っているでしょうか。「基地で経済が回っている」というのも数的根拠のない思い込みです。「沖縄だから基地があるのは仕方ない」と考えてしまうことが、意図せずとも差別につながっているのです。

身近な差別としっかりと向き合おう
 所謂ネトウヨの一人ひとりを見ると、意外にも普通のおとなしい人が多いのだそうです。彼ら差別する側の人たちは、たいていひとりでは活動せず、誰かと一緒に活動します。これは、著者の原体験でもある、学校でのイジメとの大きな共通点だと思います。知らず識らずのうちに大人になってまで、差別という「イジメ」に加担してしまっているのです。イジメは良くないと学校では教えますが、「なぜいけないのか」「何がいけないのか」をしっかりと考えさせ「自分がされたらどんな気持ちになるか」をしっかりと考えさせる教育が行われなければ、根本的な解決にはつながらないと感じました。

稲葉一良(書記次長)

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『学校では教えてくれない差別と排除の話』(安田浩一著/皓星社

http://www.libro-koseisha.co.jp/society_education/chugaku-sabetsutohaijo/