プレカリアートユニオンブログ

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差別とヘイトスピーチ、デマに踊らされ、虐殺の陰で労働組合弾圧も。『九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』(加藤直樹著/ころから)レビュー

 所謂「嫌韓デモ」が大久保の町を埋め尽くし、メディアを賑わわせたことは記憶に新しいと思います。彼らの大きな特徴として韓国の方々を、その出自や国籍のみをして差別しているという点が挙げられます。2000年代の新しい問題として報じられた「嫌韓」ですが、実は、およそ100年前の関東大震災の直後の混乱のなか、韓国人であるという理由だけで、数千ともいわれる命が奪われてしまったという事実はそこまで知られていません。今回は、日本で実際に起きたジェノサイドについて記した「九月東京の路上で」をレビューしたいと思います。

朝鮮人が反乱を起こした」震災直後のデマ
 関東大震災の被害は甚大でした。その直後、焼け出された人々、難を逃れた人々に飛び込んできたのは「朝鮮人が反乱を起こした」「井戸に毒を入れている」「武器を持って攻めてくる」という、根も葉もないデマでした。震災の混乱の中、警察や軍、行政までもがそんなデマに踊らされてしまいます。恐慌と震災の衝撃から、人々は次々と韓国人と見るや、武器を取り競い合い、問答無用で虐殺していったのです。

凄惨な虐殺の影で組合弾圧も発生
 東京だけでなく、噂は震災被災者の避難とともに地方にも広がります。軍や警察、そして一般市民で組織する自警団によって、各地で数百人とも数千人ともいわれる程多くの韓国人の命が奪われました。その混乱に乗じるような形で、当時はまだ違法とされていた労働組合の幹部も警察や軍に捕らえられ、弾圧の末に処刑されていたことも明らかになってきています。パニックやデモを利用して、他にも政治犯など様々な「邪魔者」が国家によって殺されたといえます。

差別の構造は同じ
 根も葉もないデマにヘイトスピーチ、そして、組合活動への権力による弾圧……このように言葉だけ並べてみると、問題の本質に関わる部分は、当時も今も大きく変わっていないことが分かると思います。多くの人々が、自身の暴力を正当化し暴徒へと化していく過程を読むにつれ、とても他人事とは思えない恐ろしさを覚えました。少しショッキングな内容も含まれていますが、ぜひご一読ください。

稲葉一良(書記次長)

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『九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』(加藤直樹著/ころから)
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