プレカリアートユニオンOYO Japan支部支部長 今井浩之
皆さま、初めまして、2019年の10月にOYO Hotels Japan合同会社にプレカリアートユニオンの支部を創りました今井と申します。
今回のご報告では、まず当支部ができた経緯に触れ、当支部のこれまでの戦果を報告させていただき、今後の当支部の展望をお伝えし、最後にユニオン活動を通じた私個人の考えを共有させていただきたいと思います。
【OYO Japan支部が創立されるまで】
OYO Hotels Japan合同会社は2019年2月から活動を開始したと思われます。この会社にはたくさんの問題がありますが、多くの社員が入社してすぐに驚かされたのは、正社員として雇用契約書を取り交わしたにも関わらず、「スタートアップ企業のため従業員を直接雇用するスキームが整っていない」という理由から、先ずはRGFという人材紹介エージェントと紹介予定派遣契約を結ばされたところだろうと思われます。さらに、「採用面接の3日後が入社日」というような社員もかなりの数がおり、新入社員の受け入れ関係者も全く連絡を受けていない新入社員が、ある朝いきなり現れる。というようなことが約半年間続いておりました。一方で内定の連絡を得たにも関わらず、その後入社に向けての連絡が全くなく、途方にくれていたという入社者も少なくない人数おりました。ちなみに、このような状況に対して採用を担当しているインド人達は「そんなことはよくあることで、大した問題ではない。」と言い放っておりました。
そもそもこの会社が上記のような雇用環境になった背景には、インド人マネジメント層が、マーケットシェアを確保すること(フランチャイズ契約ホテルの部屋数を伸ばすこと)を至上命題としており、「営業の人数を増やせば契約してくれるホテルオーナーの数が増える。」と信じて疑っていないことがあります。さらに、インド人マネジメント層は「結果を出し続けられない営業は解雇すれば良い。」と考えていることが、OYOの雇用に関する問題の全ての元凶となっております。しかし非常に残念なことに、この会社がそんな無法地帯だと気付けるのはほとんどの場合、入社後なのです。
社会保険労務士の試験にも合格しており、複数社で人事の業務に従事してきた私は、シニアHRマネージャーとしてこの会社に入社しましたが、入社して直ぐにこの会社の人事は修復不可能なレベルで崩壊の道をたどるであろうと見抜けたため、入社後かなり早い段階から「私はこの会社では総務業務に専念する」ことを明言し続けてきました。そして、やはり、この会社の人事に関する問題は、全く改善されないばかりか、どんどん膨れ上がる方向に突き進んでいき、とうとうその時は来ました。会社が一気にリストラに舵を切ったのです。インド人マネジメント層はリストラのプロを雇い、様々な形でリストラを進めようとしてきました。(ちなみに、この動きに対して、元々もうサラリーマンを辞めようと思っていた私個人としては、正直「良い頃合いかな」と思っていました。が、これらの所業を見過ごすべきではない旨をある人に諭され、立ち上がることを決め、今に至っております。)
私は、直接会社側に意見を言っても全く聞く耳を持たれないことは既にわかっていたため、外部のチカラを借りることを最優先に考えました。弁護士かユニオンが選択肢でしたが、私は自分が会社側の立場であった時にはユニオンの方が嫌な存在だったため、実質的にはほぼユニオンの一択でした。そして複数ある外部ユニオンの中で一番行動力のありそうなユニオンに協力を求めようと思い、プレカリアートユニオンにたどり着いたのです。
【OYO支部の戦果】
以下に戦果を列記いたしますが、私の選択は正しかったように思われます。
・紹介予定派遣から直接雇用に切り替わるタイミングで、説明なく給料の減額(30%以上下がった者が複数名いた)や有期雇用の契約を突き付けられた者達の雇用条件を、入社時に取り交わした雇用契約書の条件に戻させ、それ以降に直接雇用に切り替わる者達の直接雇用に切り替わるタイミングでの雇用条件の改悪も未然に阻止しました。
・OYOのTECHレベルが低過ぎるせいでトラブルが多発し、それらに対応するために長時間労働や常に業務チャットをチェックし続けなければならないような労働環境に置かれ、結果、休業に追い込まれた社員達に関する件について、納得できる水準で和解させました。
・インド人マネジメント層のやり方に異議を唱え続けたことが原因で不当解雇された者に関する件について、納得できる水準で和解させました。
・入社後半年間の内に結果が出せていなかった(そもそもOYOの提供するサービスは同業他社さんのサービスに比べてレベルが低過ぎる)営業職の者達に対して一度通告された退職勧奨プランを実質的に白紙に戻させました。
・営業専門の者でも売れないサービスを、バックオフィス部門の社員まで強制的に営業に回して売ろうとしたプロジェクト(案の定、営業の人数を約2倍にしたにも関わらず、新たに増えた契約部屋数は過去最悪の水準だった)を、最短で止めさせました。
・インド人のトップの者から、「今後この会社は日本の法律・規律を順守し、日本での模範的企業になることを目指していく。」という主旨の文章を全社に対して配信させました。
・就業規則を改善(傷病休暇やフレックスタイム制の導入等)させました。
・トラブルや工数の急激な増加の主原因となっていた非常に無理のあったある業務のスケジュール感をまともなものに変更させました。
・ホテルオペレーションサポート職の業務負荷を軽減させるため、コールセンターを導入させました。
【今後のOYO Japan支部の活動】
今後、私は当ユニオンを通して、OYOが従業員に対して問題を起こさないよう監視を続けるとともに、OYOがホテルオーナー様に対して行った負の所業に対する償いをサポートしていこうと考えております。OYO側は過去のことと言い切っておりますが、OYOによって甚大な被害を被ったホテルオーナー様達が存在していることは紛れもない事実です。通常であればユニオンでサポートする範囲ではなかったとしても、(少なくとも私個人としては)会社がご迷惑をおかけしたホテルオーナー様達に対してできる限りのサポートをすることで、せめてもの罪滅ぼしをしたいと思っております。また、そういった動きによって、会社が失った信用をユニオンが回復していくという図式を創り上げたいと思っております。
【ユニオンに関する活動を行ってみて】
私はOYOに関わったことで非常に多くのことを学ぶことができました。その中のユニオンに関することといたしましては、「全く同じことを言ったとしても、個人で訴えるのか集団で訴えるのかによって成果が明らかに違ってくる」こと、「ユニオンという組織が労働者の雇用問題に対してだけではなく、会社の様々な面の改善に対しても非常に有意義な機関になり得る」ということを、身をもって実感することができました。
現場で仕事をしている社員の声をビジネスの改善に活用しようとしている会社は意外に多くないのが現実だと思われますが、現場を改善することは会社のビジネスを改善させる最も有効な手段の一つです。そんなビジネス改善の宝庫である現場からの提案を会社側に真剣に検討してもらうためにユニオンという組織を活用したり、(形骸化した内部監査室等による業務監査ではなく)現場の現実を加味したより意味のある業務監査の機能をユニオンが受け持つことは、かなりストレートに会社のためにもなります。そういった機能を担っていけるようなユニオンを創っていくことの社会的な意義も見出すことができました。
また、外部のユニオンに出入りをし始め、世の中にはOYO以外にも許容しがたい様々な雇用上の問題を起こしている会社があることがよくわかりました。私は、社会保険労務士の資格を持っており、地方を代表する老舗企業やベンチャー企業や世界中に展開している外資系企業など、様々な会社で人事の実務やマネジメントに携わり、会社側の立場で外部ユニオンとの交渉に臨んだ経験もあるため、私独特の視点からみなさんのチカラになれることが何かしらはあるのではないかと思っておりますので、(現時点ではOYOに関することで手一杯ではありますが)委員長の清水さんや書記次長の稲葉さんを通じてお声かけいただければ幸いです。
多様性のある集団は強いものです。ユニオンに加入している者同士、お互いがお互いの強みを活かし協力し合えたら、その集団はより強くなります。そして強い集団は周囲を動かすエネルギーになりえます。そういった動きによって自分が生きているこの社会が少しでも良くなることに貢献できたら素敵なことだなと思っております。
【労働相談は】
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