プレカリアートユニオンブログ

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長時間・低賃金労働。仕事に殺される国で労働者の命を守るための本。『人間使い捨て国家』(明石順平著/角川新書)レビュー

『人間使い捨て国家』(明石順平著/角川新書)

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 最近密かに話題になっている、音楽に合わせ「記録しろ!」と連呼する動画。ウサギの耳にサングラスの「バニ男」を演じるのはなんと現役の弁護士です。本書は、そんなYouTube動画「KIROKUSHIRO」でも有名な明石順平弁護士による書き下ろしです。人が企業に潰され使い捨てられてしまう時代に警鐘を鳴らし、現代社会の様々な労働問題を、デーや統計、法律解釈をもとに詳細に解説しています。


 仕事に殺される社会
 はじめに、本書では日本の労働時間の異常な長さについて触れています。これまでも労働時間の長さについては問題視され、法律による規制は都度強化されてきました。しかし、依然として世界の中で日本は圧倒的に働いている国です。それも、圧倒的に時間外労働が多いのだそうです。そして、連日のように報じられる過労死や仕事が原因と思われる自殺に労災、日本は「仕事に殺される」国なのです。

 「タダ働き」だから減らない残業
 なぜ過労死や労災が後を絶たないにも関わらず、日本の労働時間はなかなか減っていかないのでしょうか。その理由は、「タダで無制限に働かせる」様々な脱法の仕組みがあるからです。これらの脱法手段の代表選手は「固定残業代」制度です。固定残業代自体は特段違法ではありません。残業代の煩雑な計算を簡素化するためにとても有益な仕組みです。しかし、労働者の無知に付け込み、これを残業代の上限額であるかのように誤認させ、また、実際にそのように扱っている企業がほとんどなのです。タダで働いてくれるのだからと、際限なく労働時間は増えていくのです。

 「記録しろ」で検索!
 上記の固定残業代以外にも、政治や法律等々、日本の労働時間を長くする様々な要因について本書では詳細に解説されています。著者はそれらの現状に対し、大胆な解決策を提起しています。残業代の割増率を倍にする、過労致死傷罪の創設など、思い切った提案が次々と挙げられますが、冒頭で述べた「記録しろ!」もその1つなのです。労働者自身が労働実態を記録し、積極的に労働組合を利用し身を守ることは極めて強力な自衛手段です。本書と併せてネットで「記録しろ」と検索してみてください。

 稲葉一良(書記次長)

https://youtu.be/kkQaVQR8NJ0

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