プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

コロナ後、ますますあらわになった日本の末路。『令和日本の敗戦 虚構の経済と蹂躙の政治を暴く』(田崎基著/ちくま新書)

 

『令和日本の敗戦 虚構の経済と蹂躙の政治を暴く』(田崎基著/ちくま新書

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 アベノミクスインパール作戦に例え、このままでは日本は再び戦後の焼け野原に戻ってしまうと強く読者に訴える『令和日本の敗戦』(田崎基著/ちくま新書)は、そんな危機感を持たざるを得ないような、社会の凄惨な現状を克明に記しています。労働問題から憲法改正の問題まで、「戦なき敗戦」に向かいつつある日本の現状の発信と問題提起を広範に行っています。なお、危機的な労働問題に立ち向かう、プレカリアートユニオンの活動も「駆け込み寺から砦へ」という組合の合い言葉とともに紹介されています。

トラックドライバー、月500時間の残業
 労働問題とは切っても切り離せないのが、超長時間労働とそれに伴う残業代の未払いです。本書では、あるトラックドライバーの過酷な労働環境にスポットを当て、職場における人間性の崩壊を記しています。1ヶ月500時間にも及ぶ残業、繁忙期は家に帰ることは疎か、トラックから降りられる時間さえ限られます。何故こんな非常識な長時間労働が起こってしまうのかというと、会社が残業代の支払いを違法に逃れているのです。

70歳のトリプルワーク
 古希を迎えながら、生活を支えるため3つのアルバイトを掛け持ちしている女性の生活もまた過酷を極めています。朝6時30分から働き、深夜に帰宅する毎日の中「みんな貧しいわよね。若い人も、私たちも」と話す彼女は1944年に生まれ、戦後の復興と高度経済成長を生きてきました。

アベノミクスで生活は豊かになったか
 一方、政府はひたすらにアベノミクスの成功を喧伝し続けます。その姿はまるで戦時中の大本営発表のようだと言います。「全滅」を「玉砕」、「撤退」を「転進」と呼び代える空虚な言葉遊びの中で、私たちに残された僅かな豊かさは、この数年間で急速に奪われていってしまいました。中間層が大きく削られ、格差は拡大の一途を辿っています。

 読後、強く感じたのは正義の不在です。虚構と欺瞞により奪われた豊かさを取り戻すために、今こそ私たち一人一人が社会正義の実現に向けて力を尽くすべきなのではないでしょうか。

稲葉一良(書記次長)