「地下アイドル×法律」一見すると「???」となってしまいそうですが、インディーズアイドル界では、当事者の無知につけ込んだ様々な搾取の構造が存在しています。「地下アイドルの法律相談」は旬報法律事務所の深井剛志弁護士、ライターで元地下アイドルの姫乃たま、漫画家の西島大介による著書です。普通に生活をしているとなかなか見えてこない「地下アイドル」の世界を、法律という切り口で紹介していきます。
アイドルは事務所と「契約」している
労働者が使用者と「労働契約」を結ぶように、アイドルも事務所と契約をしています。「専属マネジメント契約」、「専属芸術家契約」と、その名称は実に様々ですが、法的には「業務委託」に分類されています。契約は、本来双方の合意により対等に結ばれるべきものですが、実態としては事務所とアイドルの力関係などから、極めてアイドルにとって不利な契約になっています。
アイドルは恋愛禁止?
また、アイドルは「恋愛禁止」等という話は、聞いたことがある方も多いと思います。もし、これが契約書に定められていた場合、幸福を追求する為に重要な権利を制限する内容なので、無効になることもあり得るのだといいます。また、恋愛をしたことにより契約を解除するという条項も、無効になる可能性が高いと著者は記しています。「恋愛を禁止するかはアイドル本人が決めるべし」と、自身も地下アイドルとして活動していた著者のひとりである、姫乃たま氏もアイドルと恋愛についてのコラムを本書に寄せています。
一見して、労働運動とは縁遠そうにも見える地下アイドルの世界。しかし、非雇用で働く労働者の仲間とも考えられます。本書ではアイドルを巡る契約上の様々な不平等やハラスメントなどについて紹介していますが、「辞める際に損害賠償を請求された」、「力関係によりハラスメントを受けた」、「辞めたくても辞められない」などの問題は、そのまま非雇用全体の問題としても考えることが出来る内容です。先入観を捨て、新しい労働問題の本として一読してみることをお勧めします。
稲葉一良(書記次長)