プレカリアートユニオンブログ

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社会や地域と連帯して共感を集めるストを。『ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』(今野晴貴著/集英社新書)

社会や地域と連帯して共感を集めるストを

ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』(今野晴貴著/集英社新書

 労働組合の争議行為の中で、最も代表的なストライキですが、最近日本ではほとんど見られなくなってしまいました。『ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』は、NPO法人POSSE代表理事などを務める今野晴貴氏による1冊です。「ブラック企業がなくならないのはストをしないからだ!」という帯のフレーズは、とてもインパクト大です。
■労働者の唯一にして最大の交渉資源「ストライキ
 ストライキは「集団で働かない」という、とても単純な抗議手段です。それにもかかわらず、今日まで強い影響力を持ち続けています。古くは、ピラミッド建設の労働者たちも、ストライキを駆使して労働条件の交渉を行ったのだといいます。労働力をコントロールすることで使用者に対し損害を与えるというこの手段は、連帯によって実効力が担保されるものです。特に近年日本では、労働組合の組織率低下は、そのままストライキの激減へと繋がっています。
■日本ではストライキは受け入れられにくい
 日本でストライキが一気に衰退してしまった理由は、他にもあります。欧米での盛んな産業別労働運動と違い、日本の組合は企業別組合がほとんどのため、そもそも欧米以上にストが理解されにくいのです。企業内の組合は、会社とその運命を共にしなければならず、例えばストライキによって会社がダメージを受けてしまうと、それにより会社が他の競合との競争に敗れ、自分たちの仕事が不安定になってしまうようなリスクを負うことに繋がるからです。
■新しいストライキの形
 では、この先、ストライキはなくなっしまうのでしょうか。そんなことはありません。実は、現在日本でも形を変えて新しいストライキが行われています。例えば、残業をせず休憩をきっちり取るという「遵法闘争」等がその1例です。また、世界的にはストライキの目的も、労働条件の維持向上に限らず、社会正義のためのストライキ、環境問題に対するストライキと多様性を帯びてきているといいます。
 ストライキを始めとした争議行為はどれだけ社会の共感を得られるかが、成否の鍵を握っています。本書は様々な世界のストライキ事情を解説していますが、そのどれもが、社会問題と密接に関係しています。これからの労働組合は、社会や地域とより一層連帯し、共感を集め、積極的に「ストライキ」を行っていく必要があると考えます。

 稲葉一良(書記長)

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