プレカリアートユニオンブログ

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子育て論だが、大人自身が顧みたい。『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(太田啓子著/大月書店)

子育て論だが、大人自身が顧みたい

『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(太田啓子著/大月書店)

 みなさんは、ジェンダーバイアスという言葉を聞いたことがありますか。男女の役割に関する固定的な観念や、それに基づく差別・偏見・行動などを指す言葉なのですが、この言葉自体に聞き馴染みはなくても、例えば「女らしく」とか「男らしく」のような言い方は日常的によく耳にするのではないでしょうか。
『これからの男の子たちへ』は、自身もシングルマザーとして子育てを行いながら、離婚・相続などの家事事件セクシュアルハラスメント・性被害、各種損害賠償請求などの民事事件を手がける、弁護士の太田啓子氏による、男の子の子育てから見えてくる、ジェンダーバイアスの問題に踏み込んだ1冊です。
■子育て時から根深く存在するジェンダーバイアス
 著者は子育ての中、日々ジェンダーバイアスを感じているといいます。世の子育ては、男の子を褒めるにしても叱るにしても「さすが男の子だね」「男らしいね」とか「男の子なのにそんなの恥ずかしいでしょ」などと、とかく男の子に「男らしさ」、そして逆に女の子には「女らしさ」を押しつけがちです。
 著者はフランスの作家シモーヌ・ド・ボーヴォワールの「人は女に生まれのではない、女になるのだ」という名言になぞらえ「男に生まれたというよりも、”男になる”のだな」と感じているといいます。子育て時から社会にジェンダーバイアスを掛けられた子どもたちは、やがて、無意識のまま性差別や、最悪の場合、性的虐待を行うようになる大人になってしまう可能性があるのです。
■有害な「男らしさ」
 1980年代にアメリカの心理学者が提唱した言葉に「有害な男らしさ」というものがあります。「男性性の4要素」として①意気地無しはダメ、②大物感、③動じない強さ、④ぶちのめせ、が挙げられます。この男らしさを良しとする価値観をインストールされた結果として、暴力や性差別的な言動に繋がり、自分自身を大切にできない等に繋がると考えられています。
 本書は、子どものうちから無意識に埋め込まれてしまうジェンダーバイアスが差別的感情や、性暴力、さらには自らを追い詰めてしまう源になってしまう危険性を解説し、どのように男の子の子育てと向き合っていくべきなのかを対談なども交えつつ、広範に考察しています。日本でも「男は黙って働く」の下、長時間労働が蔓延してはいないでしょうか。
 稲葉一良(書記長)

www.otsukishoten.co.jp

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