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トランスジェンダーの著者が今いる場所と社会を変えた奮戦記。『元女子高生、パパになる』(杉山文野著/文藝春秋)

トランスジェンダーの著者が今いる場所と社会を変えた奮戦記。『元女子高生、パパになる』(杉山文野著/文藝春秋

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 著者は、トランスジェンダーで元フェンシング日本代表の杉山文野さん。私の地元でもある川越で行われたLGBT成人式で、初めて講演を聞きました。とても明るくて、エネルギーに満ち溢れた人というのが初見での印象。
 そんな杉山さんが書いたのが「元女子高生、パパになる」というタイトルの本著です。初めての時の印象が強かったからか「セーラー服を着ていた。30歳で死のうと思っていた」という帯の言葉には衝撃を受けました。
■今いる場所を生きやすく
 杉山文野さんは、学生時代に乙武洋匡氏に勧められ「ダブルハッピネス」という本を出版し、自身のことを公にカミングアウトします。その結果、「副作用」として常にセクシャリティの話がついて回るようになります。
 そんな状況から逃れるように世界一周の旅に出ましたが、旅先でも常に「男なのか女なのか」の問いは離れません。そんな体験を通して、一番向き合わないといけないのは、社会ではなく自分自身だと考えるようになり、「移動をして場所を変えるのではなく、今いる場所を生きやすく変えていこう」と決心した杉山さんは日本に戻ります。
■偏見に悪戦苦悩しながらも道を切り開く
 初めての就活もなかなか思うようにいかず、悪戦苦闘しながら懸命に生き方を探す文野さん。LGBTQへの偏見がまだまだ強かった15年ほど前、ゴミ拾いをしても、「性同一性障害を乗り越えてゴミ拾いをしている杉山さん」という偏見に満ちた見方をされてしまう社会は、文野さんをして「30歳で死のう」と思わせるのに十分に過酷なものだったことが分かりました。そんななか、杉山さんは生き方を見出し、社会を動かし、やがて素敵なパートナーと苦難を乗り越え結ばれ、パパになります。
 今やLGBTQムーブメントのリーダーとして活躍する著者が、仕事に悩み、恋に悩み、そして生き方に悩みながら道を切り開いていく、あらゆる読み手に勇気を与える本です。生きやすい世の中のために、社会をどう動かすかは私たち共通の課題です。
 稲葉一良(書記長)

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