プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

「くらしのマーケット」アカウント停止をきっかけに協働リサイクルショップを開業、知恵と力を結集して仕事を作ろう!

協働リサイクルショップを開業、知恵と力を結集して仕事を作ろう!
「自分たちの仕事を自分たちで作る」

  東京都北区に便利屋さん・リサイクル屋さん計5名共同でリサイクルショップ「よろず屋いちばん」(以下、よろいち)を開業しました。

 よろいちを開業することになった理由のひとつに「自分たちの仕事を自分たちで作っていく」という共通の目的があります。今後、私たちのような小さな自営業者が団結して仕事を作っていくことの重要性はより増していくのではないかと考えています。

 多くの方がご存知のように各種インターネットサービスは成熟し、良くも悪くも私たちの生活に不可欠なものとなっています。それは「働く」という面でも同様です。配送業であればウーバーイーツ、クリエイティブな仕事であればランサーズなど、様々な業界においてインターネットサービスを仲介して仕事を受注する流れが定着しています。

 便利屋業・リサイクル業においても、他の業種同様にインターネット仲介サービスといった「黒船」が来襲しています。その代表的なサービスのひとつがテレビでCMを流したりなどもしている「くらしのマーケット」です。

 昨年春頃、私たちの仲間の内2名がこの「くらしのマーケット」のアカウントを運営本部の判断によって凍結されてしまいました。きっかけはSNS上で「くらしのマーケット」を批判したことです。

 もちろん「くらしのマーケット」のサービスにも良い面があります。しかし、そこに体重を預け過ぎてしまうと、アカウントを停止されたり、報酬の比率が変わったり、もしくはサービス自体が終了したりなどの、自分では対応のしようがない突然の逆風で事業に大きなダメージを被ってしまうことになります。そして、このような状態に陥ってしまう仲間は少なくありません。

 インターネット仲介サービスは私たちでは太刀打ちできないレベルの宣伝力を持っているため、仕事が一挙に集中します。ついつい、仲介サービスの「専従」のような状態になってしまいます。しかし、私たちはこのような仲介業の進出に迎合するだけでなく、また打ち負かされるだけでもなく、新しい団結によって立ち向かっていかなければならないと考えています。

■団結すれば「よろず」の事ができる
 では、どのように立ち向かっていくのか。

 その答えは「地域の中で信頼される仕事をちゃんとやっていく、やり続けていく」ことです。一撃必殺の回答とはいきませんが、これしかないでしょう。

 インターネットは地域を問いません。そのため、仲介サービスを通した場合に私たちは東京、神奈川、千葉、埼玉と関東中を走りまわることになります。私たちはここに真っ向勝負を挑むのではなく、特定の場所・特定の地域で「信頼できる集団がいるぞ」と街から愛され、頼りにされるような「顔の見える」仕事を作っていくことを目指します。当然、こういったことはインターネット仲介サービスではできません。

 そして、このために信頼できる同業者との団結が不可欠です。私たちは一人では出来ることは限られています。しかし、仲間と仕事を作っていくことによって、遺品整理の資格を持っている人がいる、エアコンの取り付けをできる人がいる、配送の許可を持っている人がいると、よろずのことに対応ができます。

 これは理想論かもしれませんが、日本中の多くの場所でこういった集団ができて協力しあうことができたら仲介サービスに太刀打ちでき、より良いサービスをお客さんにも提供できるのではないかと、そのように考えています。

■雇用ではない関係性
 現在、私たちは便利屋・リサイクル屋以外の仲間も加わり約10名でリサイクルショップを経営しています。ここでは、全員が出資をし、平等な関係性での経営を出来るようにと努力を続けています。

 一般的に想起される働き方は、株主や社長がいて労働者がいるという、「経営する人」と「働く人」は別という状態です。私たちが現在目指しているのは「ひとりひとりが経営者であり、労働者である」という関係性です。

 もちろん、これは一般的な企業と比べた際に難しい面もあります。私たちが直面した具体例をひとつあげます。

 現在、私たちは板橋駅の近くの物件を貸して頂いていますが、実は別の場所でリサイクルショップを開業する予定でした。しかし、候補としていた物件は他の人が先に借りてしまって流れてしまいました。

 しかも物件が流れたのは一度だけではありません。実は3回も契約の前に他の方に物件を借りられてしまうという事が続きました。

 このようになった理由として、「ひとりひとりが経営者であり、労働者である」ということがあります。私たちは全員で内見をして(そのため日程の調整に時間を要します)、全員が納得してからでないと物件を借りないと考えていました。当然、一般的な企業よりも多くの時間がかかってしまいます。

 結果的に板橋の物件を見つけて全員が大満足しており、結果オーライです。しかし、結果オーライというだけでなく、時間がかかってしまうけれどもこういった関係性の方がより良い仕事を作っていけると確信しています。商品のレイアウト、料金、チラシ作り等々、全てのことに時間がかかってしまいますが、それでもいいのです。

 私たちの方法では、全国に支店を作って雇用して収益を拡大するというような飲食チェーンやコンビニ、もしくは各種大企業のような「スピードを前提とした」成功を作ることはできないでしょう。それはできませんが、私たちのような働き方をする集団を全国にどんどん増えていくことは可能だと思っています。

 もちろんそうなったとしても、直接的には私たちの収入を増やすことにはなりません。しかし、そういった働き方や関係性の中にこそ、社会を個々の人生を、より良いものにしていく可能性があるのではないかと考えています。

■未来の展望
 2020年末、労働者協同組合法が可決されました。この法律は、組合員の出資等の原則で運営される組織を官庁の認可を必要とせずに3名以上の発起人で届け出のみで設立ができるというものです。

 労働者協同組合法の可決までに尽力してきた先輩方に改めて敬意を示すと共に、この法律が私たちの働き方を後押ししてくれる可能性もあるのではないかと期待しています。施行は2年以内ということなので、今後の動向に注視したいです。

 そもそも現状の日本国内において「仲間と協力しあって働く」ことへのバックアップは非常に希薄です。私たちも当初は事業協同組合をつくろうとしていましたが、私たちのような零細自営業者では認可をもらうことは難しいとのことであえなくお払い箱となりました。

 労働者協同組合法を契機として、「仲間と協力しあって働く」ことが今後より定着していく社会になることを願ってやみません。そして、当然ながら私たちもそういった社会を作っていく一員として尽力していきます。

 最後になりましたが、「くらしのマーケット」でアカウント停止された仲間2名がプレカリアートユニオンとして裁判闘争を展開する予定です。仲間の内1名は「くらしのマーケット」での収益が拡大していたこともあり、新車のトラックを買った矢先でのアカウント停止で事業に大きなダメージを負いました。

 リサイクル業・便利屋業の仲間はもちろんのこと、インターネット仲介サービスに関連するフリーランス・自営業者など多くの方に裁判闘争にご支援・ご注目頂きたいです。仲介サービスの肥大化と暴走に歯止めをかけ、仕事と生活のための闘いを共に展開していきましょう!
※お店にもぜひ遊びに来てください。空き家片付け、エアコン取り付け、家具組み立て等々、その他生活の困りごともご相談ください。知恵と体力を結集してあなたのお悩み解決します。

菅谷圭祐(生活者生活事業労働者協同組合

リサイクルショップ よろず屋いちばん
住所 東京都北区滝野川6-63-6
ツイッターアカウント @yorozuya1ban

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