プレカリアートユニオンブログ

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男性性を分析し、自分そのものへ向かう考察。『さよなら、男社会』(尹雄大著/亜紀書房)

 世の中は、様々なジェンダーバイアスや「有害な男らしさ」で満ちあふれています。『さよなら、男社会』は、インタビュアー&ライターの伊雄大氏による1冊です。本書は生活の中に溢れる様々な「男社会」の問題等を、筆者自身の経験と観測に基づき精細に描き出しています。
■「男に生まれる」のではなく「男になる」
 まず、はじめに本書では、筆者自身がどのように「男」になっていったのかということが考察されています。筆者は、「小学校2年生頃まで女の子っぽい服を着させられていた」と振り返ります。タイ付きのシャツやキュロットなどの中性的な格好をさせられていた理由として、母は女の子がほしかったのだろうと推測する一方で、「自分が男だ」と自覚したのがいつのことなのか思いを巡らせます。言葉遣いや過度なスキンシップへの違和感、周囲からの「男の子らしく」、「男なんだから」という圧力、これらによっていつの間にか筆者は男になっていたのです。
■歪んだ「男らしさ」とその弊害
 しかし、これらの「男」であることを理由として求められる行動規範や、価値基準には必然性がありません。それどころか、そのほとんど全てが大きく歪んでいます。男はマジョリティであり、評価する側、ジャッジする側であるという刷り込みから来る無意識の女性蔑視、男らしさの衣を被った暴力性、これらは時としてDVやセクハラ・性犯罪などの加害にも繋がります。
■誰しもが持つ「男性性」と「女性性」
 「男らしさ」のもたらす様々な問題について述べた後、最終章では誰しもが持つ男性性、女性性にも触れられます。「当然これは、社会が用意したステレオタイプである必要はもう本当にない」と筆者は記しています。様々なアスリートやアーティストに取材をした経験や、自身の様々な武術の稽古の体験を元にして記される身体論的な視点と相まって、段々と「自分そのもの」へと向かっていく考察は、なんとも不思議な読後感を覚えました。ジェンダーに基づく自分からの解放というのでしょうか。みなさんにも一読をおすすめします。
 稲葉一良(書記長)

www.akishobo.com

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