プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

開かれた対話の持つ可能性。『感じるオープンダイアローグ』(森川すいめい著/講談社現代新書)

 仕事や人間関係により精神を病んでしまう人が、年々増え続けています。『感じるオープンダイアローグ』の著者は、精神科医鍼灸師の森川すいめい氏。本書は、精神疾患を開かれた対話によって治癒する、「オープンダイアローグ」について、医学的な技術論でなく、それを行うことで何が起こるのか、ということにフォーカスして書かれた1冊です。

■開かれた対話が心を癒す
 フィンランドのある病院では、精神を病む人たちの8割が回復しているといわれています。その秘密は「オープンダイアローグ」にあります。「オープンダイアローグ」では、患者や家族とともに医師、看護師などが対等に、開かれた対話を繰り返すことで疾患やそれに関連した諸問題の解決を目指します。現在の日本の精神医療が、医師が上から、ともすると一方的に治療方針を決定し、家族や時に本人にまでクローズであるのと対照的な心理的に安全で、開かれた治療法です。はじめは、著者もただ対話をするだけで心が癒やされるということをにわかには信じられませんでしたが、発祥の地であるケロプダス病院での研修や、実践を通してオープンダイアローグの力を確信していきます。

■本人も支える人も癒す対話■
 本書を読んで痛感したのは、対話による治癒の対象は患者だけではないということです。例えば、高齢で認知症の患者の場合、家族との関係や家族の感じている負担が家庭環境を悪化させ、そのことが病状の悪化に繋がっていることも多くあります。開かれた対話によって、治療に寄り添う家族の悩みを解決し、コミュニケーションのギャップが埋まっていくことで、本人の症状がよくなっていくということは、読んでいてスッと腹落ちしました。
 日本の精神医療は、とにかく投薬と拘束によって治療を行うことが常態化しており、これによる人権上の問題についても本書は問題を提示します。対等な開かれた対話による、癒しの「オープンダイアローグ」の持つ可能性に触れることのできた1冊でした。

稲葉一良(書記長)

 

bookclub.kodansha.co.jp

労働相談は 誰でも1人から加入できる労働組合
プレカリアートユニオン
〒160-0004東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
TEL03-6273-0699 FAX03-4335-0971
ウェブサイト https://www.precariat-union.or.jp/
ブログ https://precariatunion.hateblo.jp/
メール info@precariat-union.or.jp

 

f:id:kumonoami:20210706233737j:plain