プレカリアートユニオンブログ

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新“自由”主義の蔓延する世界で「搾取する側」に回ったシングルマザーの物語。映画『この自由な世界で』(ケン・ローチ監督/2007年/イギリス、イタリア、ドイツ、スペイン)

新“自由”主義の蔓延する世界で「搾取する側」に回ったシングルマザーの物語

映画『この自由な世界で』(ケン・ローチ監督/2007年/イギリス、イタリア、ドイツ、スペイン)

 映画「この自由な世界で」は2007年イギリスで製作された映画です。監督はケン・ローチ。これまでも同監督の作品をいくつも取り上げてきましたが、今回の作品は主人公が搾取する側に回るという点で異質な作品となっています。
■理不尽に解雇され、労働者から搾取する道選ぶ
 主人公はシングルマザーで派遣会社勤めのアンジー。息子の面倒はアンジーの父母が見ていました。彼女は、派遣会社の社員としてとても優秀で、様々な顧客の開拓などの実績を上げていましたが、同僚からセクハラを受けた挙げ句に解雇されてしまいます。派遣会社を理不尽にも一方的に解雇されてしまったアンジーが選んだのは、自らで人材紹介の会社を立ち上げるという方法でした。派遣会社で身につけた「ピンハネ」のノウハウを用いて、自らの生活を守り仕事を成功させて息子と一緒に暮らすために彼女は、移民からの搾取を繰り返しついには超えてはならない一線を越えてしまいます。
■セクシズムによる生きづらさに満ちた世界
 この物語では、随所にセクシズムが織り込まれており、女性の生きにくさが背景として描かれます。アンジーが受けた解雇は、尻をなでる等の露骨なセクハラに対して怒りをあらわにした結果として行われており、彼女が女性である故の差別的な解雇であるとも考えられます。また、作中で男性が「そのうち、女の時代になる。“おっぱい”が世界を支配するんだ」等と、茶化すように女性を対象化した発言を行います。アンジーが、酔っ払って従業員の男性移民労働者を呼び出し誘惑するなどこれらに全力で抗うかのような行動を繰り返すのもとても印象的に映ります。
 本作は、移民問題を含む様々な労働者が抱える問題、シングルマザーの置かれた状況など様々な社会問題をテーマに含んでいます。女性として社会から搾取され続け、追い詰められたアンジーの行動を果たして非難するだけでいいのでしょうか。

 稲葉一良(書記長)

 

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