プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

世界中の労働運動の変遷を 網羅的に学ぶことができる1冊。『団結と参加―労使関係法政策の近現代史』(濱口桂一郎著/労働政策研究・研修機構)

『団結と参加―労使関係法政策の近現代史』(濱口桂一郎著/労働政策研究・研修機構

https://www.jil.go.jp/publication/ippan/danketsusanka.html

 当たり前のことですが、労働組合があるのは日本だけではありません。労働運動は世界中様々な国で、その国毎の発展を遂げ今日に至ります。『団結と参加 労使関係法政策の近現代史』は、労働政策研究・研修機構 研究所長である濱口桂一郎氏による1冊です。世界の様々な国の労働組合の成り立ちや変遷、そして現在に至るまでを網羅的に紹介しています。300頁強の本書ですが、内容は極めて濃密です。読み込むことで、世界の国々の労働運動の歴史と今について広く見識を得ることができる良書です。
■やはり特殊な日本の労働組合
 本書を読み終え一番はじめに感じたのは、世界的に見て日本の労働組合法は極めて特殊であり、画期的な一面を持つということでした。明示された民事・刑事免責、1人でも組合員がいれば生じる団交応諾義務……日本の労働組合の組織率が20%を割り込んでいることや、企業内労組の御用組合化によりこれらの画期的な労組法が十分に機能しきれていないことが本当に悔しくなります。私たち闘う労働組合は組織化を進め、もっとこの労組法の持つ力を社会全体に浸透させていかなければなりません。
ストライキへの弾圧は民主主義への弾圧
 また、労働者のストライキは昔から様々な国で弾圧され、違法とされてきた時期がありますが、これらの弾圧が行われる際は、戦時下など決まって民主主義が弾圧され、国民全体の権利が国家によって制限されるものであるということが本書を通して分かりました。現在、日本でも関西生コン支部ストライキを違法行為として弾圧する動きが顕著ですが、労働運動以外を見ても、日本では様々なマイノリティの権利が認められない、政府に忖度した歪な判決が相次ぎ司法の独立が強く疑われる、政府が憲法改正を強行しようとするなど、民主主義の根幹を揺るがしかねない事態が頻発しています。日本がストライキを弾圧する国であるということは、民主主義を弾圧する国だということです。改めて、民主主義を守るため弾圧に毅然と立ち向かうことの大切さを感じました。

 稲葉一良(書記長)

f:id:kumonoami:20211219003044j:plain