プレカリアートユニオンブログ

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構造的な外国人差別の実態に迫る。『外国人差別の現場』(安田浩一・安田菜津紀著/朝日新聞出版)

構造的な外国人差別の実態に迫る

外国人差別の現場』(安田浩一安田菜津紀著/朝日新聞出版)

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 日本は豊かで平和、誰も命や自由を奪われる心配も無い平等な国、私は幼い頃このように教えられて育ちました。しかし、残念ながら日本には様々な差別があり、その差別はしばしば暴力という形で被差別者に牙を剥きます。昨年、入管施設内でのウィシュマさんの死やそれに至る経緯、その後の国や入管の差別のある現状を開き直る態度には多くの人々が強い衝撃を受けました。また、連日のように技能実習生の悲惨な労働の実態が報じられてもいます。『外国人差別の現場』は、ジャーナリストの安田浩一安田菜津紀両氏による1冊です。技能実習生や入管の問題を中心に、日本における構造的な差別の問題の実態に迫る1冊です。
■構造的な差別の一番の問題は悪意のなさ
 構造化された差別の一番の恐ろしさは、差別を行う側が「悪意なく」それを行うところにあると思います。以前このレビューでも、著者の1人である安田浩一氏が関東大震災時の朝鮮人虐殺事件について記した1冊を紹介しました。日常的に悪意無く抱いていた差別心が、災害時の混乱の中暴走し、やがて普通の人たちが暴力・殺害を行った背景には入管問題と共通の「常識」に落とし込まれた差別があるのではないでしょうか。本書においても、入管の職員が外国人をまるで人間として扱わず、信じられないほど残忍な行為・態度を取ることについて、外国人を酷い目に遭わせようと思って入管の職員になる人はおらず、組織の体質、国の姿勢などが彼らを自身でも信じられないほど残酷で差別的な職員に作り上げていく様が記されています。
■日本の貧しさのしわ寄せが技能実習生に
 技能実習生の過酷な労働環境、生活実態についても本書は触れています。技能実習生の問題は、しばしば弱い者が更に弱い者を虐げる様な構造になっており、まるで労働者を家畜のように扱う経営者もまた、そのようにしなければ経営が成り立たない背景事情があるケースが少なくありません。世の中全体が労働者に賃金を支払わなくなっていく社会構造の最下層に位置づけられ、特例的に人として扱わなくていいとでも言わんばかりの悲惨な環境の根底にもやはり、悪意ではなく「常識」による差別心は存在するのだと思います。
 差別は、人に暴力を振るい、また、人を殺します。それは悪意のない差別であっても何ら変わりはありません。本書に記されているのは入管と技能実習生の問題ですが、いかに日常的に私たちの社会に外国人差別が蔓延しているのかがよく分かる1冊です。差別のほとんどは悪意のない人が行います。差別をなくしていくために私たちがすべきことは、今実際に行われている差別とその構造について、関心を持ち学ぶことです。

稲葉一良(書記長)

 

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