テイケイによるスラップ訴訟と組合による反訴、判決記者会見　4月20日

テイケイによるスラップ訴訟と組合による反訴、判決記者会見

　４月１９日（水）東京地方裁判所で大手警備会社テイケイ株式会社によるプレカリアートユニオンへのスラップ訴訟に対し、組合側から組合や組合員などへの大量の文書送付並びに街頭宣伝時に誹謗中傷文書掲示が違法であるとし反訴した裁判の判決が下された。それを受けて翌４月２０日１３時３０分から厚生労働省記者クラブにて記者会見を行った。出席者は代理人の佐々木亮弁護士、鈴木悠太弁護士、高橋寛弁護士（いずれも旬報法律事務所）、組合より執行委員長清水直子、書記長稲葉一良。
■問題のきっかけは未払い賃金と退職強要
　この問題のきっかけとなったのは、組合員の未払い賃金問題。テイケイは、警備員に対し勤務実績報告書の持参を義務付けており、その場で装備品の点検を受けさせるなどの業務を行わせていたが、これについて賃金を支払っていなかった。団体交渉の申し入れから間もなく、組合員はテイケイから退職強要を受け退職に至っている（２０２２年地位確認訴訟で組合員に勝訴判決、現在高裁で審議が進んでいる）。これらの問題の解決を求め組合は積極的な情報宣伝を開始した。
■コロナ渦でもマスク禁止、団交拒否を続けるテイケイ
　その後、組合はコロナ渦に新たに入った組合員について未払い賃金を支払うよう求める団体交渉を申し入れた。当時は新型コロナウイルスが猛威を振るいはじめたばかり。テイケイはコロナ渦でも原則として従業員にマスクの着用を禁じているが、病院などの公共施設や公官庁の警備を行う会社がこのような対応を続けることは社会的にも問題のある行いである。団体交渉の中で組合はマスク着用問題についても触れ、認識を改めるように求めた。テイケイはマスク問題について「マスクは犯罪者が顔を隠すときに使うもの」などと開き直った。これを境にテイケイはプレカリアートユニオンとの団体交渉を拒否するようになり今日に至るまで未だ団体交渉は行われていない。
■正当な組合活動を「威力業務妨害」。行われたスラップ訴訟
　いうまでもなく、団体交渉拒否は労働組合法違反の不当労働行為である。今回の訴訟は、プレカリアートユニオンがテイケイに団体交渉に応じ問題を解決するよう求める街頭宣伝を行ったことが「威力業務妨害」などにあたるとして、テイケイはプレカリアートユニオンに損害賠償請求訴訟を提起した。労働組合の正当な活動は憲法及び労働組合法で保障された権利であるにも関わらず、その権利がまるでないかのような筋立てで行われたテイケイの本件訴訟提起は労働組合の活動を萎縮させようとする意思が感じとれる。
■テイケイの常軌を逸した不当労働行為の数々
　訴訟提起に先立ち、組合事務所や主に街頭宣伝に参加した組合員の自宅などに無断で撮影した写真やコラージュ、罵詈雑言、職業差別などが含まれた脅し、嫌がらせの文書が頻繁に送り付けられるようになった（文書は合計約１０００通近くに及んだ）。直接の雇用関係がなく住所を公開もしていない組合員の住所を何らかの形で調べ上げ執拗に送付を繰り返したテイケイだが、時に文書送付先は非公然の組合員の職場にも及び内容もその甲斐謝辞対に不当な圧力を加えるものであった。また、組合の宣伝の際は「反社にカンパ、ブラックユニオン」など嘘の情報で組合を陥れるような掲示、組合員個人を侮蔑する掲示を含む掲示により組合及び組合員への名誉毀損行為を繰り返した。
■テイケイの行為の違法性が認められた判決
　これらの問題については判決に先立って団体交渉拒否問題と共に東京都労働委員会でも不当労働行為であるとの判断が下っている。今回の判決では、組合が主張したテイケイ嫌がらせ行為ほぼ全てに対して違法性が認めら賠償命令が下った。一方で、テイケイが組合の街頭宣伝の音量などを「威力業務妨害」であるとして損害賠償を求めた点については組合の正当な活動が認められ、テイケイの訴えは退けられた。記者会見の様子は組合のyoutubeチャンネルで公開中。
　稲葉一良（書記長）