プレカリアートユニオンブログ

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安倍元総理を殺害した山上徹也容疑者のツイートを紐解き社会課題とつなげる1冊。『山上徹也と日本の「失われた30年」』(五野井郁夫・池田香代子著/集英社インターナショナル)

安倍元総理を殺害した山上徹也容疑者のツイートを紐解き社会課題とつなげる1冊

『山上徹也と日本の「失われた30年」』(五野井郁夫池田香代子著/集英社インターナショナル


 2022年7月8日、安倍元首相を銃撃し殺害した山上徹也被告は41歳だった。当時は選挙期間中だったため政治的な目的を持ち凶行に及んだのではという憶測が飛び交ったが、犯行動機は宗教二世による復讐と報じられるに至った。
 『山上徹也と日本の「失われた30年」』は政治学者・国際政治学者、高千穂大学経営学部教授である五野井郁夫、ドイツ語翻訳家、社会運動家である池田香代子による1冊。山上氏は所謂ロスジェネ世代である。2019年10月12日から「silent hill 333」のアカウント名(現在、同アカウントは凍結されている)を用いTwitter上で発信を行った内容1364件を精査し、報道に見られた宗教二世の犯行という一面だけでない、世代に共通する生きづらさや社会構造を背景とする、事件に対する別の角度からの見方を提示する。
■「自分が山上容疑者になっていたかも」五野井氏の実感
 著者の一人、五野井郁夫は同世代であり宗教的な環境を出自とする点において山上徹也との共通点を持つ。五野井氏は山上氏の感じた生きづらさと自身の経験を重ね、ひょっとしたら自分が山上容疑者になっていたかも知れないとの認識を表す。家庭を崩壊させた様々な悲劇については報道で知る人も多いが、山上氏はその状況にめげず相当な努力を重ねた。これは単なる上昇志向によるものではなく、社会により自己責任論を内在化させらたことによる影響も大きいと本書は分析している。
 自分が不安定なのは自分自身の努力が足りないから、この考え方で努力を重ねそれでも変わらない境遇から人生に絶望する。私たちの世代には決して珍しいことでない。その意味で言えば、私自身も五野井氏のように考える気持ちはあり、実際に山上氏の如く内在化された自己責任論に基づき相当な努力をしたという自覚もある。この事件を単なる怨恨によるものと片付けてはならない。
■「ネトウヨ」についての考察も
 本書では、山上氏がいわゆる「ネトウヨ」だったという点にも触れネトウヨについての考察も行っている。また、犯行の直後、事件の犯人の属性、国籍などを差別的に無根拠に推測・断定したヘイトデマが広がったことに対する警告も発している。現代社会の不寛容、拡大する格差。繰り返すが、この事件を個人による凶行とだけ捉えることはあまりに危険だ。

 稲葉一良(書記長)

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