職場の組織化で民主主義を再生させることこそが新自由主義への最も有効な対抗手段
『JR冥界ドキュメント』(村山良三著/梨の木舎)
今からおよそ40年前に行われた、国鉄分割民営化は国家による労働運動への大弾圧だ。 「総評を崩壊させようと思った。国労が解体すれば、総評も崩壊するということを明確に意識してやった」とは、1996年12月の『AERA』誌上での分割民営化を主導した首相である中曽根康弘の発言である。
『JR冥界ドキュメント 国鉄解体の現場・田町電車区運転士の一日』の著者は、村山良三氏。まるで人権と法律を無視した組合潰しの大弾圧が続くなか、国労のバッチを外さず勇敢に立ち向かった組合員自身の経験を元に当時を振り返り後世に伝える1冊だ。
■人間性を無視した虐めが横行、自殺者は累計150人を数えた国家による殺人
民営化に伴い、国労の組合員が脱退を強要され差別され虐めを受けたことは広く語られている。本書では実際に経験した著者がどのように苦しみ、闘ったかが克明に記されている。行われる虐めは極めて凄惨だ。運転士から仕事を取り上げ、仕事という仕事をさせない、必要性の判然としない無意味な重労働に従事させる、組合員である事を咎められ不当な指導・懲戒、・昇進差別を受けるなど精神的・肉体的に労務政策によって追い詰めるだけに留まらず、メディアまで駆使し組合員らへのネガティブキャンペーンを大々的に展開、攻撃は乗客らからも行われた。
さらに、社内では組合員への暴行も半ば公然と行われている。このような虐めに耐えきれず、組合を辞めるもの、会社を辞めるもの、そして、自ら命を絶つものが続出した。
この一連の流れが、今日の新自由主義社会を作り上げる大きな要因の1つとなったことは明らかだ。そして、新自由主義の行き着く先には戦争が待っている。
本書を読んで恐ろしく感じたのは国労潰しを主導したのが旧帝国軍人の生き残りたちであるということ。中曽根が旧帝国海軍出身の生粋の軍国主義者であることは今さら言うまでもないことかもしれないが、実行や計画はその中曽根の旧知の旧日本軍軍出身者らによって行われた。
軍国主義が戦後民主主義・労働運動を破壊し、労働者・市民から人権を奪い去ったともいえる。故に中曽根は『AERA』の誌上でも臆すことなく組合潰しを公言してはばからない。その後の30年、40年で労働組合の組織率は大幅に低下、職場では形を変えた「中曽根式」の虐めが蔓延し同時に刻一刻と戦争の足音が近づく。
職場の民主主義の崩壊が、戦争への道を作った。これに対する最も有効なカウンターは職場の民主化、即ち組織化といえる。国労組合員が失ったものは私たち全ての労働者が失ったものでもあると本書を読み改めて感じた。
稲葉一良(書記長)
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