生涯現役、最前線で闘った宮里弁護士の言葉を次世代の運動に繋いでいきたい
『宮里邦雄 かく語りき 労働運動・沖縄・平和』(宮里邦雄語録編集委員会編著/旬報社)
2023年2月5日、日本の労働運動を弁護士の立場で牽引した宮里邦雄弁護士が亡くなった。宮里弁護士は、2002年から2012年まで日本労働弁護団会長を務め、国鉄闘争をはじめとする様々な大争議の法廷・労働委員会で闘った。ウーバーやライドシェアの広がりにより拡大する「業務委託契約」で働く人々や楽団員など労働者性の問題にも精力的に取り組んだ。
また、働く労働者1人ひとりを対象に、労働組合の専従・役員などを対象に、同じ法律家を対象に様々な書籍を執筆している。『宮里邦雄かく語りき 労働運動・沖縄・平和』は60年代から現代に至る労働運動を一貫して労働者の立場で闘い抜き、更に出身地である沖縄を巡る法廷活動、平和運動にも尽力した故・宮里邦雄弁護士が生前に残した言葉からその活動の軌跡を辿り、次世代の活動家に繋ぐ1冊。編者は同氏が所属した東京共同法律事務所を中心とした労働弁護士有志によるもの。
■労働・平和運動の歴史とともに歩んだ宮里弁護士の人生
宮里弁護士は、大阪で生まれ沖縄宮古島で育った。1963年に東京大学法学部を卒業し、65年、弁護士登録。以降、労働者の側に立つ法律の専門家として様々な労働問題を闘った労働弁護士のレジェンドともいえる存在だ。晩年は、関西生コン支部の大弾圧に対し「戦後最大最悪の労働組合弾圧」であると「関西生コンを支援する会」を立ち上げ、共同代表としても様々な団体へ支援を呼びかけ奔走し、裁判や労働委員会を闘った宮里弁護士は常に労働運動の最前線にあった。
宮里弁護士の弁護士としての生涯を辿ることは戦後労働運動の現代に至る歩みを辿ることといっても過言ではないだろう。本書で紹介される宮里弁護士の言葉は、様々な闘いの中での発言、書面などからのものが中心だが、生活の様々なシーンからの言葉も紹介されている。駄洒落を愛し、クラシックをはじめとする音楽を愛し、そして、故郷沖縄の豚肉料理「ラフテー」を愛した宮里弁護士の人柄が本書から伝わってくる。
■組合の団結があれば、解雇された労働者も現職に復帰して定年まで働くことができる
本書で紹介されている宮里弁護士が残した言葉の中で、個人的に特に印象深いのが「組合の団結があれば、解雇された労働者も現職に復帰して定年まで働くことができるのだ」という岡本理研ゴム事件を振り返っての発言だ。解雇事件は今なお多く存在する。職場に戻れるケースはごく僅かだ。
個人加盟型の労働組合のオルガナイザーとして明確な不当解雇が行われ、それを闘い勝利してなお、本人の希望通り職場に戻って働くことが出来る割合の低さに忸怩たる想いでいる。私自身も解雇争議を闘った当事者でもある。本書では「労働者の権利は孤立したものではなく、仲間によって守る社会的権利。団結がなければ権利は守られない」と、職場復帰を勝ち取った当該がその後の虐めや不当労働行為により自死に追い込まれるという日本教育新聞社事件の苦い結末からつかみ取った教訓も収められている。
職場に労働組合の組織があり、皆が団結している状態がなければ使用者からの解雇攻撃を正面から跳ね返すことは難しいとあらためて確信した。労働組合が職場で力を失うことで解雇の金銭解決制度も持ち上がってきたということだろう。
本書は昨年取り行われた「宮里邦雄弁護士を偲ぶ会」に参加した際に頂いた1冊だ。私たち労働運動の活動化に向けて作られた1冊だと感じている。人によって、読むその時々によってどの言葉に強く心を動かされるかは違ってくるだろう。
宮里弁護士の残した言葉は普遍的な労働運動の原則原理について誰にでもわかりやすく語られている。その軌跡を辿り、言葉を噛みしめ日々の運動の糧としていきたい。
稲葉一良(書記長)
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