プレカリアートユニオンブログ

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再び悲劇を繰り返さないために過去の悲劇から目をそらさず、今この社会で起こっている差別としっかりと向き合おう。 『地震と虐殺 1923-2024』(安田浩一著/中央公論新社)

再び悲劇を繰り返さないために過去の悲劇から目をそらさず、今この社会で起こっている差別としっかりと向き合おう


地震と虐殺 1923-2024』(安田浩一著/中央公論新社

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 1923年9月1日に首都圏を襲った関東大震災は余に有名だが、それに比して、その直後から被災地を中心として各地で行われた凄惨な朝鮮人大虐殺についてはあまりに知られていない。『地震と虐殺 1923-2024」は安田浩一氏による1冊。どのような背景によりどのような人たちがどのような経緯で虐殺を行い、また、どのように被害者達は殺されていったか。様々な事件の現場に直接赴き丹念に取材を重ね、その実態を詳細に記した。
■差別と偏見が地震という出来事をきっかけに殺意に変わり虐殺は起こった
 虐殺の被害者は最大で1万人以上に及ぶともいわれる。関東大震災に端を発する朝鮮人大虐殺について語られるとき、多くは「地震の混乱の中で」などとその理由・背景を表現するがそれは大きな誤解を与えかねない。
 本書で記される、どのように殺害が行われたのかの経緯を読めば地震の混乱が主因でないことはとすることは容易に理解できるだろう。地震の混乱に乗じて暴力と殺害にお墨付きを与えてしまった政府・当局と連鎖的に鳴らされる犬笛がそれ以前から世の中に浸透していた朝鮮民族への根深い差別意識地震という非日常の中で殺意に変えたのである。
 本書で取り上げられた事例の中には関東大震災直前の虐殺事例も紹介されている。強制労働から逃げだそうとした朝鮮人労働者が使用者・職制者に何人も嬲り殺しにされた事件である。地震の混乱を虐殺の言い訳にしてはならない。虐殺は日常的に人々が抱いていた差別意識が形を変えたものだとしっかりと認識したい。
■虐殺は「過去の出来事」などではない。今の社会はヘイトクライムを防げるか
 関東大震災では朝鮮人以外にも中国人、地方出身者、障害者、そして労働運動家、実に様々な人々が犠牲になった。手を下した人のほとんどが「善良な」一市民である。差別者の大勢を占めるのはごくありふれた普通の市民であり特段の悪意ある人達ではないということは今日広く知られるが、虐殺もその行き着く先にある。
 普通の人々が「自警団」として「安全」を守るために何の罪もない人々を手にかけたのがこのときの虐殺の実態だ。差別を放置するとヘイトクライムが発生し、それがエスカレートするとジェノサイドに繋がるのである。
 今日本では、「安全」や「治安」を掲げ様々な排外主義的差別デモ、セクシャルマイノリティへの攻撃が繰り返されている。「自警団」を名乗り公然と暴力を厭わないことを表明する者達まで表れた。外国人を差別する言説がSNSにあふれ、迷惑系YouTuberのヘイトクライム動画はバスって多くのネトウヨから賞賛される。震災から100年、わたしたちの社会はまた同じ過ちを繰り返してしまいかねない状況に置かれている。
 本書で1番最後に収録されているエピソードは虐殺画を巡るものだ。虐殺の現場に居合わせた画家がその凄惨な光景を絵に残そうと精細な絵筆で書き留めた絵巻物。それに影響を受けた画家が描いたものが現在でも残っている。その生々しさに事件の被害者の心情を思うとなんともいえない気持ちになる。虐殺は確かに行われたものだ。「歴史家が紐解く」などといってその事実から目を背け続ければ悲劇を繰り返すことになりかねない。
 稲葉一良(書記長)

 

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