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性被害の当事者が研究者になるまでの半生から修復的司法の可能性を探る。『当事者は嘘をつく』(小松原織香著/筑摩書房)

性被害の当事者が研究者になるまでの半生から修復的司法の可能性を探る


当事者は嘘をつく』(小松原織香著/筑摩書房

www.chikumashobo.co.jp


 性暴力は被害者の心を深く傷つけ壊していく。『当事者は嘘をつく』は小松原織香氏による著作。著者は関西大学文学部学術振興会特別研究員(PD)であり、修復的司法を専門とする。タイトルを見て性被害を訴える当事者をよってたかって「嘘つき」呼ばわりする醜悪なネット世界でのやり取りを想起した。性暴力を訴えた被害者に対する二次加害は性加害そのものにも十分に匹敵しうる深刻な問題であるが、本書で語られるのはそのような被害者バッシングについてではない。自身が性暴力の被害者でありサバイバーである著者が幾度となく死の淵に立たされながら生き抜き、研究者になり自分の体験を語る言葉を獲得していく物語が記された1冊である。
■「私は嘘をついている」という立脚点
 著者は、被害を語るとき「私は嘘をついている」という思いから逃れられなかったという。事件から時間が経過することで都合のいい記憶の改編が起きている可能性や、何を語り何を語らないかを取捨選択することで過去そのものを提示することが難しいという想いが時に自分自身を責め苦しみを生む。このことが立脚点となり本書は記されているという。前半は自身が、心の傷と向き合いながら研究者を目指し研究者になっていく過程が記されている。
■「支援者」による加害性と当事者性
 本書では、支援者の善意の裏にある無意識の加害性についても触れられている。被害者同士の自助サークルに否定的な医療関係者をはじめとする支援者は多い。当事者研究を嫌う風潮についても語られる。被害者の語りは「嘘(完全に事実を再現したものではないもの)」なのだから、当然その被害の全てを支援者に伝えることは出来ない。そこで生じる「わかっていない」、「あなたにはわからない」という言葉や感情は、「わかってほしい」という気持ちを持つ故であるということに筆者自身も気がついていく。本書の後半では水俣病研究に取り組む著者の様子が語られる。前半で当事者として問題に取り組む自分、後半で当事者でないものとして問題に取り組む自分を描き研究者としてのあり方や当事者性について掘り下げられていく。
 著者が専門とする修復的司法とは「当該犯罪に関係する全ての当事者が一堂に会し、犯罪の影響とその将来へのかかわりをいかに取り扱うかを集団的に解決するプロセス、又は犯罪によって生じた害を修復することによって司法の実現を指向する一切の活動」(Wikipediaより引用)を指す。日本における性被害の法的救済は立ち後れているが、厳罰を求める一方でこの司法的修復の可能性についても広く議論されるべきだと本書を読んで感じた。
 稲葉一良(書記長)

 

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