現代美術家による労働組合「アーティスツ・ユニオン」(プレカリアートユニオンアーティスト支部)から、第27回参議院選挙に際して送付した公開質問状の各政党からの回答を公開しています。
http://artistsunion.jp/assets/auj_20250714.pdf
プレカリアートユニオンブログでも回答を公開します。
各政党の回答(回答到着順)
[質問1]
日本政府は、国連教育科学文化機関(UNESCO)の「芸術家の地位に関する勧告」を批准しているものの、社会での認知や法的な整備は未だ不十分です。その結果、文化芸術や芸能に従事する人々は、重層的な下請け構造の最下層に位置し、報酬や活動環境が劣悪であることが指摘されています。芸術家の権利向上や文化芸術分野に関して予定している取り組みついて、具体的にお聞かせください。
◆国民民主党
文化芸術活動は社会全体の健康や幸福を維持し、私たちが生きていく上で、必要不可欠なものであると確信しています。ユネスコ等の文化遺産・記憶遺産登録等への積極的な対応を図るとともに、文化芸術立国としての文化政策を強力に推進します。工芸・芸能・祭りなどの伝統文化の保護と後継者養成、映画や音楽、アニメ・漫画・ゲーム等の振興助成を推進し、国内外における発信を支援します。子どもたちが学校教育などを通じて文化芸術に触れる機会を増やし、文化財保護を強化する必要があります。
2024年に施行されたフリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)に基づき、フリーランスや個人事業主を含む取引全体の公正性を確保します。フリーランス新法の趣旨を踏まえ、発注側による報酬の遅延・不払い、契約内容の不明確化、ハラスメント等の不当な取引慣行の是正を徹底し、下請法と同様に公正取引委員会等による監視・指導体制を強化します。
◆れいわ新撰組
フリーランスの文化芸術のアーティスト(声優・漫画家も含むすべての表現者)の自由な表現活動に対する経済的な阻害要因になっている「消費税インボイス制度」の廃止を目指します。
同時に業界の低賃金とハラスメントの問題にも取り組みます。
国連が日本のアニメ業界について、労働搾取の問題があると指摘したように、これまでの日本のサブカル文化がクリエーターのやりがい搾取に陥ってきた問題(低賃金・ハラスメント)を改善する必要もあり、フリーランス保護法における契約の透明性(準契契約の普及や報酬基契の設定など)の向上による発注・受注の力関係において弱い立場の表現者を守っていく事も重要です。
これらの政策により、芸術家やアーティストの創造的エネルギーが金銭的にも報われる社会を目指します
◆日本共産党
ユネスコの「芸術家の地位に関する勧告」は「芸術家が、生活と社会の発展のために重要な役割を果たしている」「被雇用と自営にかかわらず、芸術家の社会保障、労働条件、課税条件を改善することが必要」と述べています。この指摘は意義あるものであり、当然、わが国においてもその内容の具体化が求められます。しかし、文化・芸術活動を生業にしている方々は、フリーランスも多く、一般の労働者に比べて低収入であり、収入増と社会保障の充実は待ったなしです。日本ではフリーランスを「個人事業主」として「労働者性」を認めていないため、労働法制の保護の対象になっていません。日本共産党は、「非正規ワーカー待遇改善法」を提案しています。その中で、労働者性の判断の見直し、労災補償の拡充など労働基準法の改正、個人加盟の組合結成や団体交渉権、ストライキ権の保障など労働組合法の改正を求めています。
文化・芸術分野は、長時間・過密労働が蔓延している現場でもあります。業界の努力もありますが、民間任せにせず、時間外労働規制、インターバル時間の確保など国が責任を持つべきです。日本共産党は、「自由時間拡大推進法」を提案しています。中小企業、個人事業主を直接支援(社会保険料負担の支援)し、全国一律時給1500円、早期に1700円に、労働時間は1日7時間、週35時間をめざします。
フリーランスを苦しめている消費税は廃止をめざし、今すぐ一律に5%への減税を求めます。フリーランスの芸術家、スタッフの生業を直撃しているインボイス制度の廃止を求めます。
◆立憲民主党
立憲民主党は、日本の伝統的な文化芸術を継承し発展させるとともに、新たな文化芸術の創造をさらに振興していきたいと考えています。そのため、文化芸術を担う芸術家の地位と権利を守り、生活基盤を支えるための法整備を進めていきます。具体的には、以下のような取り組みをしていきたいと考えています。
・芸術家の地位と権利を守り、生活基盤を支える「芸術家福祉法」を制定します。
・フリーランスや芸術家・芸能従事者のために、ハラスメントとメンタルの相談窓口や第三者調査機関をつくります。
◆日本維新の会
施設等の箱モノ整備や補助金支給にとどまりがちな文化芸術施策を見直し、文化施設のコンセッション方式やアーツカウンシルの導入を促進するとともに、各種法令の規制緩和を行うなど、芸術家等が自立して活動・発表できる機会を多面的に提供します。
若年層が文化芸術に触れる機会を増やすため、学生割引の対象から外れてしまう18歳から 25歳までの若者が、無料あるいは低額で文化芸術にアクセスできるような「カルチャーパス」クーポンの仕組みを検討します。
表現の自由を最大限尊重し、マンガ・アニメ・ゲームなどの内容に行政が過度に干渉しないコンテンツ産業支援を目指します。MANGAナショナルセンターの設置による作品アーカイブの促進、インバウンドを意識した文化発信やクリエイターの育成支援などを行います。
文化的コンテンツ等をデジタルデータとしてブロックチェーン上に記録したいわゆるNFT(非代替性トークン)について、イノベーションを阻害しないルール作りによる市場の拡大支援を行い、日本の強みであるマンガ・アニメ・ゲーム等のコンテンツ産業・アート市場のさらなる発展を後押しします。
WEB3(ブロックチェーン技術などを基盤とした非中央集権的なインターネット)事業、メタバース(インターネット上に作られた3次元の仮想空間)産業について、日本の成長戦略・文化産業振興施策として位置づけ支援拡充を図るとともに、国や地方公共団体など公的機関での導入・活用を推進します。
◆社会民主党
表現者としての芸術家が適切な社会保障を受けられる体制整備も重視されなければなりません。これは国際的な動向との整合性の中で、芸術家が労働者としての保護を受ける権利を含むもので、賃金の公正性や芸術家の地位向上と労災や社会保険制度の適用拡大、そして、公正な契約制度の整理と権利保護の制度化・強化を社民党は引き続き求めていきます。
[質問2]
2024年11月より施行されたフリーランス新法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)に関連し、文化芸術分野においても一定の報酬基準を明確化するべきであるという動きが、近年高まっています。芸術家の報酬ガイドラインは、イギリス、フランス、カナダを始めとする欧米各国で整備されているだけでなく、韓国においても導入への動きが加速しています。
日本における芸術家の報酬ガイドラインを整備することに賛成ですか? 下記より選択し、その理由をお聞かせください。「その他」の場合は、具体的にお書きください。
①はい
②いいえ
③わからない
④その他( )
◆国民民主党
①はい
フリーランス新法成立の際に付した附帯決議のとおり、フリーランス新法の実効性を確保するため、フリーランス新法に基づく省令・指針等を定めるに際しては、業界・業種によって契約内容が大きく異なるため、それぞれの業界及び当事者の意見を踏まえた省令・指針等を定めることが必要です。
◆れいわ新撰組
①はい
◆日本共産党
①はい
文化庁が策定した「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン」では、報酬の決定に当たっては、適正な金額となるよう、発注者と受注者が十分協議することになっています。協議すらなく一方的に報酬が決められる立場が弱い芸術家にとって、一定の報酬基準を明確にすることは意義のあることです。
しかし、実際には、芸術家、スタッフなどは、年収300万円以下が6割という調査もあり、本業の他にアルバイトなどをして生計を立てている方が少なくありません。しかも、コロナ禍で大打撃を受けた上に物価高騰、インボイス制度などで実収入が減り「廃業を考える」という声も寄せられています。また、仕事そのものが不定期であり、仕事がキャンセルになった時の保障もありません。国の文化政策は、短期的な経済価値を求めるもので、文化・芸術をつくりだす芸術家やスタッフの地位向上は二の次になっています。
昨年から「フリーランス新法」が施行されましたが、フリーランスが不当な扱いを受けたときに公正取引委員会などが指導するのみで、是正されないことも起きています。フリーランス新法は、公正な経済活動を確保する最低限の規定であり、労働法で保護を広げることが不可欠だと考えます。
◆立憲民主党
①はい
日本以外の先進国では、「芸術家は、文化国家の実現及び国民の生活の質の向上に重要な貢献を行う存在として正当に尊重されなければならない(韓国の芸術家福祉法)」といった考え方が主流となっています。政府が標準契約書を作り、それに従った対等な契約が行われていたり、文化芸術・芸能従事者の社会保障や労働環境が整えられたりしています。
フリーランス新法の適切な運用を推進することに加え、キャンセル料や経費、著作権などの面でフリーランスが損をしないように国の作った標準契約書による安全で対等な契約を推進するとともに、芸術家の地位と権利を守り、生活基盤を支えるため、報酬ガイドラインの整備について諸外国の事例を踏まえて検討すべきです。
◆日本維新の会
①はい
芸術家が安定した生活基盤の上で自由な表現活動を行える環境を整備することは重要であり、仕事の種類や内容、場所や期間等によって適切な報酬基準を定めることは、契約の透明性を高め、芸術家の自己実現を支援する意味でも、重要な施策だと考える。
◆社会民主党
①はい
[質問3]
令和 6 年度文化庁通常予算は、国の一般会計予算比で0.1%を割り込み、0.09%に減少してしまいました。これは、先進諸国の中では圧倒的に低い水準となっており、文化芸術に従事する人々の活動や生計を圧迫する遠因とも言われています。日本における国家予算における文化予算の割合はどのくらいが望ましいと考えられますか? その理由と、それを達成するための具体的な政策をお聞かせください。
目標値( %)
目標達成のための具体的な政策をお書きください。
◆国民民主党
目標値 未回答
日本の伝統的な文化芸術と独創性のある新たな文化芸術を振興するため、確実に予算を確保していくべきと考えます。
◆れいわ新撰組
目標値(1.2%)
・令和5年度(2023年度)の文化庁の当初予算は1098億円。
・文化庁の資料 (文化芸術関連・データ集 令和6年)では先進国トップクラスの韓国の国家予算に占める文化支出の比率は日本の10倍以上の1.2%程度 (約4351億円)であり、遅れを取っている日本が文化振興を図るには予算規模は、最低でも同レベル (1.3兆円)は必要と考えます。
具体的には文化政策としては以下のものを考えています。
・低賃金構造に陥りやすいクリエーターやアニメーターに対する公的補助
・文化の担い手育成のための予算、国立劇場など文化芸術インフラの維持
・若い世代の文化を享受する側へのカルチャーパスのような仕組み
・アナログ作品のアーカイブ保存支援
・障害者の表現活動・芸術活動を福祉予算だけでなく、文化・芸術予算で支援
◆日本共産党
望ましい割合:1%
達成のための具体的な政策:ご指摘の通り、文化庁予算は2024年度で国家予算の0.09%、2025年度も0.09%と0.1%を割り込んでいます。毎年1000億円程度では、現在の物価高騰による経費上昇に、芸術家も芸術団体も対応できません。国家予算に占める文化予算の割合は、フランスの8分の1、韓国の12分の1にすぎません。予算を抜本的に増額し、国民の文化を創造し、享受する権利を保障するべきです。日本の軍事費は5年間で43兆円、アメリカの言いなりでさらに大軍拡をすすめようとしています。国がその気になれば、そのごく一部を文化・芸術にまわすことはすぐにでもできます。
今後とも文化・芸術に携わる団体・個人ののみなさんと力を合わせ、文化予算を抜本的に増やす運動にご一緒にとりくむとともに、国会論戦に力を尽くします。
◆立憲民主党
目標値 未回答
文化芸術基本法の規定に基づく文化芸術推進基本計画を踏まえ、先進諸国と比べて予算に占める文化予算が極めて低い状況を改善するため、文化芸術を振興させていきます。学校教育などで実演芸術等をはじめとする多様な文化芸術の鑑賞・体験が享受できる機会を増やします。
文化芸術振興基本法の支援対象に「場」や「担い手」を加えることや、劇場法(劇場、音楽堂等の活性化に関する法律)の支援対象に映画館や小規模音楽会場等を加えることなどを含めた、さらなる文化芸術振興の在り方を検討します。
◆日本維新の会
※目標値は回答を控えさせていただきます。
日本維新の会は、地方政府に権限と財源を移譲することで、地方政府が主体的に住民意思を反映しながら住民に身近な行政を行っていく、地方分権型国家を目指しています。文化予算についても現状、国の事業として行われているものと、都道府県事業、市町村事業として行われているものが融合しており、国家予算の多寡だけで文化振興を評価することは難しいのが日本の行政の特徴です。
文化芸術振興に対する予算は、総論としては増額すべきと考えていますが、それぞれの地域でそれぞれの地域住民の意見を反映しつつ、地域の歴史や特性、文脈を踏まえて主体的な予算編成がなされるべきと考えております。
◆社会民主党
文化や芸術が「表現の自由」および「あらゆる価値観」を保障するものであり、その制作・体験・享受はすべての人に保証されるべきです。しかし、日本の文化芸術分野の国家予算は現状で、あまりにも非常に低く、韓国やドイツ・フランスと比べても著しく少額です。社民党は、これをドイツ並みの「0.4%以上」へ約4倍に増額する必要があると考えており、引き続きこれを求めていきます。
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