不合理な労働条件の引き下げを許さず、定年・再雇用の問題について学ぼう
『定年・再雇用の法律実務』(谷真介著/旬報社)
日本初の女性首相となった高市早苗氏は自民党総裁になった際の挨拶での「馬車馬」発言で物議を醸した。戦後すぐの時代から振り返ると定年年齢が55歳という時代が日本では相当長く続いた。それが平成の手前に60歳定年となり、今は死ぬまで働けと言わんばかりの現実である。もはや現代社会において「定年」という言葉は「隠居」、「引退」を意味する言葉ではなくなり、従前より低待遇での就労を余儀なくされる再雇用への入り口という色合いが強くなっている。
『最新テーマ別 実践労働法実務8 定年・再雇用の法律実務』はそんな定年・再雇用に係る法律実務について解説した1冊だ。著者は日本労働弁護団常任幹事などを務める弁護士の谷信介氏だ。
■有期雇用契約ならば当然に雇止めできるか、採用を拒めるか
定年後再雇用の労働者の労働契約は、多くの場合、1年単位などの有期雇用契約のかたちで締結される。有期雇用契約について、一般に契約更新と同時に雇用契約を更新せずに終了させる所謂「雇止め」に着いての裁量は使用者に相当程度認められる。しかし、定年後再雇用の労働者はこれまでの雇用関係のいわば延長として再雇用契約を結んでいるので、その契約についての考え方は必ずしも通常の有期雇用契約と全く同一視する必要はない。本書第5章前半では、その具体的な闘い方について詳しく解説している。
また、定年後再雇用は新たな労働契約を締結するか達を取ることになる場合、労働組合の活動家などを意図的に排除する目的で採用しないケースなどもあり得るが、本書4章の冒頭にはリーディングケースとなった津田電気計器事件の事案と判旨が解説されている。会社の恣意的な定年後再雇用で働く雇止めを否定し、更新期待権などに触れ労働者が勝利した判例に学ぶ点は多い。
なお、現在は定年再雇用制度について65歳までは希望者全員が働けるようにすることが義務付けられており、これを無視した再雇用拒否はそう簡単に認められない。
■労働条件は無条件に引き下げられるか
また、定年再雇用の労働者を巡る問題で忘れてはならないのが、労働条件の引き下げだ。本書では第5章の後半でこの問題について解説している。負担の軽減などにより労働条件が相当程度低下してしまうこと、また、職種を転換することで大幅な賃下げを法律や裁判所が許してしまっている点については大きな運動の課題だが、それでも全く無条件無制約に認められるわけではない。そもそも、定年後も働かなければならないのは社会情勢の問題でもある。この分野については、労働組合の交渉の持つ意味が特に重要になってくるということが本書からも読み解くことができる。
本書は弁護士向けの実務書になっているが、判例に則して具体的な判断のポイントなどもわかりやすく解説しているので、誰にでも読みやすい1冊として仕上がっている。「再雇用だから」と不合理な労働条件の改悪を許さず、また、再雇用拒否・雇止めを諦めず、しっかり学びみんなで安心して生活できる労働条件を守っていこう。
稲葉一良(書記長)
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