プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

山場を迎える、学校法人開智学園・未払残業代請求訴訟の意義――教員の長時間労働と賃金不払いの構造に切り込む裁判

 学校現場では長時間労働が常態化し、それにもかかわらず残業代が十分に支払われないという状況が、長年にわたり見過ごされてきました。2024年11月、プレカリアートユニオンの組合員である教務職員が、学校法人開智学園を相手に提起した未払賃金請求訴訟は、こうした教育現場の構造的問題に正面から切り込む重要な裁判です。本件は、個人の権利回復にとどまらず、教員の就労環境全体を問い直す社会的意義を持っています。

 原告は、開智学園が運営する中等教育学校において教務職員として勤務し、英語の授業、校務、部活動の顧問、さらにはクラス担任まで担っていました。昼休みは名ばかりで、生徒対応や業務に追われ、実質的な休憩を取ることは困難でした。部活動の顧問についても、専門外であるにもかかわらず担当を命じられ、放課後の指導が日常的に行われていました。その結果、帰宅が夜七時を過ぎることも珍しくありませんでした。これらは、決して特殊な例ではなく、多くの教員が直面している現実です。

 にもかかわらず、被告である学校法人は、残業を事前許可制とし、実際に働いた時間ではなく、管理職の判断によって「残業かどうか」を決めていました。授業準備は残業と認められない、試験問題作成は一部の時間までしか認めないなど、教育の質を支える不可欠な業務であっても、恣意的に切り捨てられていたのです。さらに、残業代は年に一度まとめて支払うという独自の運用がされ、月々の賃金には適切に反映されていませんでした。これは、労働基準法が定める労働時間管理や割増賃金支払いの原則から大きく逸脱するものです。

 訴状では、ICカードによる客観的な勤怠記録に基づき、原告が1日8時間、週40時間を超えて労働していた実態が具体的に示されています。それにもかかわらず、学校側は「職務手当」や「職務調整手当」が時間外労働の対価であるかのように主張しています。しかし、これらの手当は、算定根拠が不明確であり、実際の時間外労働時間数と対応していません。しかも、その支給趣旨からして、残業代の代替とみなすことはできないと考えています。

 本件訴訟の重要性は、違法な賃金不払いを是正する点にとどまりません。もし、学校側の主張が認められれば、使用者は「手当」を名目にすれば、どれほど長時間働かせても残業代を支払わなくてよい、という危険な前例を作ることになります。それは、労働基準法37条の割増賃金制度を空文化させ、教員の無限定な長時間労働を固定化させるものです。

 教育は、社会にとって極めて重要な営みです。しかし、その重要性を理由に、教員の権利が軽視されてよいはずはありません。「子どものため」「教育への情熱」といった言葉が、違法な働かせ方を正当化する免罪符として使われてきた現実があります。本件裁判は、教員もまた一人の労働者であり、法に基づく保護を受ける存在であることを、改めて社会に示すものです。

 プレカリアートユニオンは、声を上げることで不利益を被るのではないかと不安を抱える多くの教員に代わり、この裁判を支えています。違法な長時間労働と賃金不払いを是正し、安心して教育に専念できる環境を実現することは、教員自身のためだけでなく、教育を受ける子どもたち、そして社会全体の利益につながります。本件訴訟が、その第一歩となることを、私たちは強く願っています。

 

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