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失業保険完全マニュアル 25年4月雇用保険法改正失業給付の現在【いなばの生活力向上計画 第44回】

【いなばの生活力向上計画 第44回】
25年4月雇用保険法改正失業給付の現在
失業保険完全マニュアル


 例年、年末年始にかけて解雇・雇い止め・退職勧奨・強要による退職などの相談が急増します。今回は今年度初めに雇用保険法が改正されたこともあるので、仕事を辞めたときにもらえる失業保険について紹介します。

■求職時の生活を支える「失業等給付」
 いわゆる失業保険の正式名称は「失業等給付」。雇用保険の保険給付の1つです。自ら退職した場合、クビにされるなど会社により退職を余儀なくされた場合を問わず求職時の生活を支えるための給付を受けることができます。
 受給要件は離職日から1か月ごとに区切った期間に賃金が支払われた日数が11日以上ある月を1か月として、原則として、離職前2年間に被保険者期間が12か月以上(後述する特定受給資格者等は離職前1年間に6か月以上)あること。
 直前に病気、育児、介護などで一定期間以上休んだ後の離職の場合、それらの事情も加味された上で支給決定されます(具体的には、原則としてそれらの期間の日数を除き受給資格を決定)。前の職場を辞めたときに雇用保険を使わずすぐ働き始めている場合は期間が通算されます。
 なお、失業等給付は後述の「延長」をしない限り、離職の翌日から1年以内に受けなければならないこととなっています。

■会社都合?自己都合?
 よく、「自己都合で退職した」、「会社都合の退職にしてほしい」などと相談があります。実はこの自己都合、会社都合というのは雇用保険法上の取り扱いの種別を指します。
 一番の違いは、ざっくりと失業等給付を受けられるまでの受給制限期間の有無、受けられる日数に出てきます。会社都合の方が待たずに比較的長い期間給付を受けられるということは広く知られており、会社にやめさせられたのに自己都合退職になっているなどの相談につながるわけです。
 給付日額(1日あたりにもらえる額)にこの区分の違いによる差はありません。では具体的にどのような条件でどのような違いがあるのでしょうか。以下に見ていきましょう。

■【特定受給資格者】
 いわゆる会社都合などでやめた人を「特定受給資格者」といいます。具体的には解雇、賃金遅配、賃金減額、退職勧奨に応じたなどの場合に該当します。離職票が発行された後、ハローワークに出頭すると7日間の待機期間を経て支給が開始されます。受給日数は年齢と期間により異なりますが最長で330日程度となっています。また、特定受給資格者とされた場合(特定理由の場合も)自治体により、国民健康保険料の減免措置の対象となる場合もあります。

■【特定理由離職者(正当な理由による自己都合退職含む)】
 「特定理由離職者」という言葉はあまり聞いたことがないかもしれませんが、誤解を恐れず簡単に言うと自己都合と会社都合の間(3年未満での雇い止めなど特定受給資格者に含まれない会社都合の離職含む)を指します。離職票が発行された後、ハローワークに出頭すると7日間の待機期間を経て支給が開始されるという点は特定受給資格者と同じですが、失業給付を受けられる給付期間は後述する自己都合退職と同じで特定受給資格者と比して短めになります。また、「正当な理由による自己都合退職」といって、自己都合ではある者の病気や怪我、体力の低下などが原因の場合は特定理由離職者とほぼ同様に扱われる仕組みもあります。

■【自己都合退職】
 こちらは読んで字のごとく自己都合で退職した人のことです。特定受給資格者や特定理由離職者との違いは7日間の待機期間の後、受給制限期間が生じることです。少し前までこの制限期間は3ヶ月ととても長いもので、実質自己都合で失業給付を受けることのハードルを相当にあげていましたが、前回改正で2ヶ月、今回改正では1ヶ月と大幅に短縮されています。給付日数は20年以上雇用保険に加入していても150日と特定受給資格者に比して短く設定されています。

■会社はなぜか知らないがやたらと労働者を自己都合退職にしたがる
 ここまで読むと、自己都合退職より会社都合退職の方が労働者にとって有利だということがわかると思います。そして、実は特殊な助成金を受けているなどの例外ケースを除いて会社都合にしたところで会社には何の損もありません。それにもかかわらず会社はやたらめったら会社都合の退職にしたがるという謎の、しかし、労働者にとっては深刻な問題が生じています。
 例えば「退職勧奨による離職」 などは特定受給資格者の典型例であるにもかかわらず、ほとんどが自己都合とされています。離職理由の異議申立制度はあるのですが、確たる証拠をこちらが押さえていない限り会社が協力しないと理由が変わらないという「無理ゲー」状態になっています(離職理由が納得できない場合労働組合に相談してください)。

■素朴な疑問とテクニック①「解雇されて納得いかないとき失業給付を受けていいの?」
 雇用保険にまつわりよく受ける相談が「解雇をされた場合に失業等給付を受けることで解雇を受け入れたということにはならないか」というものです。結論からいうと全く問題がありません。もちろん解雇が撤回された場合は後から返還する必要があります(解雇が遡って撤回される場合にはその間の給料が「バックペイ」として支払われることが一般的です)が、失業給付を受け取ったことと解雇に同意することは本来何の関係もないことなのでそれによって裁判上など不利に扱われたという話も全く聞いたことがありません。ただし、解雇を裁判で争う場合は「勝ったら返します」ということを前提とした「仮給付」の手続きを窓口で行う必要があります。

■素朴な疑問とテクニック②「ひどいパワハラの末に重度の精神疾患に、自分からやめざるを得なかったし労災も厳しそう。でとても自己都合退職の給付期間では足りなそう」
 こんなケースも、残念ながら決して珍しくはなくなってきています。まずこの場合は健康保険の被保険者期間が1年以上ある中で辞めたかどうかが分岐点となります。健康保険の被保険者期間が1年以上ある場合(ない場合、後述の就職困難者の手続きを急ぎ行う)、傷病手当が退職後も受給できます(最長1年半)。これを受け終わった後に雇用保険の失業等給付に関する手続きを行うことで実際に何らかの給付が受け取れる期間を延ばすことができます。離職票が届き次第、ハローワークに行き病気などで働けないことを伝え「受給期間延長」の手続きを行うことでこの期間を延ばし、傷病手当を受け取りきった後、状況により働けうる状態となれば失業給付を受け切ることもできるようになります。

■「障害者等の就職困難者」に該当するかも確認を
 また、特に精神疾患などで傷病手当を受けきってしまう状態というのは相当に重度な症状となっていることが予想されます。この際に「障害者等の就職困難者」の申請をすることもおすすめします。1年以上被保険者ならば300日(45歳以上で360日)と雇用保険で最も手厚い期間の給付を受けることができます(1年未満でも150日)。「障害者等」とありますが、認定のハードルはそこまで高いものではなく、周囲を見てもパワハラなどでメンタルを病んだようなケースで相当程度認められています。これでもだめなら、障害年金などの申請も視野に入れましょう(当然、年金受給対象になりそうだと思われる場合は並行してやった方がよい)。
 今回はいつもの倍の分量で失業給付について解説しました。後半を中心に様々な法律の保険給付が出てきたと思います。現政権が少しずつ破壊しようと目論み生活保護バッシングや「働いて働いて」などと盛んにアピールしているのが少し心配ですが、少なくても現状では日本の社会保障は複数の制度が連携し私たちが困窮により生活できなくなる事態を防ぐことができるよう設計されています。今回紹介した制度の網の目からこぼれてしまうようなケースでは生活保護の受給も視野に入ってきます。今回の記事を読んでわからないことなどあったらお気軽に聞いてください。
 稲葉一良(書記長)

 

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