プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

日韓青年国際交流プロジェクトで報告 ――個人加盟ユニオンが持つ力

反貧困ネットワークからの依頼を受け、日韓青年国際交流プロジェクトの一環として、2月6日、日韓の学生に向けて、個人加盟ユニオンであるプレカリアートユニオンの活動を中心に、報告と意見交換を行いました。
主催者からは、「貧困を考えるなら、労働問題は避けて通れない」という問題意識が共有されました。日本社会において社会運動が弱体化してきた背景には、労働運動そのものがこの数10年で大きく力を失ってきたことがあります。その現状を踏まえ、若い世代に向けて労働組合の役割と可能性を伝えることを目的として、プレカリアートユニオン委員長の清水が登壇しました。

■日本の労働組合法が持つ「強力な武器」

清水はまず、日本と韓国では労働組合法制に違いがある可能性があることに触れた上で、日本の労働組合法の大きな特徴として、「個人加盟の労働組合」にも団体交渉権が認められている点を強調しました。
日本では、会社に労働組合がなくても、当事者が1人でも個人加盟ユニオンに加入すれば、そのユニオンは会社に対して団体交渉を申し入れる権利を持ちます。会社がこれを拒否すれば、不当労働行為として労働組合法違反となる違法行為です。
プレカリアートユニオンは、この制度を最大限活用しながら、日々の労働相談、団体交渉、問題解決に取り組んでいます。

企業別組合の限界と、個人加盟ユニオンの役割

日本の労働組合の大半は企業別組合であり、とりわけ大企業には高い割合で存在しています。一方で、中小企業には、そもそも労働組合が存在しないケースが圧倒的に多いのが現状です。
企業別組合には、同じ会社で働く仲間の賃金を底上げするなど、同一の使用者に対する集団的な要求をまとめやすいという利点があります。しかしその反面、会社の存続と組合の存続が強く結びつくことで、会社の意向を過度に尊重し、「会社の人事部の1部門のような組合」になってしまう危険もあります。

その結果、春闘のような賃上げ交渉は行われても、組合員個人がパワーハラスメントセクシュアルハラスメントを受けた場合や、リストラの標的にされた場合に、組合が当事者のために全力で団体交渉を行い、守るケースは決して多くありません。
こうした状況の中で、職場に組合がない人、あるいは組合があっても十分に守られない人が、1人でも加入できるのが個人加盟ユニオンであり、その存在意義が改めて強調されました。

■「NPO×労働組合」としてのプレカリアートユニオン

プレカリアートユニオンの活動は、労働相談や生活困窮への支援といったNPO・NGO的な側面と、労働組合が持つ団体交渉権という法的権限を併せ持っている点に特徴があります。
プレカリアート」とは、不安定な状態を意味する言葉とプロレタリアートを組み合わせた造語です。非正規労働者に限らず、正社員であっても不安定化し得る新自由主義的経済のもとで、雇用形態を問わず誰でも仲間になれることを理念としています。
現在、組合員はおよそ350人で、東京・新宿区内に事務所を構え、スタッフ体制で日々の相談に対応しています。

■身近な労働問題をどう解決するか

講演では、参加者が想像しやすいアルバイトの事例が紹介されました。
例えば、8時37分に出勤しているにもかかわらず、8時45分からしか賃金を支払わない「15分未満切り捨て」や、出勤前の準備や朝礼への参加を命じながら賃金を支払わないケースは、本来違法・不当であり、賃金を請求することができます。
また、突然の解雇や、パワーハラスメントセクシュアルハラスメントによって出勤できなくなった場合も、「泣き寝入り」や「自己責任」で片づける必要はありません。
当事者が主人公となり、仲間とともに団体交渉を行うことで問題を解決する道があることが強調されました。

■労基署では救えない問題と、裁判の現実

誤解されがちですが、労働基準監督署労働基準法違反しか扱えず、不当解雇そのものは対象外です。解雇予告手当の不払いなど、1部の問題には対応できますが、「解雇が不当である」と争う場ではありません。
裁判という手段もありますが、月収10万円程度のアルバイト労働者が、着手金30万円規模を支払って争うことは、現実的には非常に大きな負担となります。仮に早期に解雇が撤回されても、結果的に赤字になる可能性もあり、「権利はあっても使えない」状況に置かれている人が少なくありません。
だからこそ、立場の弱い労働者にとって、費用負担を抑えながら団体交渉で会社と直接向き合えるユニオンの存在が重要であると語られました。

バブル崩壊就職氷河期と自己責任論の拡大

後半では、日本の労働環境の歴史的変化についても語られました。
バブル期までは、非正規労働は比較的自由で時給も高い「都合のよい働き方」というイメージが社会にありました。しかしバブル崩壊後、就職氷河期が長期化し、望まないのに非正規にならざるを得ない人が増える中で、「非正規は自己責任」「自分で選んだ道だ」という、現実と乖離した認識が広がっていきました。
清水自身も、1990年代前半に大学を卒業し、就職氷河期の初期に社会に出た世代であることを明かし、こうした自己責任論が若者を過度な競争へと追い込み、ブラック企業問題を拡大させてきたと指摘しました。

国労潰しと、日本の労働運動が壊されてきた過程

講演の後半では、参加者から寄せられた「ストライキによって交通機関が止まってしまうことへの反発の気持ちを持つ」という率直な質問に答える形で、日本の労働運動がなぜここまで弱体化したのかについても触れられました。
その象徴的な出来事として言及されたのが、「国労潰し」です。かつて国鉄労働組合国労)は、強力な労働組合として労働者の権利を守る重要な役割を担っていました。しかし国鉄分割・民営化の過程で、国労は徹底的な攻撃を受け、多くの組合員が排除され、組織は大きな打撃を受けました。
この過程は単なる経営改革ではなく、「強い労働組合を社会から排除する」という明確な政治的意図を持った労働運動潰しだったと指摘されました。国を挙げての労働組合潰しが行われるなかで、他の産業や職場にも「組合に入ると不利になる」「声を上げると排除される」という空気が広がり、個々の労働者がバラバラにされ、会社と1対1で向き合わされる認識が広がってしまったのです。

■「自分だけ助かればいい」という競争の罠

清水は、労働者同士が「自分だけは助かりたい」「あの人がやられている間は自分は安全だ」と考えてしまうことが、短期的には得に見えても、中長期的には労働者全体を弱体化させると警鐘を鳴らしました。
本来、労働者は力を持っています。しかし「自分さえよければ」「自分だけは助かりたい」という悪い競争を内面化し、権利を放棄して「お願い」する姿勢を取れば、持っている武器を自ら捨てることになります。だからこそ、感情論や「仲良し」ではなく、構造的に身を守るために団結する仕組みとして、労働組合が必要なのだというメッセージが語られました。

■若者に伝えたかったこと

今回の講演を通じて一貫していたのは、「労働組合を知識として知っているだけでは足りない」という点です。
賃金カット、ハラスメント、不当解雇といった問題は、誰の身にも起こり得ます。そのときに泣き寝入りせず、自己責任論に押しつぶされず、実際に使える権利と仲間を持っているかどうかが、その後の人生を大きく左右します。
日韓の若者が交流する場で、労働運動の歴史や失敗、そして今なお使える制度を共有することは、「泣き寝入りを前提にしない社会」をつくるための第1歩です。プレカリアートユニオンの実践は、その具体的な選択肢の1つとして提示されました。

 

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