いなばのブックレビュー
便利で手軽なイメージのスキマバイトって実際はこんなに危険ということがわかる一冊
『それって大丈夫? スキマバイトQ&A』(非正規労働者の権利実現全国会議編著/旬報社)
スキマバイトはコロナ渦以降急速に広がりを見せ、今や知らない人はいないまでになっている。インターネットなどでの広告などでも連日のように目にするようになった。しかし、そのリスクについてはようやく最近になって少しずつ報じられるようになってきたにすぎない。『それって大丈夫? スキマバイトQ&A』は、非正規労働者の権利実現全国会議の編著による一冊。
学者、ジャーナリスト、弁護士などさまざまな立場からスキマバイトによって生じているトラブルやリスク、社会的な問題点などを解説する。
「派遣クン」と「タイミーさん」
冒頭の藤田和恵さんによる「タイミーさんと呼ばないで」はまさに冒頭にふさわしく、この問題を知る上での入り口を分かりやすく示してくれる。
職場では通常労働者は「○○さん」などと苗字や名前で呼ばれるものである。派遣労働が広がり、職場で派遣労働者が「派遣クン」と呼ばれたように、スキマバイトが広がることでその代表的なプラットフォーマーの名前からかスキマバイトに従事する労働者は「タイミーさん」と呼ばれるようになっている。
この、職場で名前を奪われるということの問題はとても深刻である。使用者が欲しているその人の人間性を度外視し人を労働力として数字化記号化していく構造はまさに人権の問題である。このような流れからその人の労働者としての権利も軽視され人間性を忘れ去られていく。また、タイミーの創業者小川氏自身も「派遣クン」と呼ばれ働いていたことをインタビューで語っていたことについても紹介される。
さらに、これも派遣労働の広がりとともに語られた問題と酷似するが、労働者の側にもニーズがあるのだという言説である。しかしながらこれは、そもそも日本の労働者の待遇が極めて不安定になりこのようなさらに不安定なスキマバイトで食いつなぐほかない社会の問題でもある。また、このようなニーズを満たそうとこのまま権利が守られない働き方が拡大することは社会全体に大きな打撃を与えるものだということも本書を読むとわかる。
その後も、弁護士が執筆するQ&Aのコーナー、学者の解説する社会的背景についてのコーナーと内容は盛りだくさんだ。この内容が100ページほどの誰にでも手に取りやすい分量に収まっているということはとてもありがたい。
「スキマバイト、ちょっと気になるな」と思ったあなた、まずは気軽に手に取ってほしい。最後に、これを書いているつい数日前キャンセルをめぐりスキマバイトのプラットフォーマーを相手取って労働者たちが集団訴訟に踏み切ったことが報じられた。法を潜脱し労働者を搾取するスキマバイト業者に対する反撃の狼煙である。現在、このような業者の多くが法の趣旨を顧みず脱法的な運営を行っているように見える。取り締まりのための法規制も急務だ。いずれにせよ、私たちの生活に深く入り込みつつあるこのスキマバイトについて立場を問わず、知識を得ておくことは必要である。
稲葉一良(書記長)
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