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直接行動・街頭宣伝におけるPAシステムの活用。音響効果を最大化し、運動のメッセージを社会に届けるために ユニオン・合同労組連絡会主催 オルガナイザー養成講座第4弾

直接行動・街頭宣伝におけるPAシステムの活用
音響効果を最大化し、運動のメッセージを社会に届けるために
ユニオン・合同労組連絡会主催 オルガナイザー養成講座第4弾


 ユニオン・合同労組連絡会が主催するオルガナイザー養成講座第4弾「使用者との具体的な闘い方経験交流会」第2回は、「直接行動・街頭宣伝におけるPAシステムの活用――音響効果を最大化するには」をテーマに、2026年4月24日に開催されました。講師は、株式会社レーベン企画の前社長であり、現在も集会やデモの現場で音響を担当している大久保青志さんです。
 冒頭、主催者からは、労働組合の街頭宣伝について、「悪質な使用者に対してしっかりアピールしていく」だけでなく、それが「言葉として、音として、イメージとして、しっかりと正しく伝わっているか、効果的に伝わっているか」が同じくらい大切だという問題意識が示されました。
 今回の講座は、単に機材の使い方を学ぶ場ではありません。街宣、デモ、集会を、どうすればより多くの人に届く表現にできるのか。労働運動が社会に影響力を持つために、音響、音楽、リズム、ビジュアルをどう活用するのか。その実践的な課題を、大久保さんの長年の経験から学ぶ講座となりました。

音楽業界から市民運動へ――大久保さんの歩み
 大久保さんは、自己紹介の中で、「音楽業界出身の市民活動家というか、そういうことで私を選んでいただいたのかと思います」と語りました。
 1951年4月生まれの大久保さんは、70年安保世代で、学生時代には「大学ベ平連」に関わっていたといいます。大学に通うよりも、デモをしたり、仲間と議論したり、ロック喫茶に通ったりする日々の中で、音楽雑誌『ロッキング・オン』の創刊に関わりました。
 その後、日本のロック創世記の時代に、四人囃子のコンサートをサポートするグループを仲間と作り、さらに内田裕也さんのマネージャーとしてワールド・ロック・フェスティバルにも関わりました。ジェフ・ベック、ニューヨーク・ドールズなど海外アーティストのツアーにも関わった経験を、「いい経験をした」と振り返っています。
 その後、保坂展人さんとの出会いをきっかけに、土井たか子さんが社会党委員長になった際、後援会スタッフとして関わることになり、永田町の政治の世界にも入ります。音楽、政治、市民運動。その複数の現場を横断してきた経験が、大久保さんの街頭行動論の土台になっています。

既存の運動スタイルへの違和感
 大久保さんの問題意識の出発点は、従来型の社会運動のスタイルへの違和感でした。
 大久保さんは、1984年8月4日に日比谷野外音楽堂で開催した「アトミックカフェ・ミュージックフェスティバル」について、「これのきっかけになるのが、アトミックカフェ・ミュージックフェスティバル」だったと説明しました。
 当時の反核・反戦運動について、大久保さんは次のように語りました。
 「従来の社会運動、反核や反戦運動は、デモンストレーションとシュプレヒコールっていう一つのパターン化した運動があって、それだけでは、もっと幅広く、主張を多くの若い方でも女性の方でも、市民の方に広くメッセージするには、そういうスタイルではなくて、音楽を通じてメッセージを届けられないのかな、という考えだったんです」
 つまり、正しい主張を掲げているだけでは足りない。通行人や若い世代、これまで運動に参加してこなかった市民に届く表現が必要だということです。

アトミックカフェ――音楽とトークで社会問題を伝える
 アトミックカフェは、反核、反原発、脱原発をテーマに、ミュージシャンを集めてライブコンサートを行う試みとして始まりました。大久保さんは、「ミュージシャンを集めて、反核なり反原発、脱原発というテーマでライブコンサートをやろうということで始まった」と述べています。
 しかし、音楽だけではありませんでした。大久保さんは、「音楽だけではなかなか伝えられないので」と前置きし、高木仁三郎さんや広瀬隆さんなど、脱原発や反核に関わる科学者、文化人を招き、ライブの間にトークを挟んだと説明しました。
 「より具体的な原発に関わって何が危険かとか、反核の今の核兵器の状況はどうかっていうようなメッセージをしながら、コンサートを成立させてきました」
 ここには、現在の労働運動にも通じる重要な示唆があります。音楽や演出は、単なる飾りではありません。入り口として人を惹きつけ、トークや発言によって問題の核心を伝える。感覚と知識を結びつける構成が、運動の広がりを作るということです。

フジロック、NGOビレッジ、憲法集会へ
 アトミックカフェは一度中断しましたが、2011年の福島第一原発事故をきっかけに、フジロックの中で再開されました。大久保さんは、フジロックのAvalon Stageで「アトミックカフェ・ミュージック・トーク・アンド・ライブ」を毎年3日間企画していると紹介しました。
 また、フジロックでは、社会的な活動を行う団体が集まる「NGOビレッジ」のコーディネーターも務め、そこでもトークライブのステージを設けているといいます。
 さらに、大久保さんは、5月3日の憲法集会についても触れました。そこでは、単に発言してデモをするだけではなく、平和、人権、環境などに取り組む団体のブースを設け、ミニステージでトークやライブを行うなど、「いわゆるフェス的な形式」で運営していると説明しました。
 大久保さんは、その狙いを次のように語りました。
 「労働組合とか市民活動家だけではなくて、この憲法問題とか平和の問題に関心のある人たちにもこの日に来てもらって、楽しんでもらう。そういう形式をとりたいということで、こういう集会のスタイルを毎年追求しています」
 ここで強調されているのは、運動を閉じた儀式にしないということです。すでに関心を持っている人だけで完結するのではなく、関心の入口にいる人も参加できる場を作る。そのために、音響やステージ構成、ブース、音楽、トークが一体として設計されているのです。

国会前行動と音響システム
 講座では、国会正門前での音響システムについても具体的な説明がありました。
 大久保さんは、国会正門前の音響について、両側の歩道にトランペットスピーカーを配置し、集まった人たち全体に音が届くようにしていると説明しました。道路を隔てているため、マイクケーブルを設営することは難しく、無線で音声を飛ばし、別の場所で受けてスピーカーに反映させるシステムを使っているとのことです。
 「道路を隔てているので、マイクのケーブルはなかなか設営できないので、無線でシステムで飛ばして、音声を受けて、それをまた北側のスピーカーに反映させるというシステムです」
 これは、街頭行動を「その場にいる人にだけ聞こえればよい」と考えるのではなく、集まった全体にどう聞かせるかを設計する発想です。

サウンドデモの展開――ワールドピースナウからSEALDsへ
 大久保さんは、街宣車、シュプレヒコール、集会という既存の運動スタイルとは異なる形として、アトミックカフェ・サウンドデモに触れました。
 当時は、ブルーハーツのヒロトさんや真島昌利さんがギターを鳴らしながら参加し、参加者が自分たちの好きなメッセージをボードに書いてデモをしたといいます。
 その後、サウンドデモのスタイルが本格的に確立されたのは、イラク戦争の時期でした。大久保さんは、ワールドピースナウについて、「既存の運動とは違う若い人たちが集まって、戦争反対という声を上げようと言った時に登場したのが、トラックにシステムを積んで音楽を鳴らしながらメッセージをするスタイル」だったと説明しました。
 さらに、2015年の安保法制反対運動では、SEALDsが登場します。
 「SEALDsという、やっぱりこれもまた若い人たちの団体が出て、安保法制反対というメッセージを伝えました。その時、彼らもデモンストレーションではサウンドデモを、トラック2、3台、4台くらいのサウンドデモにして、DJがステージに乗って音楽を奏で、若い人たちがそれぞれ自分の思いを沿道の皆さんにメッセージするというスタイルのデモをやっていました」
 ここで大久保さんが見ているのは、運動の「形式」の変化です。シュプレヒコールだけではなく、音楽、DJ、短いフレーズ、自分の言葉によるメッセージが組み合わさることで、街頭行動の印象そのものが変わっていきました。

街宣車だけでは伝わらない――PAシステムの実践的課題
 労働組合の街頭宣伝にとって、もっとも実践的だったのは、街宣車やスピーカーの使い方についての説明です。
 大久保さんは、通常の街宣車による街頭宣伝について、「なかなかこれでは伝わらないというところをどうカバーするのかというのが、この間、私たちの会社がやってきたところです」と述べました。
 そのために必要なのが、ミキサー、パワーアンプ、電源、スピーカーを組み合わせたPAシステムです。大久保さんは、「トラメガだとスピーチだけしか出せませんけど、音声を多様にミキサーに集めて流すことによって可能になる」と説明しました。
 つまり、マイクの声だけでなく、音楽、BGM、複数の発言、場合によっては録音音声なども含めて、総合的に音を設計することができるということです。

トランペットスピーカーとライブ用スピーカーを組み合わせる
 質疑では、小規模な労働組合の街宣で、どのように音を聞こえやすくするかという実務的な質問が出されました。
 大久保さんは、ライブ用スピーカーだけではカバーできる範囲が狭いと説明しました。
 「音楽のライブなんかにも使えるようなスピーカーだと思うんですけど、これでカバーできる範囲って、わりと狭いんです」
 そのうえで、広範囲に音を届けるためには、トランペットスピーカーを組み合わせるとよいと述べました。
 「トランペットスピーカー、いわゆるお祭りとか学校なんかにもあるものですけど、あれは広範囲にわりと聞こえるんです。それを噛み合わせて使っています。舞台の両サイドは音楽ライブなんかでも使うようなスピーカーシステムで、周りにより聞かせるにはトランペットスピーカーで流すということです」
 一方で、トランペットスピーカーには限界もあります。
 「発言者の音声だけはわりと広範囲に聞こえると思うんだけど、音楽ライブをやる時は、低音がなかなか伝わりにくいので、そこはカバーしきれない面があります」
 労働組合の街宣では、スピーチを聞かせるのか、音楽も含めて聞かせるのかによって、機材構成を変える必要があります。

ハウリングを防ぐには――マイクとスピーカーの位置関係
 街宣現場でよく起きる問題がハウリングです。大久保さんは、発言者のすぐ下や真横にスピーカーを置くと、ボリュームを上げた時にハウリングが起きると説明しました。
 「すぐ発言者の真下とか真横に置いた場合は、ボリュームを上げれば絶対反応して、ハウリングを起こすわけです」
 そのうえで、理想的には発言者の下にモニタースピーカーを置き、聞かせるためのスピーカーは両サイドに少し離して配置するのがよいと述べました。
 「専門的に言うと、発言者の下にモニタースピーカーを置いてあげて、両サイドのスピーカーを少し離して、周りの方に聞かせるというのが一番いいんです」
 ただし、通常の街宣ではそこまでの機材を用意できない場合も多いため、事前に発言者とミキサー担当者でリハーサルを行い、音量のバランスを取ることが必要だと指摘しました。

ポータブル電源の活用
 電源についても、重要な指摘がありました。
 大久保さんは、従来はガソリン式の発電機を使っていたが、最近はポータブルバッテリー電源を導入していると説明しました。
 「昔はジェネレーター、いわゆるガソリンを使っていたんですけど、非常に環境的によろしくないということで、最近導入しているのがポータブル電源というシステムです」
 さらに、大久保さんの会社では、再生可能エネルギーを供給する会社と契約し、その電源を充電して、集会や音響に使っていると紹介しました。音響の実務と環境への配慮を結びつける姿勢も、運動のあり方として示唆的です。

韓国の労働運動に学ぶ――音楽、歌、ダンス、ビジュアル
 大久保さんは、韓国の労働者集会、市民集会の音響と演出にも強い関心を示しました。韓国では、クレーンにスピーカーを吊り、何万人もの参加者に音を届けるシステムが使われているといいます。
 「これ、すごいんです。何万という参加者に、ほぼ全域聞こえるぐらいのシステムなんです」
 ただし、大久保さんが韓国から学ぶべきだと強調したのは、機材の規模だけではありません。
 「韓国の音響システムとともに、僕らとして学んでいるのは、やっぱり運動に音楽と歌やダンスとか、そのVTRがとってもすごいんですよね」
 また、韓国の集会映像について、「旗の多さと、それぞれの色の多さ」「リズムに乗ってやっている」と紹介し、「見せるというビジュアルの面と、より多くの皆さんに関心を持ってもらうということも含めて、とても素晴らしい光景だ」と述べました。
 さらに、韓国やアメリカでは、ラップが社会的メッセージを伝える手段として重要になっていることにも触れました。
 「韓国も、そういうラップ的な音楽を自分たちのメッセージ、主張に乗せてやっているという現実があります」

労働運動は「伝え方」を進化させる必要がある
 大久保さんは、社会運動や労働運動にとって、ストレートな反対のメッセージは大事だとしながらも、それだけでは十分ではないと語りました。
 「社会運動もそうですし、労働運動もそうですけど、資本側にでも権力側、政府側にでも、ストレートに何か反対とかというメッセージは大事です。でも、よりできれば関心の薄いと思われる市民の皆さんも含めて、それぞれの団体の考え方、主張をより広く伝えられるような、そういうスタイルも大事じゃないだろうかと思っています」
 この発言は、労働組合の街宣にとって核心的です。会社前でシュプレヒコールを上げることには意味があります。しかし、それが外から見て「何をしているのか分からない儀式」に見えてしまえば、社会的な共感は広がりません。要求内容、怒り、当事者の声、解決への道筋を、音と言葉とイメージでどう届けるかが問われています。

SNS配信という新しい方法
 大久保さんは、最近の国会前行動では、従来のように広範囲にスピーカーを配置するのではなく、舞台周辺に音響を置き、あとはSNS配信で届けるスタイルも出てきていると紹介しました。
 「中央舞台にネット配信のスタッフを入れて、このライブをSNS上で見てもらう。それによって映像も音声も聞かせられるということです」
 国会前の駅出口で、スタッフがQRコードを示し、「ここで舞台でやっているところが見られます、聞けます」と呼びかける方法もあるといいます。
 一方で、大久保さんは、リアルな音の力にもこだわりを示しました。
 「発言者の音声をリアルに聞いて、リアルに体感して意思を固めるというのとは、ちょっと違うので、私としてはあまりイメージできない運動のスタイルですけど、これも新しいスタイルなのかなと思います」
 ここには、オンライン配信と現場の音響をどう組み合わせるかという、今後の運動の課題が示されています。

質疑で出された世代間ギャップと音楽表現の課題
 質疑では、若い世代の参加者から、ラップやリズムは分かる一方で、組合の年齢層が高く、リズムを共有することが難しいという率直な意見も出されました。
 これに対して大久保さんは、日本の労働運動や社会運動には歌声運動の蓄積がある一方で、アメリカや韓国のように現代的な音楽へ進化してこなかったことへの不満を述べました。
 「日本の労働運動あるいは社会運動の文化の中で、歌声運動というのはずっとあるんですけど、アメリカでも韓国でも、そこからもっと現代的な音楽に影響されて進化している。なんで日本の文化運動の中で、社会的なテーマとか労働運動のテーマの中で、音楽のスタイルが進化してこなかったかというのは、とても不満なところがあります」
 また、70年代には岡林信康さん、高田渡さん、五つの赤い風船など、社会的メッセージを持つ歌を歌う人たちが多くいたことに触れ、「そういう70年代のフォークを現代的にアレンジして、自分たちの音楽として作り替えるというのは、とてもいいことかと思います」と述べました。

おわりに――街宣を「届く表現」に変えるために
 今回の講座から見えてきたのは、労働組合の街宣や直接行動は、内容だけでなく形式も問われているということです。
 大久保さんの発言を通じて明らかになったのは、音響は単なる補助ではないということです。声が聞こえなければ、要求は届きません。音が割れ、ハウリングし、何を言っているか分からなければ、正しい主張も社会には届きません。逆に、音楽、リズム、映像、SNS配信、スピーカー配置を工夫すれば、労働組合の行動は、もっと多くの人に開かれたものになります。
 労働組合の街宣は、使用者に圧力をかける場であると同時に、社会に向けて問題を可視化する場です。そして、まだ組合に加入していない労働者に、「自分も声を上げてよい」と伝える場でもあります。
 だからこそ、これからの街頭宣伝には、発言内容の正確さだけでなく、音響設計、聞こえやすさ、見え方、参加しやすさが必要です。
 大久保さんが語ったように、運動のメッセージを「より広く伝えられるようなスタイル」を追求すること。それは、労働運動を内向きの儀式にとどめず、社会を動かす力に変えていくための重要な課題です。

 

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