プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

【当事者の手記】東映アニメの就労環境を知ってください。アニメーターを差別しおだてて仕事をさせる東アニ、「騙して使え」に異を唱えたら演出から外され、LGBT当事者の役員を差別して団交拒否

 東映アニメーションで働いている私が、会社から演出の仕事を外されたのは、もう2年も前になってしまいました。セルアニメーションでは紙の上に手書きでキャラクターの演技や、カメラのアングルなどを描いて1秒間に24枚の絵を1枚ずつ決定していきます。
 私の出したカメラアングルの指示について、絵を描いた年配の作画監督から突然叱責を受けたことがきっかけとなり、あっという間に職場から居場所を失ってしまったのです。
■差別しながらおだてて仕事をさせることに疑問
 そのスタッフは業務委託契約、いわゆるフリーランスのスタッフでした。しかし、彼は東映アニメーション100%出資の子会社に入社し、東映の作品だけをずっと何十年間も担当し続けてきたにもかかわらず、東映と直接契約を結んでいないのです。会社はその作画監督フリーランスであることをよいことに、1カットにつき安い出来高の仕事を大量にこなすことを求め、彼は丁寧な仕事などできない立場で生活のためにたくさんの仕事をさせられてきたのです。彼のご機嫌をとり、とにかく数をこなしてもらうことで、安く大量に仕事を回していくのが会社の思惑です。
 アニメーターは手と目で描く、体が資本の仕事です。私を叱責した作画監督は白髪になり、腰が曲がりはじめ、早くたくさんの仕事をこなすのが厳しくなってきているのです。一方で、社内には新卒で採用され、同じようにアニメーターとして働き、直用契約社員として、保険や年金、賞与、定期昇給も得ている、出来高ではないアニメーターのスタッフもいます。
 このような同一労働同一賃金に反する待遇差別は何十年も続いており、同じ人間なのに働き方に大きな違いを作りました。差別を容認し、業務委託のスタッフはおだてて仕事をさせるのが社内の不文律でありタブーです。仕事から外された私に対して、上司は個別面談で「騙して使え」や「働きバチが必要」などの発言をしていました。恐らく私がその指導に異を唱えた瞬間から、プレカリアートユニオンの一員になることが決まったのだと思います。
■懐柔されたこれまでの労働組合
 その後1年半かけて社内労組や社内ホットライン、他のユニオンなどを通して会社と話し合いを試みましたが、会社は当該である私と話をする前に次々と交渉相手を懐柔し、私に一方的な落ち度があるとして、話し合いを実質拒否し続けてきました。私は契約社員ですが、正社員の決定したことに対して異議を唱えるものは社内で爪弾きにあい、自分から退職願を書かざるを得ない状態になるのです。契約社員と正社員の間にもこの会社には大きな壁があるようです。
■会社と正面から向き合ってくれたPUと
 そんななか唯一プレカリアートユニオンだけが会社に懐柔されず、この問題に正面から向き合い、初めから私を交渉の場に出席させ共に闘ってくださいました。会社の交渉態度は、こちらの要求と論点の違う主張を繰り返し、我々の求めに耳を傾けようとしません。9月からは都労委に救済を申し立てるのと並行して、争議活動が始まりました。
■LGBTの交渉担当者を差別し団交拒否
 争議後の会社の対応は信じられないものでした。誠実で優しい私たちの交渉担当役員の1人でLGBT・セクシュアルマイノリティ当事者が使用している通称を、偽名であるとし、名前が本名ではないのは言語道断だと攻撃して、団体交渉を拒否しています。
 東京都労働委員会の不当労働行為救済申立の調査の当日には、私が前に所属していたユニオンに相談に行くため外出していたとを咎めて私を懲戒してきたのです。外出時間分の過払金請求まで受け、組合活動をしているのに、私の利益は担保されるどころかどんどん不利益が増していく状態なのです。演出の仕事がさらに遠のくのが心配ですが、役員の皆さんや争議団の皆さんに励まされ、街宣やポスティングを行っています。Change.orgでは東映アニメーションが団体交渉を誠実に行うよう、署名活動が始まりました。
 私は自分の役職復帰だけを求めるのではなく、契約の違いによる格差是正も求め、同じ人間として差別のない融和的な職場環境の整備を大きな目標に掲げて、会社と交渉を続けていくつもりです。皆さん、どうかお力添えいただきますよう何卒お願い申し上げます。
 A(組合員)

チェンジ・ドット・オルグのインターネット署名(簡単にできます!)にご協力ください。

chng.it

【ご意見・抗議は】株式会社東映アニメーション 髙木勝裕代表取締役
〒164-0001東京都中野区中野4丁目10番1号中野セントラルパーク イースト5階
TEL03-5318-0678 FAX03-5318-0647

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医療法人社団雄仁会(五十嵐良雄理事長)はパワハラの挙げ句の解雇を撤回しろ!

職場で「うつ」になった社員の「安全な復職」を実現するためリワークプログラムを提供する

メディカルケア虎ノ門、メディカルケア大手町を運営する医療法人社団雄仁会(五十嵐良雄理事長)はパワハラの挙げ句の解雇を撤回しろ!


2006年に医療法人社団雄仁会に入職したAさんは、五十嵐理事長から、「企業向けにメンタルヘルスサービスを提供する会社を作りたい、その会社の立ち上げ、運営もやってほしい」と依頼され、法人の事務次長として、給与計算、入退職の手続きから、五十嵐理事長が主催・参加する研究会・学会の事務局業務(ほとんど無給!)、五十嵐理事長が発表する報告文書の下書き、五十嵐理事長の秘書業務、会計入力業務などの管理事務に従事してきました。入職にあたって、五十嵐理事長は、前職よりは高い賃金を支払うこと、社宅を用意する旨を確約していました。

2007年2月、企業向けにメンタルヘルスサービスを提供するための関連会社(当時)が設立されると、法人の医師、Aさんを含む職員が、この関連会社(当時)から委託された業務に従事していました。2012年にはAさんは、五十嵐理事長からの依頼で、理事にも就任しました。

しかし、五十嵐理事長は2018年春頃に、私的な人間関係が変化したことをきっかけに、2019年9月頃から、Aさんを大声で責めたて、怒鳴りつけるようになりました。まさにパワーハラスメントでした。さらに、2019年12月、五十嵐理事長は、Aさんを呼び出すと「契約書を用意した。雄仁会30%で2020年3月まで、関連会社(当時)70%で賃金を支払う契約だ」「今すぐこの場でサインして」と言いながら、大幅な不利益変更になる関連会社(当時)との新たな雇用契約書に署名するよう求めました。

Aさんは、長時間過重労働、五十嵐理事長からの度重なるパワーハラスメント、意思に反して書類への署名・押印を強いられたことなどから、適応障害で、1ヶ月の自宅療養が必要だと診断されるに至りました。Aさんは、誰でも1人から加入できる労働組合プレカリアートユニオンに加入し、法人と団体交渉を行うと、五十嵐理事長は、パワハラ発言の一部について事実を認めました。しかし、パワハラによって精神疾患を発症したAさんには補償をせず、休職後、復職すると、プレカリアートユニオンとの団体交渉の開催を先延ばしにしたまま、Aさんに一方的に社宅から退去するよう通告しました。プレカリアートユニオンが、関係先に五十嵐理事長によるパワハラ問題などの解決のため協力をお願いする文書を送付したところ、五十嵐理事長はあろうことかこれらを理由にAさんを不当解雇しました。この不当解雇に対してAさんは、2020年10月、東京地方裁判所労働審判を申し立てました。

医療法人社団雄仁会の五十嵐理事長は、職場の「うつ」により休職を余儀なくされた労働者のリワークプログラムを行うデイケアでは、第一人者として知られる医師です。そんな五十嵐理事長自らパワハラを行い、被害者が精神疾患を発症し、休職を余儀なくされたにも関わらず、何の補償もせず、被害者を一方的に社宅から追い出し、組合活動を理由に解雇する、などというということは許されません。皆様、五十嵐理事長が自らの立場と社会的な責任を自覚し、早期にパワハラ問題、解雇問題と労使紛争を解決するよう、五十嵐理事長にご意見くださるよう、お願いいたします。

【ご意見は】医療法人社団雄仁会 五十嵐良雄理事長
医療法人社団雄仁会メディカルケア虎ノ門心療内科 / 精神科)
〒105-0001東京都港区虎ノ門1丁目16-16 虎ノ門1丁目MGビル4階
TEL03-5510-3898 FAX03-6268-8745
医療法人社団雄仁会メディカルケア大手町(心療内科 / 精神科)
〒100-0004東京都千代田区大手町1-6-1 大手町ビルB1F
TEL03-6262-1666 FAX03-6262-1689


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動画公開・受動喫煙による咳、頭痛等の症状で休職した労働者を解雇したIT企業・百様に労働審判申立!

プレカリアートユニオンの組合員が、会社が適切な受動喫煙対策を取らなかったため休職し、復職できないまま解雇されたことについて、労働審判を申し立て、記者会見を行いました。代理人は、増田崇弁護士です。


https://www.bengo4.com/c_5/n_12009/
弁護士ドットコム 2020年11月17日 17時21分
職場の受動喫煙、対策せず…休職のまま退職「咳ひどい」IT企業社員、地位確認求める

 

プレスリリース
事務所室内で喫煙による受動喫煙により咳、頭痛等の症状で休職し、環境改善を求めていたが、相手方が対策を拒否したため、復職できずにいたところ、休職期間満了により退職扱いを受けたという事案で働審判を申し立て

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弁護士 増田崇
TEL03-6272-9023

日時:2020年11月17日(火)14時
場所:厚生労働記者クラブ
出席者:申立人、代理人の増田崇弁護士、申立人が加入するプレカリアートユニオン執行委員長・清水直子

第1 本件の概要
1 当事者
  勤務先  百様株式会社 港区東新橋2-18-3ルネパルティ汐留1103
       システム開発、ネットマーケティングコンサルティング
  申立人  30代・正社員 
2 本件の経緯
   平成29年2月に相手方に入社した。入社時禁煙のオフィスビルに入居していたが、申立人の入社後に相手方の本社は相手方代表者(喫煙者)の自宅を兼ねる現所在地に移転した。申立人が2019年7月に育休から復帰したところ、台所で喫煙する者がいるため、室内禁煙を申し入れたが改善されなかった。申立人は体調が悪化し、咳が止まらないなどの症状が出るようになり、同月22日に受動喫煙症であり、受動喫煙の状況が改善しない限り就労困難との診断を受け、診断書を提出した。相手方は室内禁煙、相手方本社以外での勤務(申立人は従前客先常駐で働いていたこともあった)、在宅勤務のいずれかを要請し、対策がされるまで休んだ。
  ところが、相手方は室内禁煙とすると業務効率が落ちる等の理由で対応を拒絶した。申立人は岡本光樹弁護士及びプレカリアートユニオンを通じて再三改善を申し入れたが、相手方は改善しないだけでなく、2020年2月には私病による休職であり休職期間満了であるとして自動退職を主張して事実上解雇した。相手方は、喫煙専用室を設けるとの発言もあったが、詳細を確認すると、厚生労働省が定める基準(壁扉で仕切られ、毎秒0.2メートル以上の気流があること)に沿ったものではなく、台所を喫煙スペースと指定したと開き直る状況であった。

第2 本件の意義

   既に受動喫煙対策は社会に広まってきているにもかかわらず(詳細は厚生労働省の通達「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」を参照)、労働者からの改善策の申し入れを無視する相手方は悪質である。また、受動喫煙対策をいまだに行われないことにより、退職等を余儀なくされたり、泣き寝入りを強いられている労働者にとって、本件で会社の責任が認められれば大きな福音となる事案であり、社会的重要性を有する。


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偏見、差別・貧困と闘いバレーダンサーに。スト中の炭鉱で、労働者の琴線に触れる物語。『リトルダンサー』(スティーヴン・ダルドリー監督/2000年/イギリス)

偏見、差別・貧困と闘いバレーダンサーに。
スト中の炭鉱で、労働者の琴線に触れる物語

リトルダンサー』(スティーヴン・ダルドリー監督/2000年/イギリス)

 『リトルダンサー(原題:Billy Elliot)』は2000年に公開されたイギリスの映画です。「僕がバレエ・ダンサーを夢見てはいけないの」がキャッチコピーの本作は、まだバレエは女性がするものという偏見が強かった時代、炭鉱町の少年が、様々な壁を乗り越えバレエダンサーを目指す物語です。英国アカデミー賞を初め世界中の映画祭で受賞し、制作費500万ドルの20倍近い1億ドルの興行成績を上げるに至りました。監督はスティーブン・ダルドリー。舞台出身のスティーブン監督にとって初の長編映画ですが、大胆で自由な発想の演出は、作品をよりドラマチックに彩っています。
■炭鉱町でボクシングを習うビリー
 主人公の「ビリー・エリオット」は、炭鉱夫の父と兄を持つ心優しい少年です。母とは幼くして死に別れており、祖母と父兄と暮らしています。ビリーは他の男の子たちが皆そうするように、ボクシングを習っていました。ボクシングは人と殴り合うスポーツです。ビリーはどうしても、人を殴る事への抵抗が拭えず、結果、いつも負けてばかりいました。そんななか、ふとしたことがきっかけで隣でやっていたバレエダンスのレッスンに参加することになり、次第にその魅力に魅せられていきます。
ジェンダーや階級、様々なバイアス
 当時のイギリスでは、バレエ・ダンスというのは上流階級の「女の子」が習う習い事でした。炭鉱町の男は「男らしく」なければならず、また、階級にそぐわない趣味を持つことはよしとされていませんでした。当然、ビリーがバレエを習うことに対して、父も兄も猛反対します。
 町は炭鉱閉鎖の問題で大きく揺れていました。ビリーの父も兄も炭鉱夫で、労働組合の組合員です。組合は炭鉱閉鎖に反対しストライキを行っていたため、ビリーたち一家の生活はとても苦しいものでした。ボクシングのレッスン料もそんな苦しい家計の中から父が何とかひねり出していたものなのです。ビリーの父は、ボクシングの熱烈なファンでしたし、「人並みの暮らしをさせて立派な”男”に育てなければ」という子どもへの強い思いもあったのだと思います。ジェンダーや、階級、様々な先入観と偏見がビリーの行く手を阻んだのです。
■女装趣味の友人マイケル
 そんなビリーにとって、良き理解者となったのが少し”変わった”友人、マイケル。女装が趣味で、お姉さんの服を内緒で着たり、お化粧をすることが好きな少年でした。マイケルは、そんな自分の趣味や好きなことを恥ずかしがったり、否定しません。周りの人々が、「労働者階級」でなおかつ「男」であるビリーが、バレエ・ダンサーになることを夢見ているということに対して、奇異と否定の眼差しを向けるのに対して、マイケルはビリーの背中を押そうとさえします。好きなことを好きとはっきり伝えるマイケルの存在に、ビリーは励まされ、勇気づけられます。
■開花するビリーの才能
 ビリーは、周囲の反対にもめげず、隠れてこっそりとバレエの練習を続けます。ビリーの先生であるウィルキンソン夫人は、そんなビリーにバレエの才能を見いだします。ウィルキンソン夫人はビリーにオーディションを受けさせようとしますが、ストにより家族の生活が苦しいことを知っているビリーは、それに従うことができません。
 クリスマスの日、ビリーの父は母の形見であるピアノを燃やしてしまいます。ビリーは外に飛び出し、踊り出します。ビリーの父は、踊る我が子の姿に才能を感じ、希望の光を見いだします。「ビリーを俺たちのようにしてはいけない」父の強い決意、組合の仲間たちのカンパによって、とうとうビリーはロイヤル・バレエ・スクールを受験することになります。
 「労働者に芸術がわかるわけがない」「バレエなんて男らしくない」、といった差別と偏見に満ちたものの見方は、残念ながら、今なお根深く残っています。最後はプロのバレエ・ダンサーになったビリーですが、この物語は、「当たり前」という言葉の下、世の中に溢れている差別と偏見、貧困との闘いの物語でもあります。みなさんも、まず周りの「当たり前」を疑うところから始めてみませんか。
 稲葉一良(書記長)

movies.yahoo.co.jp

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子育て論だが、大人自身が顧みたい。『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(太田啓子著/大月書店)

子育て論だが、大人自身が顧みたい

『これからの男の子たちへ 「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(太田啓子著/大月書店)

 みなさんは、ジェンダーバイアスという言葉を聞いたことがありますか。男女の役割に関する固定的な観念や、それに基づく差別・偏見・行動などを指す言葉なのですが、この言葉自体に聞き馴染みはなくても、例えば「女らしく」とか「男らしく」のような言い方は日常的によく耳にするのではないでしょうか。
『これからの男の子たちへ』は、自身もシングルマザーとして子育てを行いながら、離婚・相続などの家事事件セクシュアルハラスメント・性被害、各種損害賠償請求などの民事事件を手がける、弁護士の太田啓子氏による、男の子の子育てから見えてくる、ジェンダーバイアスの問題に踏み込んだ1冊です。
■子育て時から根深く存在するジェンダーバイアス
 著者は子育ての中、日々ジェンダーバイアスを感じているといいます。世の子育ては、男の子を褒めるにしても叱るにしても「さすが男の子だね」「男らしいね」とか「男の子なのにそんなの恥ずかしいでしょ」などと、とかく男の子に「男らしさ」、そして逆に女の子には「女らしさ」を押しつけがちです。
 著者はフランスの作家シモーヌ・ド・ボーヴォワールの「人は女に生まれのではない、女になるのだ」という名言になぞらえ「男に生まれたというよりも、”男になる”のだな」と感じているといいます。子育て時から社会にジェンダーバイアスを掛けられた子どもたちは、やがて、無意識のまま性差別や、最悪の場合、性的虐待を行うようになる大人になってしまう可能性があるのです。
■有害な「男らしさ」
 1980年代にアメリカの心理学者が提唱した言葉に「有害な男らしさ」というものがあります。「男性性の4要素」として①意気地無しはダメ、②大物感、③動じない強さ、④ぶちのめせ、が挙げられます。この男らしさを良しとする価値観をインストールされた結果として、暴力や性差別的な言動に繋がり、自分自身を大切にできない等に繋がると考えられています。
 本書は、子どものうちから無意識に埋め込まれてしまうジェンダーバイアスが差別的感情や、性暴力、さらには自らを追い詰めてしまう源になってしまう危険性を解説し、どのように男の子の子育てと向き合っていくべきなのかを対談なども交えつつ、広範に考察しています。日本でも「男は黙って働く」の下、長時間労働が蔓延してはいないでしょうか。
 稲葉一良(書記長)

www.otsukishoten.co.jp

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社会や地域と連帯して共感を集めるストを。『ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』(今野晴貴著/集英社新書)

社会や地域と連帯して共感を集めるストを

ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』(今野晴貴著/集英社新書

 労働組合の争議行為の中で、最も代表的なストライキですが、最近日本ではほとんど見られなくなってしまいました。『ストライキ2.0 ブラック企業と闘う武器』は、NPO法人POSSE代表理事などを務める今野晴貴氏による1冊です。「ブラック企業がなくならないのはストをしないからだ!」という帯のフレーズは、とてもインパクト大です。
■労働者の唯一にして最大の交渉資源「ストライキ
 ストライキは「集団で働かない」という、とても単純な抗議手段です。それにもかかわらず、今日まで強い影響力を持ち続けています。古くは、ピラミッド建設の労働者たちも、ストライキを駆使して労働条件の交渉を行ったのだといいます。労働力をコントロールすることで使用者に対し損害を与えるというこの手段は、連帯によって実効力が担保されるものです。特に近年日本では、労働組合の組織率低下は、そのままストライキの激減へと繋がっています。
■日本ではストライキは受け入れられにくい
 日本でストライキが一気に衰退してしまった理由は、他にもあります。欧米での盛んな産業別労働運動と違い、日本の組合は企業別組合がほとんどのため、そもそも欧米以上にストが理解されにくいのです。企業内の組合は、会社とその運命を共にしなければならず、例えばストライキによって会社がダメージを受けてしまうと、それにより会社が他の競合との競争に敗れ、自分たちの仕事が不安定になってしまうようなリスクを負うことに繋がるからです。
■新しいストライキの形
 では、この先、ストライキはなくなっしまうのでしょうか。そんなことはありません。実は、現在日本でも形を変えて新しいストライキが行われています。例えば、残業をせず休憩をきっちり取るという「遵法闘争」等がその1例です。また、世界的にはストライキの目的も、労働条件の維持向上に限らず、社会正義のためのストライキ、環境問題に対するストライキと多様性を帯びてきているといいます。
 ストライキを始めとした争議行為はどれだけ社会の共感を得られるかが、成否の鍵を握っています。本書は様々な世界のストライキ事情を解説していますが、そのどれもが、社会問題と密接に関係しています。これからの労働組合は、社会や地域とより一層連帯し、共感を集め、積極的に「ストライキ」を行っていく必要があると考えます。

 稲葉一良(書記長)

shinsho.shueisha.co.jp

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全国ユニオンの21年春闘セミナー開催。社会運動と連携し雇用も生活も賃金も守る

 11月28日、全国ユニオン2021春闘セミナーが開催されました。会場は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から入室前の検温と消毒を徹底し、室内は充分に換気され、席の間隔が開けられての開催となりました。zoom参加も含め、3人の講師を迎え行われました。
■トータルに生活を守る労働運動を
 はじめに、全国ユニオン鈴木会長が挨拶を行いました。「コロナ渦で一部の労働組合では活動が停止するようなことがあったが、コミュニティユニオンは感染予防をしながら様々な取り組みをしてきた。単なる座学ではなく、年末年始の取り組みと21春闘をどのように考えていくのか。社会運動と一緒にトータルに生活を守る労働運動を行っていきたい。21春闘に関しては、雇用も賃金・労働条件も守るというかたちで闘っていく」と方針が語られました。
協同組合と労働組合の歴史
 第1単位として、元連合副事務局長の高橋均氏が「労働組合と協同組合の過去・現在と望ましい未来」というタイトルで、協同組合と労働組合の関係について、講演しました。
■『ザリガニ』の動画で助け合いを考える
 今でこそ義務教育の教科書が無償なのは当たり前のようになっていますが、昔は違いました。学校に通えない子どもたちが100万人いたのだといいます。冒頭、魚が買えないから、子どもたちがザリガニを捕りに行く「ザリガニ」という動画の紹介がありました。子どもたちは誰が何匹取ったかではなく、家族の数に応じて分け合いました。能力や成果に依らず、お互いに助け合う姿が協同組合の源にあります。
■江戸時代に協同組合の源流が
 江戸時代にも協同組合的組織はあったのだといいます。共済の源流は「友子制度」、農協の源流は大原幽学の「先祖株組合」、信用金庫・労働金庫の源流は二宮尊徳の「報徳五常講」に遡ることが出来ます。法律より先に常に行動がありました。このように、協同組合は常に下(庶民)から作るものですが、近現代の日本のそれは、上(国)が作ったものであることが特徴です。
労働組合と協同組合はコインの表裏
 労働組合と協同組合は、コインの表と裏のようなものです。労働争議を協同組合がバックアップし、右翼や国から弾圧を受けてきた歴史があります。また、労働組合と協同組合は労金全労済を生み出しました。労働組合労金全労済の関係を見ても、客と業者の関係ではなく共に活動する主体だということができます。
■協同組合の持つ可能性
 労働者協同組合法に定める働き方は、「資本家・経営者・労働者」三位一体の働き方であり、皆が労働法の保護を受けられます。この制度は中小企業の継承問題等ばかりか、地域の抱える様々な問題も解決できる可能性もあるのだといいます。連帯は決して簡単な道ではないが、取り組むことに大きな意義があると講演は締めくくられました。
■4つのスローガンと6つのポイント
 第2単位として、全国ユニオン関口事務局長から春闘方針案について説明がありました。
 2021年の春闘は「1.新型コロナウイルスを理由とする解雇・雇い止めと闘い職場と生活を守ろう!」「2.スト権を確立して労働条件の向上を目指そう!」「3.底上げに取り組むと共に雇用形態間などの格差是正を実現しよう!」「4.労働法制や平和憲法の改悪を許さない取り組みを進めよう!」の4つをスローガンに掲げ行われます。これらに基づき、具体的に6つの活動方針が定められています。
■コロナ渦でも待遇の「改善」を
 具体的な要求事項として、4%の賃上げ(定期昇給2%、ベースアップ2%)や正規・非正規の格差是正、誰でもどこでも時給1500円の実現、派遣労働者への交通費支給、ワークルールの取り組み、長時間労働の是正、ワークライフバランスの実現等を目指していくこと、また、「新型コロナウイルスによる雇用への影響に立ち向かう!」として、①休業補償100%を求める!②解雇雇い止めと闘う!③倒産・事業再編に立ち向かう!④感染予防対策の雇用形態間格差を撲滅しよう!の4つを掲げ取り組んでいくことやその背景が説明されました。
春闘は経営者との対話の場でもある
 「苦しむ働く人がひとりでも多くユニオン運動につながり集い、連帯し、闘う事で希望を共有していけるよう21春闘を闘っていきましょう」、というメッセージが2021春闘アピールで表明されています。結びに、「春闘は経営者との対話の場、考えを確認する場でもある」と発言がありました。
■つくろい東京ファンドによる住宅支援
 第3単位として、「コロナ渦で進む貧困の現状」というタイトルで、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授の稲葉剛氏による講演が行われました。
 稲葉氏は1990年代から路上生活者支援を行ってきました。はじめは炊き出しや夜回りが中心でしたが、徐々に路上から抜け出す手助けを行う活動へと、活動は広がっていきました。貧困問題は住まいの問題なのではないかと考え「つくろい東京ファンド」を立ち上げ、住宅支援の活動を行っています。中野区のシェルター(計7部屋)は、設立から6年間で110名以上が利用しています。2020年3月時点、中野区豊島区を中心に都内25室を借り上げ、住宅支援を行っています。
■住まいは人権
 「住まいは基本的人権」というハウジングファーストの考え方があります。コロナ渦において、路上生活者は苦境に立たされています。池袋の炊き出しに集まる人が増え、若い人の姿も見られるそうです。日本でホームレスとは「屋根がない状態」を指しますが、それに準ずる、例えばネットカフェを住居にする「屋根はあるが、家はない状態」にある方への支援が重要になっているのだそうです。ネットカフェもコロナの休業要請により閉まってしまい、居場所を失ってしまうからです。
■会社としっかりと対峙し、貧困を未然に食い止める
 新型コロナウイルスの影響で、生活保護申請は前年比39パーセント増となりました。それに伴い、行政の水際作戦も激化し、さらに、感染リスクの高い相部屋施設への誘導も行われていたといいます。コロナ渦で、住居を軽視してきた社会福祉の課題が浮き彫りになったと稲葉氏は訴えます。生活保護を権利として、住まいを基本的な人権として、保障していく社会の必要性を強く感じると共に、貧困に陥らないよう、しっかりと会社と交渉する労働組合の果たすべき役割の大きさも再認識しました。
■地域に根ざした労働運動を!
 第4単位として「労働組合の今日的役割とは何か」、というタイトルで、岐阜一般労働組合本間会長による講演が行われました。
 企業内組合(ユニオン)は全員が交渉する企業に雇用されており、利害関係、力関係の縛りから完全に自由になれません。合同労組は、企業と利害関係を持たない者をして団体交渉に当たることができることが強みだと本間会長は語ります。その上で、地域との結びつきがとても重要になってきます。労働組合が地域に対して影響力を持てないでいることは今後の課題だと感じました。
労働組合の可能性
 団体交渉権は、企業が決済できる全ての事柄について及びます。さらに、交渉が決裂したときは強い争議権を持ちます。日本の労働組合は、欧米に対し遙かに手厚い法的保護を受けています。また、労働組合の組織は上意下達の企業組織と違い、平等・民主的な横組織です。多様性があり、それ故に揉め事が起こりやすい面も持ちますが、企業組織より明らかに組織体としての優位性を持っています。
■1割が結集し多数派になり、地域と連帯していく
 「闘うことができる人は、せいぜい全体の1割です。私たちは、この1割を結集し、多数派を作っていく。団結の反対は自己中。オルグ自身が、自分が自己中になっていないかしっかりと見つめ直す必要がある。あらゆる差別感の克服を。地域においてもコアな部分から結束を固め、大同団結をする必要がある」などと本間会長は語り、講演を締めくくりました。
 それぞれの講師に対し活発に質問が飛び交うなど、熱気にあふれた春闘セミナーは、全員での団結がんばろうによって締めくくられました。よく、「来年のことを言うと鬼が笑う」などといいますが、春闘はこの期間の準備こそが大切です。コロナ渦だからこそ労働条件の維持向上は一層大事。共に春闘を闘い抜きましょう。
 稲葉一良(書記長)

 

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