よかれと思ったサービス残業が、あなたと職場を追い詰める
自己犠牲ではなく、権利を使うことが職場を守る
プレカリアートユニオンは2026年7月9日、YouTubeライブ「プレカリアートユニオンの社内通報窓口」を配信しました。出演は執行委員長の清水直子と書記長の稲葉一良です。今回のテーマは「よかれと思ったサービス残業があなたを追い詰める!」でした。
#プレカリアートユニオンの社内通報窓口 【2026年7月9日16時】よかれと思ったサービス残業があなたを追い詰める!
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職場を回すため、利用者や取引先に迷惑をかけないため、自分の能力が低いと思われないため――。労働者がよかれと思って取る行動が、結果として人手不足や未払い賃金を見えなくし、自分や周囲の労働者を苦しめることがあります。配信では、最近の団体交渉や労働相談で実際に見えてきた例をもとに、その問題が語られました。
■有休を取らないことが人手不足を支えてしまう
最初に取り上げたのは、介護事業所など、人手不足が深刻な職場です。
介護職場では、「私が休んだら他の人が大変になる」「利用者に迷惑をかけられない」と考え、有給休暇を申請しない人が少なくありません。「希望休は月に何日まで」と職場で言われ、その範囲を超えて休みを申し出ること自体に罪悪感を持ってしまうこともあります。
稲葉書記長は、有給休暇は労働者の権利であり、使用者が自由に拒否できるものではないと説明しました。事業の正常な運営を妨げる場合に、別の日へ変更を求める時季変更権はありますが、極めて限定的なものです。あらかじめ有休を申請したにもかかわらず、「人がいないから」という理由だけで認めない運用は、本来許されません。
それにもかかわらず、労働者が遠慮して休まなければ、会社は現在の人員で職場が回っていると判断します。賃金を上げる必要も、新しい人を採用する必要もないと考えてしまいます。
利用者のために現場を支えているつもりでも、結果として人手不足を見えなくし、少ない人員による質の低いケアを続けさせることになります。過酷な労働環境が続けば、ハラスメントや離職だけでなく、利用者への虐待や事故につながる危険もあります。
配信では、職場を本当に改善したいのであれば、有休をきちんと使い、人員が不足している現実を会社に認識させる必要があると語られました。「有休を取るのは権利」というだけでなく、人手不足の職場では、有休を使うことが改善のために必要な行動だという指摘です。
■休憩を削り、ただで働くことは美徳ではない
休憩や残業代についても同じです。
忙しい職場では、休憩を短く切り上げたり、始業前に早く来て働いたり、タイムカードを打たずに仕事をしたりする人がいます。「みんなが頑張っているから」「自分だけ残業代を付けるのは悪い」と考えてしまうためです。
しかし、その働き方で得をするのは、利用者や同僚ではなく、人件費を払わずに事業を運営できる経営者です。
サービス残業で不足を埋めれば、本来必要な人員や業務時間が記録に表れません。会社は「今の人数と勤務時間で仕事ができている」と考え、改善しないままになります。
さらに、自分が無償で働いていると、正当に残業代を申告する人や有休を取る人に対して、「自分は我慢しているのに、なぜあの人だけ」と不満を向けるようになる場合があります。労働者同士が監視し、権利を使う人の足を引っ張る構造が生まれます。
清水委員長と稲葉書記長は、ケア労働に誇りを持つのであれば、自己犠牲を続けるのではなく、働いた時間を記録し、休憩を取り、残業代を請求することが必要だと強調しました。権利を主張することは仕事への責任を放棄することではなく、安全で持続可能な職場をつくるための行動です。
■「遅れてはいけない」が運送の安全を壊す
運送業界でも、「荷主に迷惑をかけてはいけない」という責任感がサービス残業につながっています。
会社が決めた配車では定時に出社しても指定時刻に間に合わないため、労働者が自主的に早く出勤する。しかし会社は、遅れれば責任を追及する一方で、早く来た時間については「勝手に来ただけ」として残業代を支払わない。このような二重基準があると語られました。
本来、定時に出勤して間に合わない運行計画であれば、責任を負うべきなのは、その計画を組んだ会社です。労働者が無償で早出することで間に合わせれば、会社は無理な配車でも運行できると判断し、改善しません。
無理な時間設定に合わせようとすれば、速度超過や焦り、注意力の低下につながります。事故が起これば、ドライバー本人だけでなく、歩行者や自転車利用者など、道路を使う多くの人の生命が危険にさらされます。
高速道路を使わなければ間に合わないのに、労働者が自費で高速料金を負担するような例についても触れられました。会社の都合で必要な費用を、労働者が負担するのはおかしいという指摘です。
荷物を安全に届けるために必要なのは、無償の早出や無理な運転ではありません。現実的な配車を組み、必要な労働時間と経費を会社に負担させることです。
■残業を隠した結果、仕事自体が不要だと判断された例
配信では、外資系企業で退職勧奨を受けた労働者の例も紹介されました。
その労働者は、仕事への責任感から長時間働いていましたが、「残業を申告すると能力がないと思われるのではないか」「時間内に終わらせるべき仕事なのだから、残業代を申請してはいけない」と考え、時間外労働を全く申告していませんでした。
会社も労働時間を適切に把握せず、本人の自己申告に任せていました。その結果、記録上は残業を全くせずに仕事をしているように見えていました。
その後、会社が世界的な人員削減を進めた際、「この人は残業をせずに働いている。仕事に余裕があるのではないか」「このポジションはなくてもよいのではないか」と判断され、リストラの対象にされました。
実際には長時間働いていたにもかかわらず、自分を守るつもりで残業を隠したことが、仕事量を少なく見せ、自分の雇用を危うくする材料になってしまったのです。
労働時間は、残業代を請求するためだけの記録ではありません。どれだけの業務を、どれだけの時間をかけて行っているかを会社に示す資料でもあります。働いた時間を正確に記録しなければ、必要な人員や業務量も正しく判断できません。
■AIの回答をそのまま労働相談に持ち込まない
後半では、「よかれと思って」の別の例として、生成AIの利用についても語られました。
最近は、労働問題についてAIに相談し、その回答をもとにプレカリアートユニオンへ相談する人も増えています。AIが組合を探し、プレカリアートユニオンを紹介する使い方は有益な面があります。
一方で、自分の主観だけを前提にAIへ質問すると、AIが相談者の期待に沿うような回答を作り、法的には難しい主張を「できる」と説明する場合があります。相談者がその回答を正しいと信じ込み、実際の相談で修正することが難しくなる例があると語られました。
また、AIに作らせた長文を、自分でも十分に読まず、組合の担当者へ大量に送るケースもあります。重要な事実が大量の文章に埋もれ、交渉に必要な情報交換ができなくなります。
清水委員長は、AIを使うこと自体を否定するものではないとした上で、労働相談では、文章が上手でなくても、自分が経験した事実や感じたことを自分の言葉で伝えてほしいと呼びかけました。AIが作った文章の意味を正確に理解しないまま自分で会社に送れば、その文章の内容について責任を負うのは、AIではなく送った本人です。
■我慢することではなく、声を上げることが職場を守る
今回の配信で共通していたのは、善意や責任感そのものを否定することではありません。
同僚を助けたい。利用者や取引先に迷惑をかけたくない。仕事をきちんと終わらせたい。その気持ちは大切です。
しかし、その善意が無償労働や権利の放棄に向かえば、会社が負担すべき人件費や責任を、労働者が肩代わりすることになります。問題を見えなくし、自分を疲弊させ、同僚にも同じ我慢を強いることになります。
サービス残業をしないこと。有休を使うこと。休憩を取ること。働いた時間を正確に記録し、賃金を請求すること。無理な業務命令や配車について声を上げること。これらはわがままではありません。
むしろ、職場の問題を可視化し、安全で持続可能な仕事に変えていくために必要な行動です。
「よかれと思って」続けていることが、自分や周囲を苦しめていないか。少しでも疑問を感じたら、問題が深刻になる前にプレカリアートユニオンへ相談してください。一人で我慢するのではなく、労働組合を通じて、会社が負うべき責任を会社に負担させることが、職場を本当に守ることにつながります。
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7月14日(火)17時から、プレカリアートユニオンのYouTubeライブの配信を行います。
#プレカリアートユニオンの社内通報窓口 【2026年7月14日17時】警備会社テイケイとの闘いを振り返る
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