【解決報告&組合員の手記】
身に覚えない理由で懲戒解雇された介護職のSさん
団交で解雇理由を撤回させ、労働審判で勝利和解
「自分と組合と弁護士と三つ合わせたからこそ勝利した」
千葉県で夜勤専従の介護職をしているSと申します。自分が介護の仕事を始めたのは、ちょうどコロナが流行った時にリストラにあったため転職したことがきっかけでした。
その後、介護職の派遣として働き、夜勤での正社員の仕事を探していた時、求人会社からの紹介で入ったのが、今の社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームでした。
■いくら残業しても残業代は払われず
契約社員だったものの給料は悪くなく、ボーナスも出て、残業代も出ると契約書には書いてあったため、入職することに決めました。それから2ヶ月していくら残業しても残業代が出てないことに気づき、先輩から「ここはパック料金の給与制だ」と聞かされました。
その時から労働基準監督署に相談や申告をしました。そしてある日、施設長兼ケアマネジャーである理事長の奥さんから電話があり、「千葉県の監査があるから出勤簿から残業した時間や出勤した日数を削って改竄しろ」と言われました。それを断ると翌日施設からの携帯のショートメールにて一週間の出勤停止命令がきました。
出勤停止の理由は書かれておらず、「弁明に来るように」としか書かれておりませんでした。出勤停止は重い懲戒処分です。自分はそのような問題になるようなことは一切していません。十中八九、労基に申告したこと、改ざんを断ったことによる報復でした。労基の監督官の方も「労基に出頭するように手紙を出したからそれに怒ったんだろう」と言っていました。
■弁護士事務所20カ所、労組10カ所に断られ
それから自分は多くの弁護士や労働組合に電話をかけ、相談しました。弁護士事務所は20ヶ所、労組は10ヶ所くらいかけた覚えがあります。しかしどこも「うちでは扱えない」とか「あなたが横領したんでしょ?」と言われる始末でした。
途方に暮れたところ、ふと思い出して電話をかけた所が今のプレカリアートユニオンでした。電話に出た方に事情を説明したところ、その方は「今、法律が分かる人がいないので後でかけ直す」と言いました。それから何日かし、電話を掛け直してくださったのが稲葉書記長でした。
■理由の記載ない懲戒解雇通知。作られる解雇理由
電話をした次の日にプレカリアートユニオンの事務所に伺い、その日に加入をしました。組合に加入した時、施設側に自分が組合に加入通告をし団体交渉を申し入れるFAXを送ったところ、社会福祉法人側は、団体交渉に応じるにあたり「反社会的組織ではないことを証明できる物を出せ」と組合を反社呼ばわりしました。その数日後、自宅には懲戒解雇を通知する手紙が届きました。その手紙にも懲戒の理由は書かれていませんでした。
クビになってしまったのでハローワークに失業保険の手続きに行くと、離職票には「上司へのパワハラ」と記載されてました。自分は身に覚えがなく一切そのようなことはしたことありません。むしろ、理事長の奥さんや女性のユニットリーダーから「お前は育ちが悪い」、「夜勤の休憩を全部なくして働け」と言われるなど、パワハラを受けていました。
その後、労基から「解雇予告除外認定の調査のため出頭するように」と言われました。そこではハロワとは違う理由で利用者への虐待という理由で解雇を突きつけて来ました。
その利用者さんは過去に足にボルトを入れており、昔のボルトは経年劣化で疲労骨折を起こしやすい代物です。施設側も事故当時は千葉市に事故として届け出をし、医師も「疲労骨折か、オムツ交換の際に本人が力を入れてしまい事故になったのだろう」と診断していました。それを解雇の理由としてでっち上げをしてきたのです。
■団体交渉拒否。でたらめな主張の繰り返し
その後、何度も施設を訪れ団体交渉を申しれてきたのですが、拒否され続けました。何度かするうちにやっと理事長に会えたのですが、理事長は施設の入り口にバリケードを築き警察を呼んだりしました。
出勤停止以来、施設に出入りできないように暗証番号も変えられました。私物も制服と一緒に置きぱっなしになっていたので、荷物だけは引き取りに行かせてほしい、と言ったところ理事長は「返しません。返す必要はない」と言い出しました。
流石に呼ばれた警察官の方々も、それに対して「あの人の物なんだからそれくらい返してあげなよ」と説得する始末でした。その時1人の警察官も「この人は異常だ」と、言葉を漏らしていました。
説得の結果、警察官立ち会いの元でさらに警察官がロッカーの解錠をすることになったのですが、その時ロッカーの鍵を警察官に渡そうとした時理事長は警察官から鍵を奪い取ったのでした。居合わせた組合の仲間たちも警察官も、理事長の異常な行動に呆然としました。
鍵を取り返した警察官がロッカーを解錠すると、そこに荷物はあったのですが、制服と制服のポケットにあった財布はなくなっていたのでした。それは、緊急搬送の際に病院から施設へ帰るために自分が立て替えるタクシー代でした。
おかしいのはこれだけでなく、プレカリアートユニオンが東京都労働委員会に不当労働行為救済申立をした時も、虐待の証拠だとして理事長は、朝日新聞やYouTubeなどのネットニュース一の虐待の記事を証拠だとして提出してきました。それは自分や施設や理事長とも全く関係のない、北海道や岡山の介護施設の虐待事件の記事でした。理事長曰く、「これだけ日々虐待事件が起きているのだからあなたも有罪だ」と主張してきました。
■団交で解雇理由を撤回させ、労働審判で勝った
その後、地位確認などの労働審判を申し立てたところ、理事長側にも弁護士がついたため、やっと団体交渉が行われることになりました。その時も理事長は一言も喋らず、書記長の稲葉さんをずっと睨みつけるだけか、「弁護士に一任してます」としか喋りませんでした。ですが、清水委員長や組合員の方々の鋭い質問や、粘り強い交渉によって弁護士も黙ってしまい、清水委員長が「虐待をしたというなら医者のカルテがあるでしょ、それを出しなさい」と言ったところ、弁護士は解雇理由から虐待という理由を撤回したのでした。
その後、労働審判で、勝利和解をすることができました。
振り返ってみると東京労働委員会や団体交渉の時点でチェスで言うチェックメイトだったのかもしれません。団体交渉も労働委員会も適当にやり過ごし、裁判だけ勝てればいいと思ったのでしょう。
団体交渉も労働委員会も裁判と地続きの前哨戦だったのです。さらに理事長は弁護士との打ち合わせも信頼関係も構築できていなかったのでしょう。理事長のように「俺は金払ってるお客様だ」という態度では裁判は勝てないでしょう。自分の主張に必要な証拠も自分で判断し、集めるしかないのです。
■他の人の組合員を助けることは自分の力になる
清水委員長が加入の際に言われた「組合はサービス業でも会社でもない。勝つにはあなた自身が率先して行動する必要があります」。その言葉が身に沁みました。けれども個人だけでは到底会社に勝てません。自分と組合と弁護士と三つ合わせたからこそ勝利したのだと思います。
また自分も他の人のアクションや団体交渉に参加しました。自分の団体交渉にも多くの仲間たちが参加してくれました。これが自分のことだけしかやらなかったら多くの人たちも駆けつけてくれなかったかもしれません。他の人の組合員を助けることは次の自分の力にもなるのです。
最後に清水さん、稲葉さん助けてくれた多くの組合の仲間の方々も本当にありがとうございました。
ここまで長い文章を読んでいただき、ありがとうございました。
S(組合員)
右から労働審判の代理人の伊藤安奈弁護士、佐々木亮弁護士(ともに旬報法律事務所)、当該組合員のSさん、稲葉一良書記長。
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