プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

都労委で(株)クローバーと粟野興産(株)に対し、団体交渉応諾を命じる命令。プレカリアートユニオンは法適合組合と認め、DMUの発信を口実にした団交拒否は違法と判断

東京都労働委員会で(株)クローバーと粟野興産(株)に対し、団体交渉応諾を命じる不当労働行為の救済命令
プレカリアートユニオンは法適合組合と認め、DMUの発信を口実にした団交拒否は違法と判断

 プレカリアートユニオンが、東京都労働委員会に不当労働行為救済申立をしていた株式会社クローバーと粟野興産株式会社を被申立人とする2つの事件(どちらも団体交渉拒否)について、3月11日、それぞれ団体交渉に応じることを命じる救済命令(プレカリアートユニオンにとっての勝利命令)が発せられました。クローバー事件の不当労働行為救済申立の代理人は、プレカリアートユニオン顧問の佐々木亮弁護士(旬報法律事務所)です。
デッドロックには当たらないと判断
 労働組合法第2条及び第5条第2項の規定に適合する法適合組合であるということを認める、資格審査決定書も添付されています。
 粟野興産株式会社は、主に解雇問題についての団体交渉を行き詰まりに達したなどとして一方的に団体交渉を拒否していましたが、団体交渉に誠実に応じなければならない、という命令が出されました。
■DMUの主張を口実にした団交拒否
 神奈川県平塚市に本社がある株式会社クローバー(株式会社サン・ライフホールディングス傘下)は、DMU(結成当初、デモクラティック・ユニオン)による、インターネット上の「(プレカリアートユニオンは)大会が不存在で、代表者を欠き、法外組合である」と主張し、執行委員長の清水には代表権がない、であるとか、代議員選挙が行われておらず組合規約に基づく大会は不存在である、といった書き込みなどを口実に、プレカリアートユニオンとの団体交渉を拒否しました。
 その結果、静岡県沼津市の介護事業所(プレカリアートユニオンがほぼ全員を組織)で働くパート職員への賞与の支給、正職員を含めた未払い賃金の支払いを求めて、組合員23人が原告となって、2020年2月、株式会社クローバーを静岡地方裁判所沼津支部に提訴するに至りました(代理人は、佐々木亮弁護士、梅田和尊弁護士、小野山静香弁護士。ともに旬報法律事務所)。
■法適合組合と判断、団交拒否を認めず
 東京都労働委員会は、まず、プレカリアートユニオンについて、資格審査の結果、労働組合法第2条及び第5条違反は存在せず、法適合組合と認められる、と判断しました。さらに、会社の従業員でない一部の組合員が、組合の大会運営手続きに異を唱えていたとしても、また仮に組合の大会運営手続き違反は事実であったとしても、組合が追認する余地は残されていることからすると、会社が組合と団体交渉を開催したり、36協定を締結することに具体的な支障が生じる状況にあったとまでいうことができない、とも判断。DMUに関わるプレカリアートユニオンの元組合員らによる組合大会決議の不存在確認等の訴訟について、訴訟告知を受けたことも団体交渉を拒否する理由にはならない、としました。
 それどころか、会社が組合の内部運営について具体的な説明を求めた上、ネット上の書き込みが事実であると解し、組合は36協定の締結主体にはならないなどと主張して組合の内部運営に立ち入った、ということが、組合の自治に介入しており、支配介入にあたる、とも判断しました。これらを踏まえて、東京都労働委員会は、株式会社クローバーに、プレカリアートユニオンが申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならないと命じただけでなく、組合が団体交渉を申し入れたときは、組合が大会開催手続きなど組合の内部運営について具体的に説明しないことを理由に拒否してはならない、とも命じました。
■介護労働者の待遇改善、非正規の格差是正
 プレカリアートユニオンは、改めて、株式会社クローバー、粟野興産株式会社に団体交渉を申し入れ、誠実に団体交渉を行い、労組紛争を解決するよう求めていきます。株式会社クローバーに対しては、介護労働者の待遇改善、正規・非正規労働者との待遇の不合理な格差是正を求め、労働契約法20条違反の賞与不支給問題などを議題とした春闘に取り組みます。クローバーと粟野興産に対して、プレカリアートユニオンとの団体交渉に誠実に応じて労使紛争を解決するよう、ぜひ、ご意見をお寄せください。

※以下、東京都労働委員会ウェブサイトより
クローバー事件
https://www.toroui.metro.tokyo.lg.jp/image/2021/meirei1-44.html
1 当 事 者
申 立 人  プレカリアートユニオン(東京都新宿区)
被申立人 株式会社クローバー(神奈川県平塚市
2 争 点
会社が、平成31年4月17日付け、25日付け及び令和元年5月1日付けの団体交渉申入れに対し、大会開催手続など組合の内部運営についての具体的な説明を求め、その説明がないことを理由に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉の拒否及び支配介入に当たるか否か。
3 命令の概要<全部救済>
(1) 組合の資格について
当委員会による組合の資格審査の結果、組合には労働組合法(労組法)第2条及び第5条第2項違反は存在せず、法適合組合と認められる。
(2) 団体交渉拒否について
会社は、労組法第2条の自主性及び同法第5条第2項の民主性の点で組合の法適合性並びに執行委員長の代表者としての資格に疑義を示して代議員の選出手続などについて具体的な説明を求めているが、会社が問題視する組合の自主性や民主性に関する事項は組合の内部運営に係る事柄であるから、団体交渉を拒否する理由にはならない。
(3) 支配介入について
団体交渉の開催自体を否定すべき現実かつ具体的な事情があったとまでは認められないにもかかわらず、組合の内部運営に立ち入った会社の対応は、本来使用者が立ち入るべきではない組合の自治に介入しているものといわざるを得ず、組合の自主的な組織運営・活動に介入し、組合の代表者資格を否定することにより組合を弱体化させる行為にほかならない。
(4) 以上のとおり、会社が上記2の団体交渉に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉の拒否に当たるとともに、組合の組織運営に対する支配介入にも該当する。
(5) 会社は、上記2の団体交渉に応じること、組合が大会開催手続など組合の内部運営について具体的に説明しないことを理由に団体交渉を拒否しないこと。

粟野興産事件
https://www.toroui.metro.tokyo.lg.jp/image/2021/meirei31-25.html
1 当事者 
申立人  プレカリアートユニオン(東京都新宿区)
被申立人 粟野興産株式会社(栃木県鹿沼市
2 争 点
組合が平成31年3月4日付けで申し入れた第2回団体交渉に会社が応じなかったことが、正当な理由のない団体交渉拒否及び組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。
3 命令の概要 <一部救済>
(1) 第1回団体交渉において、組合がXの解雇理由の一つである勤務態度について具体的な事実を聞きたいと求めたのに対して、会社は、過去の裁判の書面にまとめてあるのでそれを読んで欲しいなどと述べるにとどまり、具体的に説明をしておらず、相応の説明をしていたと評価することはできないといわざるを得ない。
  加えて、解雇について具体的な問題の解決に向けた協議に入った形跡はなく、交渉が行き詰まりに達したということはできず、今後交渉を継続する余地が残されていたとみるのが相当である。
第2回団体交渉申入書の議題の中には、会社が第1回団体交渉において相応の説明を行っているものや、議題とすることが適切とはいい難いものもあるが、解雇理由に関連する議題もあり、今後の交渉の余地がないとまではいえない。
また、組合の情宣活動に必ずしも適当とはいえないところがあったとしても、団体交渉の開催に支障が生じるような事情であったとまではいえない。そして、第1回団体交渉から第2回団体交渉の申入れまでに約10か月間の期間があったとしても、その間、訴訟手続等労使間のやり取りは行われていたのであり、組合の第2回団体交渉申入れが時機に遅れたものであるということはできない。
したがって、会社が第2回団体交渉に応じなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たる。
(2) 会社が第2回団体交渉に応じなかったことは正当な理由のない団体交渉拒否に当たるが、第1回団体交渉において会社が一定の説明を行っていたと認め
られることなども考慮すると、会社が団体交渉に応じなかったことが組合の弱体化を企図した支配介入にも当たるとまではいえない。

www.toroui.metro.tokyo.lg.jp

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