プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

スワロートラック求人詐欺裁判勝利和解!原告からのご報告

2016年9月15日、とうとうこの日がきた。
思えば2015年7月29日の金曜日に「求人詐欺裁判」として提訴して1年ちょっと。提訴した当時は会社に対して裁判を起こすという、企業からしてみれば「反逆者」であって自分自身もこれからどういうことが起きるか余計な想像をして不安だらけだった。
私がこの「スワロートラック」に来たのはハローワークの求人票が高待遇だったのが大きかった。もっとも殆どの転職者がなるべく安定した生活を確保したいがためにハローワークのパソコンとにらみ合っていて、私もその一人でした。
「その」求人票は「基本給が28万から35万」、「週休2日制・毎週」、「残業月平均30時間」と書かれていた。運送業でこの条件を見つけることはなかなか難しい。30時間しか残業しないのに最低28万の基本給である。しかも週休2日。私はその前に面接を受けた中距離の大型路線の仕事を行なう会社を断って「好条件」の企業へ行きました。
しかし、面接をし、合格を電話で告げられ、来社当日はいきなり助手として働かされ、雇用契約書を見せられた勤務2日目にそれは起きました。
内容は短期雇用契約書として「休日・日曜」、「賃金・23万」、「基本給・地域の最低賃金×所定労働時間8時間」。残業は口頭で告げられ大体12時間位は働くことになると……はっ?どういうこと……。

【不安からの脱出】
初めは求人票裁判という自らが提訴した「題」に苦しめられました。演説をしていてもどこかに、自分の中で理解していなかったことと雇用契約書にサインをしてしまったことで罪の意識があり眠れない日々が続きました。「負けるかも」と。
裁判中は不安だらけでそれを払拭するためと休日が少なく組合全体で争議ができないので一人で組合から借りた拡声器を持ち横断幕を掲げて駅や自分の会社の前、他の群馬、栃木、茨城、千葉、神奈川、東京の営業所、取引先等で演説やティッシュ配りをしました。とにかく良い方向に結果が出るようにと当該者としてやれることをしてきました。
不安の中悶々としている時に今年の1月に20歳の青年が長時間労働によって事故死してそれが求人票の虚偽が原因だとして訴えた記事が出ていました。私はその時にこの国には何十人・何千人という同じ嘘の求人票で今も仕事に従事している人がいるのではないかと思いました。それを思った時に「この人たちのためにも今闘っている俺が不安に思っていたらいけないだろう」と感じ始めました。また、「田口運送だって就業規則に書かれていてもおかしいと訴えているし、アリさんだってサインはしても弁償金を返せと争っているし、別にサインしてても何にも問題ないだろう」と思えるようにもなりこの瞬間から何か吹っ切れた感じになっていきました。
仮に裁判で最後まで闘って負けても最高裁の人に判断されたら納得できます。それは国の現在の「考え・限界」だからです。

【「小市民」だからこそできる】
私には学歴もなく、何かの地位があるわけでもなく、特別何かに秀でているわけでもない本当の「小市民」。でもその小市民が勇気を持って裁判で企業と闘い、そして裁判に勝ったらどれだけの人たちに勇気と希望を与えることができるか?
もし自分が地位もあり学もあり、立派な人だったら良い結果が出ても「あの人だから勝てたんだよ」、「あの人とは違うから自分には無理」と思われて中々私たちのような人は声をあげにくいのではないか。実際にそういう考えで我慢して働いている人が多いのではないか。そういったことを考えるようになったのもこの頃でした。「格好悪い終わり方でも良いからとにかく最後まで闘う」

【そして勝利和解】
和解はあっけないものでした。印鑑を持ってきていた私は署名もなく和解条件を読み上げるだけの結末に少し戸惑っていました。内容は今までの雇用条件とは違うものに代わっていて事実上の「勝利和解」。本当にあっけなかったので16時間配送で働いた後にすぐ裁判所へ向かったその疲労と睡魔を喜びに変えるだけの気持ちにはなりませんでした。
(これも少しずつ感じるものなのでしょうか?9月18日未だ気持ち沸き立たず)
この判決までに多くの人の力を借りてここまで来ることができました。
仲間の組合の皆さん、清水委員長を始め争議の方法を教えてくれた梅木副委員長、私の団体交渉にも来ていただき助言してくれた中野書記長、その他組合員の皆さん、裁判で私みたいな人を一生懸命弁護してくれた日本労働弁護団の鴨田先生、佐々木先生、そしてマスコミの方々、駅や様々な所で声を掛けてくれた人たち、ポケットティシュやチラシを受け取ってくれた人たち、本当に多くの人たちに支えられてこの結果にたどりつけたと思います。この場を借りてお礼をさせていただきます。本当に色々有難うございました。
これからは少ない休みのなか組合で自分と同じ「小市民」を救うことに貢献していきたいと思います。
自分の人生の「後編」はこれからです。(佐々木和義)

提訴と記者会見の様子→http://d.hatena.ne.jp/kumonoami/20150729/1438173782
原告の思いのこもった意見陳述→http://d.hatena.ne.jp/kumonoami/20150927/1443342302

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