プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

非正規雇用、女性など立場の弱い労働者にしわ寄せ。裁判は向かないコロナ関連の労働問題も解決する力とは

清水の駆け込み寺から砦へ 4

正規雇用、女性など立場の弱い労働者にしわ寄せ
裁判は向かないコロナ関連の労働問題も解決する力とは

 新型コロナウイルス感染拡大を受けて、プレカリアートユニオンには、コロナ便乗解雇、会社の都合で一時帰休中の休業手当が通常の賃金の半額程度しか払われなかった、子どもの小学校の休校によって仕事を休まざるを得なかった日が無給になってしまった、会社都合の休業を命じられた日について正社員には全額賃金補償される一方で非常勤には6割しか賃金補償がされなかった、といった相談が寄せられ、それぞれ、団体交渉や非暴力の直接行動も行いながら、解決をしています。
 ■裁判では解決が困難な相談にも対応
 プレカリアートユニオンは、誰でも1人から加入できる労働組合です。労働組合は働く人どうしの助け合いの組織です。
 日本では、会社ごとに作る企業内組合が数としては主流ですが、企業内組合は、正社員が中心であったり、同じ会社で働く人でもパートやアルバイト、派遣社員などの非正規雇用は加入できないということがあります。また、会社がなくなると組合もなくなってしまうため、組合員1人ひとりの利益より、会社の利益を重んじてしまう、労使協調御用組合といわれたり、会社の人事部の一部門のようなふるまいをしてしまう企業内組合もあります。まとまって労働条件の向上などの交渉がしやすい、という面がある一方で、組合員1人ひとりのリストラやハラスメントなどの問題については、企業内組合は団体交渉をしない、ということもあります。
 ユニオン、合同労組とよばれる個人加盟の労働組合は、中小企業など労働組合がない職場で働いている人、企業内組合に加入できない非正規雇用の人、企業内組合が自分の個別の労働問題についてとりあってくれない、という人などが、助け合って、それぞれが職場で直面した問題を解決したり、職場や地域ごとに支部を作って労働条件を維持向上したり、雇用を安定化させる、ということに取り組んでいます。
 個人加盟の労働組合は、今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた労働相談のように、裁判で解決するには費用対効果の面で困難な、立場の弱い労働者からの個別の労働相談の受け皿にもなっています。
 ■4月の給料がゼロ円になってしまう
 北関東に本社があり、東京都内に事業所のあるA社で働く、シングルマザーの非正規雇用の労働者から、お子さんの小学校の休校で仕事を休まざるを得なかったため、2020年3月は全く出勤できず、4月の給料日に支給される給料が0円になってしまう、という相談が寄せられました。
 職場は、大手携帯電話会社の修理・検品作業を行っている会社で、同じ職場で9年も働いているのですが、行う仕事や職場は変わらないのに、業務を委託する会社が、2019年11月に変わり、ご本人も新たに仕事を委託した会社の契約社員となりました。そのため、本来フルタイムで半年働いていれば、1年に10日間は付与される有給休暇がまだ付与されていませんでした。このままでは、4月が無収入になってしまうため、まずは生活保護の申請支援をしながら、会社に団体交渉を申し入れました。
 会社側の交渉担当者が組合事務所に来て、4時間、団体交渉を開催しました。その結果、会社は、子どもの通う小学校などの休校で仕事を休んだ労働者に有給の休暇として対応した場合に国がお金を支払う、雇用調整助成金を使い、有給の特別休暇として対応することを確約。会社都合で休業させた日についても、当初は賃金の6割だけ補償すると主張していたところを10割全額補償すると回答しました。団体交渉の申し入れにあたっては、従来の職場のハラスメント問題の解決についても要求し、対応がとられることになりました。1回の団体交渉で、差し迫った問題はほぼ解決することができました。
 ■鶴見大学キャリア支援課の非常勤差別
 鶴見大学のキャリア支援課でキャリアコンサルタントとして非常勤で働く、入職4年の労働者から、保育園の登園自粛要請による休業について、無給という扱いをされてしまう、という相談がありました。
 キャリア支援課は、学生の就職支援、職業生活を送る上でのサポートを行う学生にとっても大事な課です。大学は、年次有給休暇をとればよいという対応でした。しかし、お子さんが小さいので、ここで有給休暇を使い果たしてしまうと、この後、お子さんの急な病気などで休もうとすると欠勤になってしまいます。通常の有給休暇とは別に特別休暇を取得したいという事情がありました。
 また、大学の方針で新型コロナウイルス感染対策として、職員に対して、一定期間に8日間勤務免除日を設けていました。この勤務免除日という名前の会社都合の休業を命じた日について、大学の専任職員には賃金を10割補償する一方で、非常勤には6割しか払わないという差別を行っていました。
 プレカリアートユニオンが団体交渉を申し入れたところ、保育園の登園自粛要請により休んだ日については、有給の特別休暇とし、賃金を全額支給することになりました。8日間の使用者の都合の休業については、大学側は、労働基準法で賃金の6割を払えばいいということになっていると主張していましたが、使用者の都合による休業で賃金に格差を設けるのは合理性がないと説明したところ、非常勤職員にも賃金補償が10割行われることになりました。
 ■なぜ、団体交渉で解決できるのか
 これらの問題を裁判によらずに団体交渉で解決できるのは、もちろん労働組合には団体交渉をする権利があるからですが、それだけではなく、労働組合に権利として認められたストライキなどの争議行為の付随行為や組合活動としての大衆行動と呼ばれる、事実を分かりやすく書いたチラシの配布、街宣(街頭宣伝)行動、社前での抗議行動、親会社や主要顧客への要請、記者会見をはじめとするメディアへの働きかけ、インターネット上の情報発信などに取り組む力を、私たちプレカリアートユニオンは持っており、職場内で組合員の人数に限りがあって力関係で不利だったり、会社側が団体交渉を拒否したり誠実に団体交渉を行わないなど、どうしても要求の実現や問題解決が難しい場合、これらの合法的な実力行使ができるから、といえます。正当な争議行為や組合活動は、民事上も刑事上も免責されます。
 しかし、いきなり争議行為や大衆行動を行うわけではなく、書面による団体交渉の申し入れを行い、言葉を尽くして説明し、会社側と信頼関係を築きながら要求を実現することを目指します。それでは解決できず、やむを得ない場合は、創意工夫をしながら、組合側や組合員の有利な点、会社側の弱点を考えて有効な方法で大衆行動に取り組みます。
 闘わずして勝てるのは、必要不可欠な場合は闘っているからこそ、闘っている組合の仲間がいるからこそ、です。
 正当な組合活動については、民事上も刑事上も免責されますが、それでもあえて、組合や組合員に対する威嚇や嫌がらせとして、会社側が、組合や当該組合員を相手取って損害賠償を請求する裁判などを起こす場合があります。プレカリアートユニオンでは、組合が組合活動として取り組んだ争議や付随活動、大衆行動について損害賠償請求訴訟を起こされた場合は、組合が裁判費用を全て負担して裁判の対応を行っています。ちなみに会社側から提起された損害賠償請求訴訟の場で、当該組合員の労働問題についての全体的な和解が実現することもしばしばあります。
 会社側につけいる隙を与えないためにも、また、警察の介入を招かないためにも、争議行為、付随行為、大衆行動の現場では、統制のとれた行動をしてください。

 ■闘う力を高める取り組み
 組合の闘う力を高めるための取り組みとして、争議団会議を毎月月1回(第2土曜日14時、組合事務所)開催し、交渉先へのアクション(直接行動)のスケジュールを組み、街宣車を活用しながら、週1~3回のペースでプレカリアートユニオン独自のアクションを行っています。加えて、インターネットの動画投稿サイトのYoutube、インターネット署名のChange.org、SNSを活用して、街宣と両輪として取り組むことで、個別案件の解決を早め、毎月3件から8件の解決を実現しています。
 また、争議団会議の後(第2土曜日16時)、助け合う気持ちを高めて団結を強めるための場として、組合事務所などでユニオンカフェ&バーを開催しています。交渉先へのアクション(直接行動)への参加者を増やしています。
 9月に開催する、9回目の定期大会に向けて、より多くの組合員に、「労働組合は助け合う仲間の一員になる場。一時的に利用するところではない」、「1人はみんなのために、みんなは1人のために」という趣旨を理解していただきながら、これらの趣旨を踏まえて活動できる態勢を作っていきます。
 清水直子(執行委員長)

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