プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

正規/非正規にかかわらず、働きながら労働条件をよくする方法

職場で仲間をつくろう! 職場に労働組合を作ろう! 正規/非正規にかかわらず、働きながら労働条件をよくする方法

連載2 労働組合にたどりつくまで

大平正巳

ケース設定
名前:飯田和彦(仮名)
年齢:36歳
性別:男性
職業:トラック運転手(フルタイムの配送アルバイト)
その他:ひとり暮らし。専門学校卒業

職場の待遇が不満だ
 飯田和彦さん(36歳)は、専門学校卒業後、20代から30代前半までアルバイトを中心にいくつもの職場を渡り歩いてきた。3年前に無料求人誌で見つけた現在の運送会社にアルバイトとして就職。時給がまずまずであったのと、会社も大手スーパーの配送業務で成長していることが入社の動機だった。
 そろそろ定まった仕事をしたいと考えていたところ、仕事の上司から言われた「がんばっていればいずれは、社員になれるかもよ」との言葉を信じ、残業代が出ないなどの問題も気になったが3年間仕事に励んできた。
 しかし、最近、時給はさっぱり上がらないし、正社員、という話もちっとも話題にならない。周囲のアルバイトも自分たちがどうなるか不安を語っているなかで、どうにかしなければ、と思うようになってきた。

職場の仲間に聞いてみよう
 思い切って、同僚に自分の悩みを相談してみた。
 飯田さんは、普段よく話をする古株のアルバイトドライバーの木村さんに、なぜ自分の時給は上がらないのか、法律を調べると雇用保険社会保険も掛けてもらえるようだけど適用してもらっていないのはなぜか、残業代が出ないことにみんなは不満を持っていないのか、と相談してみた。木村さんからの話は想像していたが、ショックな内容だった。
「この会社で、アルバイトから社員になる例はあまり聞いたことがない」「アルバイトに雇用保険社会保険を加入させた話しは聞いたこといがないし、残業代なんて社員も貰ってないよ」、「アルバイトから社員になるには会社に気に入られたら可能性があるかもね。でも、それは例外中の例外だよ」と説明された。どうやら、会社は経費の安い非正規労働者を増やして利益率を上げる腹づもりのようだ。
 さらに思い切って、飯田さんは、上司に相談してみた。
 同僚の話を聞いた飯田さんは、諦め切れずに考えた結果、上司に相談をしてみることにした。直属の上司で班長でもある佐藤さんは気さくな人物で飯田さんも日常的に会話する関係だったからだ。
 ある日、仕事帰りに佐藤さんを呼び止め自分の疑問をぶつけてみた。佐藤さんはまじめに話を聞いてくれ、時期を見て管理に聞いてみるよと返事をしてくれた。が、一か月しても何の音沙汰もない。佐藤さんも、「時期を待て」と言うばかり。
 そこで、飯田さんは思い切って支店長に質問してみた。すると、個人面談を行ってくれるという。飯田さんの胸は期待に膨らんだ。

組合オルガナイザーからのアドバイス
 飯田さんが思い切って会社の上司に相談した勇気は称賛に値します。ただ、相談したことで飯田さんに会社がどんな仕打ちをしてくるかわかりません。私たちからのアドバイスは、面談に臨むなら会話を録音することをお勧めします。録音内容は会社が違法行為にどのような認識を持っているかなど、後々役に立ちます。ICレコーダーは安い物なら三千円程度から買えます。面談に入る前からスイッチを入れて、胸ポケットなど目立たず音が拾いやすい場所にしまって、録音しましょう。

将来を考えるなら他の仕事をと言われ
 飯田さんは、次に、支店長の面談を受けてみました。
 しかし、結果は、期待を打ち砕くものでした。支店長は開口一番「会社はアルバイトを会社の基幹戦力とはみなしていないし、社員に登用する方針もない」「法律がどうなっていようと雇用保険社会保険はアルバイトには適用しない方針だし、そもそも予算も組んでいない」「同じ理由で残業代もない」とのことでした。
 さらに支店長は「もし、飯田さんの将来を考えるなら、他に仕事を探した方がよい」と言い放ちました。とても、昇給なんて話ができる状況ではないと感じた飯田さんは「わかりました」と言って引きさがるしかありませんでした。
 流石に、気がとがめたのか退出する飯田さんに店長は「頑張ってくれれば、いつか時給は上がるかもしれないよ」と言ってくれましたが、その言葉は飯田さんには空しく聞こえるだけでした。

組合オルグからのアドバイス
 会社は飯田さんが一人であることに油断してか、重大なミスを犯しました。雇用保険社会保険は要件も満たせば強制適用です。残業代未払いは労働基準法違反です。録音ができていれば後日の交渉や行政深刻に役立つ内容です。

待遇改善には労働組合をつくるといいらしい
 家に帰った飯田さんでしたが、どうにも納得できないまま今後の人生について思いを巡らせていました。自分がどう頑張っても会社にはかなわない。新しく仕事を探すしかないのか。また、バイトを渡り歩くのかと。しかし、考えているうちに怒りが沸いてきました。
「会社は法律がどうあっても」と話している。でも法律違反が当然というのはおかしい。でも、どうして良いのかわからない。労働基準監督署に行けば良いのか。弁護士に相談すればよいのか。
 悩んだ飯田さんはインターネットに悩みのキーワードを打ち込んでみました。「労働相談 アルバイト 社会保険 雇用保険 残業代未払い」。すると、社会保険労務士のサイトや労働基準監督署の案内にまじり労働組合のサイトがいくつも出てきました。
 労働組合を通じて交渉すると、働きながら待遇改善などの飯田さんが抱える問題の解決が図れるらしいということが分かりました。

組合オルグからのアドバイス
 インターネットには情報が溢れています。問題解決に向けてどのような方法を使うかの選択は皆さん次第です。ただ、法律家によらない自主交渉による解決は労働組合による話し合いが、唯一法的保護を受けられる方法です。

労働組合にメールで相談してみた
 飯田さんのイメージでは労働組合に入ると会社に睨まれるというものでしたが、自分はもう失うものもあまりないと考え、半信半疑ながら、飯田さんは、ウェブサイトを見て、家から近く、アルバイトの労働問題の対応に慣れていそうな労働組合を選んで悩みを綴ったメールを送ってみました。
 すると、労働組合からメールが返ってきました。担当の鈴木さんというからのメールの内容は、飯田さんの疑問に回答するもので「詳しいことは会って話をしましょう」という文面でした。飯田さんは正直不安も感じましたが、思い切って労働組合を訪問することに決め、鈴木さんとメールのやり取りを行い面談の日時と場所を決めました。

組合オルグからのアドバイス
 メールで相談する時は、相談の趣旨を極力明確にすると話が進みやすいものです。また、給与制度(時給額)・雇用形態・労働時間・自分が求める解決方向も書くと、読み手としては全体像を把握しやすくなります。では、面談には会社から受け取った明細・契約資料などすべて持参して臨んでください。
(つづく)