プレカリアートユニオンブログ

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オレオレ詐欺事件の被害に共感を得られないのはなぜか 派遣法改悪は治安の悪化を招く!

オレオレ詐欺事件の被害に共感を得られない背景に
格差の拡大・固定化
派遣法改悪は治安の悪化を招く!

 毎日のようにオレオレ詐欺事件の被害が伝えられる。あるテレビ番組では、何度も特集が組まれるという異常事態だ。しかし、オレオレ詐欺は一向になくなる気配がない。何故なんだろうかと、加害者側に近い年齢の人と被害者側に近い人たちに聞いてみた。

■「頑張っても報われないし」
 加害者側に近い年齢の人から聞こえてくるのは、単にお金、収入。「お金があればなんでもできますよね」、「夜の街を高級外車を乗り回しキャバクラで豪遊したいですよ。いいなぁと思いますよ」など、捕まらないなら今すぐやりたい、という声がとても多かった。頑張っても報われないし、夢も希望もない、というような声がとても多かった。
 意外だったのは、被害者側に近い年齢の人たちの意見だった。想像もしていなかった答えが帰ってきた。「お金がいっぱいあるから(被害に遭う)。いいじゃない。俺は、家はないから」「結構持ってるね。いいなぁ」。ほとんどが、妬みや羨みで、かわいそうに、という声は一人としてなかった。これでは、犯罪の撲滅に共感が得られるはずはない。
■夫婦ともに派遣社員で「将来に不安」
 今年に入ってから、職場にいた正社員が派遣社員にがらりと変わっていた。いよいよここまで迫ってきたな、という感じがした。その派遣社員の人は、夫婦二人とも派遣で働いているそうで、子どもも一人いる。どちらも給料が安く、働いても働いてもお金が足らず、これから先、子どもの学費や病気になったときの備えがないと頭を痛めていた。子どもには、派遣社員には絶対なるな、と言い聞かせているそうだ。
 派遣社員は、正社員がやりたくないことを命令されるだけでなく、気に入ってもらえないと契約更新がされないため、「社員さん」などとご機嫌をうかがうような気使いを余儀なくされる、とこぼしていた。その派遣社員のなかでは、このような環境に対して激しく恨みや妬みを感じている者が多くいる、とも聞いた。
■雇用破壊は社会の基盤を破壊する
 給料が安いために、派遣社員オレオレ詐欺の片棒を担ぐような犯罪に手を染めたり、簡単にお金を得ようとする犯罪を逮捕覚悟でやって、実際に逮捕されるというような報道も見聞きするようになった。このまま派遣社員をはじめ非正規で働く人が増えると、日本はどうなるのだろうか。
 ただでさえ、妬みが多いこの社会のなか、ますます治安が悪くなるのではないだろうか。他人を思いやれずに、妬んだり羨んだりするような状況を減らすことが、皆が安心して暮らせる社会を作ることになるのではないか、と思う。
 今、派遣法を改悪して、派遣労働者が増大したらどうなるか、誰もが想像できるはずだ。この社会の妬みを減らすためにも、格差を是正しなければならない。
■梅木隆弘(副執行委員長/田口運送・都流通商会支部書記長)