プレカリアートユニオンブログ

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「一生派遣」「使い捨て」が広がる!労働者派遣法の大改悪を食い止めよう 2月18日・派遣ネットが院内学習会開催

 労働者派遣法の大改悪が行われようとしています。
 本日、2014年3月11日、労働者派遣法改正案が閣議決定されました。
 このままでは、3年ごとに派遣労働者を入れ替えさえすれば、派遣先の会社はいつまでも派遣を使い続けられるようになり、今以上に正社員が派遣と置き換えられる内容になっています(現在の労働者派遣法では、専門的とされる26業務+2業務以外の業務では原則1年、最長3年という期間制限があります。期間制限を超えて派遣労働者を受け入れた場合、派遣先には直接雇用の申し込み義務が生じます)。
 派遣労働者の権利向上と派遣事業の適正な運営を目指すNPO法人派遣労働ネットワーク(中野麻美理事長)は、ますます派遣先が労働者を使い捨てにするシステムが拡大し、1999年の派遣業務原則自由化以上に正社員との入れ替えが進むという懸念を表明しています。その派遣労働ネットワークが、改正派遣法の国会審議をにらんで2月18日、雇用の安定、派遣労働者の差別待遇の禁止のために何を実現すべきなのか、参議院議員会館で「派遣法改正院内学習会」を開催。民主党社民党などの国会議員、ジャーナリスト、労働組合関係者など93人が参加しました。
 参加した衆議院議員民主党)の山井和則さんは、「前日、予算委員会安倍晋三総理に、(派遣法改正によって)派遣労働者を増やすべきと考えているのか、と質問したところ、安部総理は、派遣を増やそうとはまったく考えてない、という驚きの答弁をしました。それなら今提案されている派遣法の改正はおかしい。総理大臣が、派遣を増やすことはまったく考えていない、ということだから、今後提出される改正案も、派遣労働者が増えるような内容であってはならない。派遣労働者を保護する形にするように、みなさんと一緒に頑張っていきたいと思います」と発言しました。

 参議院議員民主党)の津田弥太郎さんは、「政府が進めようとしているのは、雇用環境を全面的に変えること。正規も非正規も必要な時に必要なだけ、安く使える労働者をできるだけ多く作っていきたいという労働環境を、雇用の普通の姿にしようとしています。その大転換の一環として、今回の労働者派遣法の改悪がある。次は、労働契約法の改悪、その次は、ホワイトカラーエグゼンプション(残業代不払い法)が待っている。そういう流れにストップをかたい」と発言しました。
 衆議院議員民主党)の中根やすひろさんは、「今回の派遣法改正は、改正しなければならない、立法事実があったのか。前回の改正は、派遣村を踏まえて(派遣労働者保護のために)どうしても変えようと、私たちは取り組んだが、今回は正当な理由があるのか。まったく不純な動機で改悪を行おうとしている。常用代替の防止という大原則が崩れようとしている。ここをなんとか食い止めなければならない。今日集まった全ての国会議員と力を合わせて皆様方の声を法律制度に反映させたい」と強調しました。
 参議院議員民主党)の相原久美子さん、衆議院議員民主党階猛さん、参議院議員民主党)の石橋通宏さんも発言し、参議院議員民主党)の徳永エリさんは、自らの経験を踏まえて、こう発言しました。
「テレビの世界でリポーターとして仕事をしていましたが、私は1回も正社員になったことがありません。1本仕事をしていくらという契約という形でしたから、具合が悪くなって仕事を休めば収入がない。番組が打ち切りになったら失業状態。なんの保証もないなかで、仕事をしてきました。でも、私たちは頑張ったら頑張ったことを評価されて次の仕事につながってきました。契約も口約束でしたが、少しずつギャラも上がっていました。しかし、あるときから、どんどん下げられるようになりました。キャリアも実力も関係なく、安く使えれば誰でもいいというような環境になってきて、約束はどんどん破られ、首を切られるかもしれないという恐ろしさから、文句を言うこともできない。言いなりにならざるを得ないという状況でした。今度の労働者派遣法の改正によって、そういう状況が広がっていく。キャリアアップなんてきれいな言葉を使ってますが、現実はそんなものではないということは、経験上よくわかっています。そのことをしっかりと訴えながら、みなさんと一緒に、安心して働ける環境を作れるように頑張ります」。
■常用代替(社員との入れ替え)防止の枠組み取り除く
 派遣労働ネットワークの理事長で弁護士の中野麻美さんは、労働者派遣とは「派遣元(派遣会社)が雇用する労働者を派遣先で使用する、指揮命令関係は成立するけれども、雇用しない」というポイントを指摘した上で、現在提案されようとしている派遣法改悪について次のように解説しました。
「労働者派遣法には致命的な欠陥のうちの一つは、労働関係に商取引を含んでいるため、労働の買いたたきが容易な構造であるのに、これに対する特別な法的な保護が不十分なものに終わったということです。そのため、商取引化された労働が、社会に蔓延することになりました。商取引化された労働をひと言でいうと、働いても働いても暮らしは楽にならないどころか貧しくなるだけ、キャリアを重ねても賃金は下落していくだけという働き方です」「民主党政権時に法改正が行われ、労働者保護法としての性格が備わる一歩を踏み出しましたが、今回政権を奪取した安倍政権によって、労働者派遣法の抜本見直しということがテーマになり、業務と期間による、その客観的な組み合わせによって常用代替を防止していくという枠組みを取り除いて、人単位で規制していくという方向を打ち出したわけです。私たちは、直接・無期限が雇用の原則だという考え方を採ってきましたが、今回の法改正からは、その原則は採らないというメッセージが伝わってきます」。
 衆議院議員みどりの風)の阿部知子さんは、「私は今、原発回帰に強く反対しています。時を同じくして派遣をもっと盛んにすようという安部政権のやり方というのは、社会を壊し人間を壊し、何も得るものなく未来を壊していくと思いますから、きちんと反対の論陣を張ってみなさんと一緒に闘っていきたい」と発言しました。
 参議院議員社民党党首)の吉田忠智さんは、「安倍総理は、日本を世界一企業が活動しやすい国にすると表明していて、予算、税制改正は、企業支援のオンパレードです。労働者派遣法の改悪についても、企業側、経営者側の意向に沿って、いかに使い勝手のいいものにしていくかという基本が貫かれている問題点が多いもの」と指摘しました。
 労働政策審議会建議と連合の対応について、連合雇用法制対策局局長の伊藤彰久さんが説明し、「労働組合だけの力では、派遣法を含めた労働者保護ルール改悪に対抗するのは十分ではありません。世論に訴えようと労働政策審議会の時は厚生労働省の前で激励集会や大集会、デモ行進、新聞広告など、できる限りのことをやってきたつもりです。これから法案が提出される段階では、国会を取り囲むように世論を動かすしかないと思っています」と決意を表明しました。
■時給が10年弱で500円減の調査結果も
 派遣ユニオン書記長の関根秀一郎さんは、派遣労働ネットワークが、2年〜3年おきに行ってきた、派遣労働者の実態調査の結果について、「1994年の調査では1704円だった時給が10年弱の間に下がり続け、2013年の調査では1179円と、500円以上下落した」と説明しました。
 衆議院議員民主党)の柚木道義さんは、「(現在提案されようとしている派遣法が通ってしまえば)不安定雇用、低賃金雇用が拡大し、所得格差も拡大し、少子化財政赤字に拍車をかける」と発言しました。
 会場からも、3ヶ月契約を更新して7年間働き続けてきた挙げ句に派遣切りされた東京ユニオン組合員の酒井桂さんは、「派遣制度は労働を商品として人として見ない、大変危険な身分制度です。今回の改正案で、私のような派遣労働者、雇い止めがなくなるのでしょうか。派遣労働者にとってのメリットは何ひとつありません」と訴えました。
 派遣ユニオン組合員で福島第一原発事故後の収束作業に従事した林哲哉さんが、福島第一原発で働く作業員は、重層的な下請け構造のなかで、元請けが1割、請負・派遣労働者が9割だと説明。派遣ユニオンの執行委員長で、日雇い派遣で働いている藤野雅巳さんも、「今、大工見習いと引越し屋で働き、合間に日雇い派遣で働いて生計を立てています。ある週末、私が引っ越し会社で仕事に入れなくて、派遣会社で仕事を探してみるとその会社の全く同じ仕事が入っていました。そのその会社で直接仕事をすると、日給9000円ですが、派遣会社を通すと6650円になっていました」と語りました。
ハローワークのまともな求人に「営業をかける」派遣会社
 日本労働弁護団常任幹事の棗一郎さんは、「派遣法の改悪が、正社員の雇用を奪うことになり、労働組合の組織と団結を奪う可能性があるということを訴えて、正社員も非正規も、連合もその他のナショナルセンターもすべての未組織の労働者も手を携えて、民主党社民党、派遣法の改悪に反対していただける国会議員を支えて、みんなでこの派遣法改悪を阻止して廃案に追い込む闘いをやっていきたい」と力強く決意を述べました。
 労働行政に携わる立場から、全労働省労働組合委員長の森崎巌さんが「雇用の安定を図るといますが、必要なときに必要なだけという営業文句で営業活動をしている派遣会社はたくさんあります。処遇改善といっても、ハローワークの求人情報にまともな求人があると、そこに派遣会社が、もっと安い労働者がいると営業をかける。このような仕組みが変わらないままで、なぜ雇用が安定して処遇が改善するのでしょうか」と批判しました。
 全日建運輸連帯労働組合の玖島穂高さんは、「前回の派遣法改正以降の労働組合の運動をなかなか作り上げられず、さまざまな問題点を社会に訴えかけるということができなかった。そのつけが再度政権交代して自民党になって、一気に出てきた」と指摘しました。
 自治労全国一般評議会事務局長の亀崎安弘さんも「派遣のように安価で不安定雇用の労働者が増大することには反対をしなければ」と発言。
 最後に、参議院議員山本太郎さんがこう提起しました。
「僕は、原発と被ばくの問題から感じるところがあって、このような場所にいますが、少しずつ社会を見るなかで、これは労働の問題が解決しないことには世の中何一つよくならないなと気づきました。とにかく生きるだけで精一杯だという人たちが爆発的に増えるということは、社会のことにはほとんど興味を持てないという状況になってしまいます。先輩の議員のお知恵をお借りしながら、みなさんとどうやってこの運動を大きくしていくかを考えていきたいと思います。今日は僕にとって、難しい言葉がたくさん出てきたので、小学校高学年の子でも理解できるような内容にしていけば、もっとたくさんの人たちが合流できるような動きになるのではと思います」。