プレカリアートユニオンブログ

労働組合プレカリアートユニオンのブログ。解決報告や案件の紹介など。

巧妙に隠された差別の構造を鋭く暴き出した1冊。『ひれふせ、女たち ミソジニーの論理』(ケイト・マン著/慶應義塾大学出版会)

巧妙に隠された差別の構造を鋭く暴き出した1冊

『ひれふせ、女たち ミソジニーの論理』(ケイト・マン著/慶應義塾大学出版会)


 ミソジニーという言葉は一般的には「女性嫌悪」、「女性蔑視」のことであると理解されています。『ひれふせ、女たち ミソジニーの論理』は、コーネル大学哲学科准教授であり、倫理・社会・フェミニズム哲学を専門とするケイト・マン氏による1冊です。一般的に浸透している言葉の意味を超えて、ミソジニーという概念を分析哲学的アプローチで再定義し、なぜアメリカ大統領選でドナルド・トランプヒラリー・クリントンをおさえ勝利したのか? なぜ「インセル」による女性の殺人事件が起こるのか? 等について分析を行っています。
■家父長制とセクシズム、ミソジニー有機的関係
 本書は「家父長制」、即ち父、夫を家長として権利を集中させる考え方の理論的裏付けとして、「セクシズム」が用いられていることを解説しています。女性と男性は生物学的にも特徴が異なり、脳の構造も違うので、○○という仕事は男性がするべきという論調や、女性は家事に専念すべきであるといったセクシズム=差別主義的思想が、家父長制の正当性を担保する物語として使われている実態を摘示します。
 一方で家父長制から外れた権利を要求する、男の権威を揺るがしかねない能力を有し、仕事を欲するなどの女性にはミソジニーによる取り締まりや、攻撃が加えられます。ミソジニーとは家父長的価値観を守るための自警団のようなものであるということが解説されています。
 本書のもっとも意義深い点は、このようにして、ほとんどの人が全く別の3概念としてしか認識できていない、3つの概念の関係性を有機的に解説している点にあります。巧妙に隠された差別の構造を鋭く暴き出した1冊です。
 稲葉一良(書記長)

 

【労働相談は】
誰でも1人から加入できる労働組合
プレカリアートユニオン
〒160-0004東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
ユニオン運動センター内
TEL03-6273-0699 FAX03-4335-0971
メール info@precariat-union.or.jp
ウェブサイト https://www.precariat-union.or.jp/
ブログ https://precariatunion.hateblo.jp/
Facebook https://www.facebook.com/precariat.union
twitter https://twitter.com/precariatunion
YouTube https://www.youtube.com/channel/UCAwL8-THt4i8NI5u0y-0FuA/videos

www.keio-up.co.jp

f:id:kumonoami:20211125193339j:plain