プレカリアートユニオンブログ

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企業に殉じ死してなお、その理論の中に縛り付ける、「企業のヤスクニ」システムの解明に挑んだ1冊。 『企業のヤスクニ』(金子毅著/高文研)

企業に殉じ死してなお、その理論の中に縛り付ける
「企業のヤスクニ」システムの解明に挑んだ1冊


『企業のヤスクニ』(金子毅著/高文研)


 「英霊」という言葉があります。主に戦死者のことを敬い使われるこの言葉、死を美化することで兵士達に自己犠牲を強いる役割を担っていた過去は皆さんもご存じの通りだと思います。「英霊」達は靖国神社に祀られ、このような過去の経緯から総理大臣の参拝について世の批判の的になることもしばしばです。
『企業のヤスクニ~「企業戦死」という生き方』は、文化人類学(含、経営人類学)、民俗学を専門とする聖学院大学准教授、東京大学大学院情報学環客員研究員の金子毅氏の著作。社会問題として定着しても減らない過労死・過労自死の構造的問題に付いて分析した本書は、企業が戦略的に労働者を企業の論理によって死に至らしめ、また、死してなお企業の論理の中に取り込むメカニズムの解明に挑んだ1冊です。
■企業理念が戦略的にポエム化され、先鋭化している実態
 本書の第2章では「企業理念のポエム化」というタイトルで、意味が空洞化し掴みどころのない目標に向かいひたすらに終わりのない努力と献身を強いられる戦略的企業システムについて解説しています。
 私は日々様々ないわゆる「ブラック企業」と交渉をしており、これらの多くにポエムの様な社訓・理念があることについては周知での事実でしたが、企業がこのような薄ら寒いポエムをここまで徹底して企業戦略として取り入れ、意図的に労働者を使い潰しているのかと驚嘆しました。
 昨今、周りを見渡せばSDGsのバッジを付けたビジネスマンが急増し薄気味悪さを覚えていましたが、これは現代におけるの「ヤスクニシステム」なのかもしれません。SDGsの内容そのものというより、内容を空洞化させ、経済成長を止めない方便としてのその使われ方が非常に「ヤスクニ」的に見えてきます。
■命と生活を護るために「企業のヤスクニ」からの覚醒を
 さて、唐突に「ヤスクニシステム」という言葉が出てきましたが、著者はこの本のなかで労働者を全体主義的に服従させるメカニズムとして「企業のヤスクニ」システムが作り上げられていること、そのヤスクニシステムから覚醒し過労死・過労自死に立ち向かっていく道を論じています。
 現在の日本の生活者が置かれた窮状は「敗戦」の言葉を以て戦後にも例えられることもありますが、本書を読んで、現在の私たちの社会はいうならば未だ戦時中であり、いつ「お国のために」命を奪われてもおかしくない状態だと認識を改めるに至りました。平和だ豊かだと煽られ、お国のために命を捧げるなんてまっぴらごめんだとは思いませんか。少し穿った見方と言われるかも知れませんが、先述したSDGsの実効性、生活者への負担増、労働者への低賃金、日本社会を「ほしがりません、勝つまでは」が支配しているようにも感じている今日この頃です。
 稲葉一良(書記長)

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