プレカリアートユニオンブログ

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労働者を使い潰す「ブラック企業」問題の本質明らかに。『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(今野晴貴著/青土社) 

労働者を使い潰す「ブラック企業」問題の本質明らかに


『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(今野晴貴著/青土社) 

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 ブラック企業という言葉が一般的に使われるようになって10年余。私たちの労働をとり巻く環境は悪化の一途を辿っています。「賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ」はNPO法人POSSE代表であり、駒澤大学経済学部及び聖学院大学政治経済学部非常勤講師、沖縄大学地域研究所特別研究員、北海道大学公共政策学研究センター上席研究員の今野晴貴氏の著作です。
ブラック企業問題に取り組んできた著者の集大成的1冊
 これまでも今野氏は、ブラック企業に関する著作を精力的に執筆し、社会にその有害性及び労働運動のあるべき姿を提起し続けてきました。本レビューでも「ストライキ2.0」等を紹介しましたが、本書は今野氏が書きためてきた様々な論文を纏め、新たに4章分を書き下ろした全11章からなっています。
 ブラック企業の社会全体に与える問題や、なくならない理由などに始まり、資本主義社会のその先の展望に対する分析へ至る本書を読むことで労働運動のあり方、消費者として、生活者としてのあり方について様々に考えさせられる1冊でした。レビューの内外で、個人的にも今野氏の著作には多く触れてきましたが、本著はまさにその集大成ともいえる内容になっているのではないでしょうか。
■戦略として労働者を使い潰す資本主義社会
 通読して、資本主義は労働者を使い潰すことに始まり、現代までそれが脈々と続いているという流れが鮮明に可視化されました。ブラック企業はその先鋭化したものであり、人を使い潰す労務管理が現代特有のものではなく、資本主義社会における資本側の本能のようなものであるという構造についての理解を深めることができます。
 今日、日本でここまでブラック企業問題が深刻な主な要因の1つに、労働運動が活発に行われず、この使い潰しへの抵抗が極めて限定的にしか成されていないことにはやはり再注目するべきでしょう。
■産別に関する考え方
 産別の労働運動がいかに社会構造に影響を与え労働者の生活をよくするかということについては、権力から凄烈たる弾圧を受けている関西生コン支部の取り組みを見れば明らかです。今野氏は産別、ジョブ型の萌芽を現在の日本社会に見ています。ブラック企業が蔓延し、同業のどこの職場に転職しても劣悪な環境に変化が見られないことで産別の職業意識が醸成されてきているということは今後の労働運動の組織化を考える上でとても重要な視点です。
 行き詰まった資本主義社会の果てにどのような社会が訪れるかは私たちの取り組みに係っています。本書を読んで、従来型の運動手法にこだわらず、社会全体の流れを読み意識的に変革を促す視点を持たなければならないということを再認識しました。
 稲葉一良(書記長)

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